CITY HUNTER
2
「…あんの、じゃじゃ馬がっ」
叫ぶその声に、思わず撩の口から悪態が零れだした。その視線の先にいた人は、今まで撩の心に浮かんでいた、パートナーである香だ。師匠であり撩のライバルでもある海坊主を運転手に従え、肩にバズーカを抱えて撩の名を呼んでいる。時折、海坊主が何やら告げ、香はその度に肩に担いだ武器から火を吹かせ、敵をなぎ倒していた。
「撩!いたら返事しろ!」
香の勇ましい言葉に、撩は思わず苦笑する。彼の暗く沈んだ瞳に、光が再び宿り始める。
「ここだ、香!」
撩の声を間違うことなく拾った香は、こんな場所であるというのに、撩の姿を見てにっこりと花のような笑みを浮かべた。
「あたしを置いていったから、そんなズタボロになるのよ!」
海坊主の操るジープが撩の前に盾のように滑り込んでくる。よぉ、海ちゃん、と手を上げる撩を見て、海坊主は鼻を鳴らした。
「フン!忘れ物を届けてやったついでに、ちょっと遊んで行くか」
「忘れ物ってなんだよ」
「あたしの事よ、撩」
きっ、と音がしそうなほどに上げられた眉と眇められた目で見下ろされ、撩は肩を竦める。
「あんたがあたしを置いていくから、バチが当たったのね」
香は撩の傍に膝をつくと、はい、と撩の手にスピードローダーを渡した。欲しかったそれを手にし、思わず撩の口端が上げられる。
「いい?これ以上ケガすんじゃないわよ?あと、諦めたら地獄の果てまで追っかけていくからね」
そう言った香の瞳の奥に隠された不安と痛みに、撩は、はっ、と息を吐いた。
「…カオリンと二人っきりならそれもいいけど、海坊主まで来ちゃったら美樹ちゃんが泣くからなぁ」
「俺はお前と心中なぞまっぴらごめんだ」
「俺も海ちゃんと地獄までデートなんて死んでもごめんだね」
「少なくとも、あたしが傍にいれば撩は死なないでしょ」
香の言葉に撩は目を丸くした。そんな彼を見つめ、香はどこか勝ち誇ったような顔で続ける。
[*前へ][次へ#]
無料HPエムペ!