CITY HUNTER 3 「あんたがアニキとの約束を破ることなんて絶対ないし、あたしはここで死ぬ気もないの。そしてシティーハンターは一心同体。だから、あんたも死なないわ」 香の言葉に、撩は呆気に取られた後、噴き出す様に笑った。 「…プッ…ククッ…たしかに香の言う通りだな…さて、休憩おーわりっと。おい海坊主、さっきから派手にぶっ放してるけど、俺の獲物だぜ」 撩は香との会話の最中に、周りの敵を香と同じバズーカで蹴散らしていた海坊主に向かって言った。そんな撩に、海坊主が不敵に笑う。 「戦場で女といちゃついてるヤツはすっこんでろ」 「にゃにおぅ!?じゃあ久しぶりにどっちが多く敵を倒すかやるか?」 「フン、ズタボロのお前なんぞと勝負してもつまらん」 「何言ってんだ、これぐらいのハンデがあった方がいいだろ!」 そんな二人に、武器を抱え直した香が言い放った。 「二人とも、言いあってる間にあたしが全部倒しちゃうわよ?それとも海坊主さん、あたしと勝負する?」 「それも面白そうだな」 「じゃあ、師弟対決ってことで」 「望むところだ」 「おいっ、海坊主っ!」 二人で進んでいく会話に、撩は焦りを見せて海坊主の名を呼んだ。呼ばれた彼は、振り返ると撩を一瞥した後、フンッ、と鼻を鳴らす。 「お前は香のケツ持ちでもやってろ…今の中途半端な状態のお前には丁度いい」 海坊主の言葉に撩は目を見開いた。もう殆ど光を感じない彼だが、撩が未だ闇の気配を引きずっている事を、敏感に感じ取っているのだろう。突き放すような言葉だが、棘のない口調に、撩は瞳を閉じると深く呼吸をして、直ぐ近くに感じるパートナーの熱を、己の心に手繰り寄せる。再び上げられた瞼の奥には、もう闇の色は消えていた。 「撩!これはシティーハンターと海坊主さんの勝負よっ、あんたズタボロなんだからあたしの後方支援お願いね!」 そう言うと、香は再び手にした火器をぶっ放した。そんな勇ましい香の後ろ姿に、撩はやれやれと息を吐くと、ゆっくりと口端を上げる。 「はぁ…しょうがない、わがままなパートナー様の後詰めに回りますかね。海坊主、香がいるからって手加減すんなよ」 「弟子との勝負に手心なぞ加えん。お前こそ、あいつの足を引っ張るなよ」 「へいへい、まったく、暴力的な師弟だこと」 そんな会話の後、二人は顔を見合わせて笑いあう。 「ちょっと二人とも!サボってたらあたし独り勝ちになるわよ!」 「こらこら香。ちょっと落ち着け」 「うるさい!あんたズタボロにされて黙ってられるほどお人よしじゃないのっ!」 香の言葉に思わず頬を弛めた撩を、冷やかす様に海坊主が見下ろす。 「女に守られるとは、ざまぁねぇな」 「まぁ、香は特別ってことで。冗談言ってる間に、ほんとにあいつに持っていかれるぜ、海坊主」 「あぁ、そうだな。そろそろ行くか」 ――そしてその一時間後、辺りを瓦礫の山にした三人は、犯罪の証拠とその主導者を地面に転がし、それぞれの家へと帰っていったのだった。 [*前へ][次へ#] |