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CITY HUNTER
side story3
悪戯っ子のような瞳で香を見る撩に、香は大きな瞳を見開き、固まった。え、と口を半開きにしたままの彼女に、楽しげに撩が笑う。

「ずっと傍にいるだけでも良かったが…もう、それだけじゃダメなんだよ」

そう言うと、撩は腕を伸ばし、香の後頭部に手を当ててぐいっと自分の方へと引き寄せた。その大きな瞳の光の中に、穏やかな顔の自分を見つけ、撩は笑みを深くする。彼の傍らに常に立ち続ける香という存在は、闇に堕ちそうな己を常に引き上げ、光の下へと誘ってくれる。香が撩の隣に並んでくれさえいれば、撩はこの命を正しく生きることができるのだ。

「だから、さ。俺の全部を香にやるから、香の全部、俺にくれ。そんで、俺が死ぬ時は、香…おまぁに抱きしめられながら、おまぁの腹の上で死なせてくれ」

「…何よ…何言ってんのよバカァ…」

撩の言葉に、香の瞳は堪えていた涙をはらはらと零した。撩の指先では拭いきれないその雫は、彼の頬を伝って流れ去っていく。

「…泣くなよ」

「じゃあ、泣かせないで」

香の言葉に撩は小さく笑うと、引き寄せた手に力を込め、そっとその唇に触れた。僅かに震えたその柔らかな場所は、静かに重ね合わせているだけなのに、撩の心に温もりを与える。

「とりあえず帰ったら、初めてのもっこり、しよっか」

「ダメに決まってるでしょ!あんた、暫くは絶対安静よ」

「えぇぇぇ〜、こんなの全部かすり傷だってばぁ!」

「バカ言わないで。教授の所で暫く入院させてもらいなさい」

ぺちっ、と撩の額を叩くと、撩が恨めし気に香を見て、暴力女、と呟いた。

「…何か言ったかしら?」

「べべ、別に何も言ってません!」

ブルブル、と頭を振る撩に、香は溜息を吐くと、彼を抱き起して立ち上がった。ちょうどそこへ海坊主がやってきて、車を二人の前へ着ける。

「…とっとと帰るぞ。冴子がじきに来る」

「だな」

「海坊主さん、悪いんだけど、教授んちに寄ってもらえる?」

「あぁ、そのバカは暫く教授に躾けてもらうといい」

「あぁ!?何言ってんだよこのタコ!」

「うるさいっ、とっとと乗れ!」

海坊主の怒鳴り声に苦笑しながら二人が車に乗り込む。それを確認すると、海坊主はいつもよりほんの少しだけアクセルに気を使いながら、瓦礫の中へと車を発進させたのだった。

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