CITY HUNTER
side story1
香の放った最後の一発が轟音を響かせながら廃ビルにぶち当たり、最後の敵が沈んでいった。
「…終わったな」
海坊主が呟くように静かにそう告げると、香は肩に担いでいたバズーカを投げ出し、背後にいた撩に駆け寄った。それと同時に撩が膝から崩れ落ちそうになり、香はすんでのところで抱きとめる。
「撩っ!」
そこかしこから血を流しているが、どれも致命傷ではないはずだ。だが、香は泣きそうな顔で撩の頭を抱きとめ、そのまま地面に座り込むと腿の上にゆっくりと頭を乗せた。
「ははは…さすがにちょーっときつかったな」
「なに…笑ってんのよっ」
涙こそ零さないが、その瞳に透明な幕を張り、香が撩を見下ろす。そんな彼女の頬にそっと撩が手を添えた。そして、きゅっ、と音がしそうなほど噛みしめられた唇に、親指を優しく撫で上げる。
「…っ」
「傷だらけの王子様に、勇敢なお姫様はキスしてくれないの?」
「ば…バカッ!」
撩の言葉に、香はついに一粒涙を零し、その雫が撩の頬を濡らした。きらりと光るその雫の源に指を這わせれば、じんわりと温かいもので指先が濡れる。
「く…車を回してくる!」
二人のやり取りを傍で聞いていた海坊主が、顔を赤くしながら、くるり、と撩と香に背を向けた。撩はそんな彼の背に口を開いた。
「海ちゃん…サンキュ」
「なんのことだ」
「忘れ物、届けてくれて」
「…フンッ。美樹に言われたから来たまでだ」
「あぁ…分かってるさ」
[*前へ][次へ#]
無料HPエムペ!