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CITY HUNTER
2
パーティーは滞りなく進み、和やかな雰囲気でそれぞれが談笑していた。香をエスコートしていたミックは、離れることなく彼女の傍に立ち、常に身体の一部をさりげなく触れさせている。香自身はそのことには気付いていないようだったが、少し離れた場所で、元・依頼人の傍にいた撩にはミックの不埒な手が目の端に入り続けていたため、ポーカーフェイスを保つだけで精一杯という精神状態になっていた。

「ミック、ちょっと暑いから、外で少し涼みたいんだけど…」

香はミックにそう耳打ちすると、じゃあおれも、とミックは香に寄り添った。

「じゃあ…ちょっと化粧室にも行きたいから、少ししたら出てきてくれる?」

「OK. 15分もあればいいかい?」

「えぇ、いいわ」

そう言うと、香は静かに室内から出た。ミックはその姿を見送った後、シャンパングラスを一つ手に取り、壁際に立つ。目線の先には撩と元・依頼人がいた。ミックが思うに、彼女もまた、撩に恋をしてしまった一人なのだろう。おそらく撩と香もそのことには気付いている。そして依頼遂行中には、二人の関係性がただのパートナー以上であることを依頼人には明かさないというルールに沿って動いていることは、ミックも知っていた。
導き出される答えは一つ。元・依頼人の彼女は、このパーティーの終わりに、撩に愛を告げるのだろう。だから香は、パーティーもそろそろ終わろうというこの時に、席を外したのだ。

――言えばいいのに。二人は身も心も繋がりあった、かけがえのないパートナーであると。

ミックはあくまでも依頼人をスマートにエスコートする撩に、苛立ちを覚えていた。どうせ何回も経験したシーンなのだろう。だから、この先彼がどう動くかも、ミックは知っている。相手の愛に対して、包み込むように、それでも冷静に、その愛を拒むのだ。優しいひと時の夢を醒ますように、相手に見せかけの愛だけを見せて、風のように去っていく。

――それが、一番大事な人の心を傷付けることも知らずに。

いや、撩はそれすら知っているのかもしれない。だとしたら、とんだ卑怯者だ。だけれど、そんな卑怯者でも香は彼の傍に立ち続けるし、今までもこれからも、撩の闇を照らし出すたった一人の女であり続けるのだろう。そして撩も、香が自分の元を離れるという選択肢を持たぬよう、常にその庇護下に置き、彼女の心を彼の元に縛り付けるのだ。

ミックはグラスに口を付けると、一気に中身を煽り、グラスを置いてその場を離れた。

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あきゅろす。
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