CITY HUNTER
1
「ごめんなさいね、ミック」
ミックは目の前で手を合わせて謝る香に、首を振って笑った。
「なんの、カオリのためならおれはなんでもするよ!それに…今日のカオリは一段と美しいからね」
そういって恭しく香の手を取ると、ミックはそっとその甲にキスを落とした。大きく胸元の開いた黒いドレスに身を包んだ彼女の、白く細い指先握ったまま微笑みを浮かべて見下ろしてくるミックに、香は頬を染めながらも苦笑する。
「ほんとにミックってば、お上手」
「そんなことないさ。カオリはおれにとっては女神だから」
「何言ってるのよ。あなたの女神はかずえさんでしょ?」
「カズエは女神っていうより…おれの唯一無二、かな?」
ミックの言葉に、香は、ごちそうさま、と笑いながら言った。そんな彼女を愛おし気に見つめていれば、二人の前を歩いていた撩が、ほんの少し振り返り、ミックを睨み付ける。だが、隣には依頼人の彼女…といっても、依頼自体は昨日で終わっているので、元・依頼人であるが…の手前、撩は香には気のない素振りで、彼女に寄り添って歩いていた。本来ならもう依頼も終わっているのでこうやってパーティーに顔を出す必要もなかったのだが、元々、依頼がパーティーの開催日までに終わらない可能性もあったため、彼女の希望もあり、撩が彼女のエスコート役、そしてミックが香のエスコート役に決まっていたのだ。結局依頼は昨日中に片付いたのだが、さすがに翌日に迫っていたパーティーのエスコート役は直ぐ見つからず、更に『冴羽商事はアフターフォローも万全です』の撩のうたい文句を盾に依頼人が撩に迫ったため(その上、エスコートしてくれるなら依頼料に上乗せするという言葉に香が乗った)、現在に至る。
「…そんなにイヤなら、断ればヨカッタのに」
「何か言った?」
小さな声で思わず漏らした言葉は、幸いにして香には届かなかったようだ。なんでもないと首を振ると、ミックは香の腰に手を添えて、会場へとエスコートした。
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