CITY HUNTER
番外編2
――なるほど、香が何か隠しているような気がしたが、それか。
最近の彼女が時々見せる不自然さは、それが原因だったのか。撩はひっそりとほくそ笑えんだ。
「ユミちゃん、ビール頼む?俺も頼むから一緒に言うけど」
「あ、お願いしまーす」
陽気にそう言いながらつくねに手を伸ばす彼女を見て、撩は店員に注文すると、負けじと料理に手を付ける。
「ユミちゃんは、俺と香の関係ってどうだと思う?」
「え?うーん。香さんは仕事上のパートナーだっていうけど、公私ともにパートナーなんですよね?お二人見てたら分かります」
ふふふ、と楽しそうに笑う彼女に、撩も笑った。さっぱりした性格ではあるようだが、人の事は思っていたよりよく見ているんだな、と撩は思う。まぁ、今回の依頼はそれが仇となったような内容だったが。
「香さん、可愛い人ですよね。あと、とっても愛情深い人。それに…人の痛みがあれだけ分かる人だから、冴羽さんも好きなんでしょ?」
まぁ、それだけじゃないんでしょうけどね、と目を細めたユミに、撩は苦笑した。否定したところで意味はなさそうだが、さぁね、とだけ言ってビールを流し込む。ユミは特に気にする様子もなく、ビールをちびちび飲んでいた。
「あ、そういえば、今日も香さん、あの下着なんじゃないかな〜」
何気なくそう言われた言葉に、撩の目が光った。ふぅん、と鼻を鳴らすが、特に反応を示さず、ユミが手を伸ばしたサラダを取ってやる。
「ありがとうございます…でも、なんであれは盗らないんですか?」
「それは秘密。ってか君の聞きたかったことってそれ?」
撩がそう尋ねると、それもありますけど、と言って、ユミはサラダを頬張った。
「…でも、もう自分の中で答えは見つかったので、いいです」
そう笑ったので、撩もそれ以上は聞かなかった。彼女の中で何かが腑に落ちたのであれば、それはもう撩にとっては関係のないことであり、追及する気もない。今までの依頼人もそうだが、相手が香でないのであれば、誰であっても彼の心に留まることはないし、これからもそうだろうと思う。そう、相手が香でなければ。撩の執着の対象で、なければ。
「ところで、冴羽さん」
「なんだい?」
撩がそう返すと、ユミが悪戯な笑みを浮かべた。
「なんか、悪だくみでも考えてそうな顔だなぁ」
「失礼な!まぁ、否定はしませんけど」
ユミは撩にそう言うと、口端を上げた。
「もしかして、依頼中は香さんとイチャイチャできなかったりします?」
またしても直球な言葉に、この娘は変化球ってものを知らないのかね、と撩は苦笑する。
「香さん、その辺は頑固そうだもんなぁ」
そこが香さんの香さんたる部分なんでしょうけど、と言うと、ニヤニヤと笑って撩を見た。
「で、どうなんですか?冴羽さんの返答次第で、依頼料ではないですけど、ちょっとしたオマケつけますよ?」
「オマケ?」
「はい。もしイエスなら、この依頼は今日の日付が変わるまで。ノーであるなら、私が明日、アパートを出るまでとします。あ、依頼料は明日まででお支払いしますから」
どうします?、と聞かれ、撩は先ほどの下着の話を思い出した。きっとこんなチャンスとこんな依頼人に巡り会うことは、この先もうないだろう。撩はそう考えて、ユミに答える。ユミはその返答に満足げに笑うと、
「じゃあ、お二人と私の未来に、カンパーイ!」
と陽気にジョッキを掲げ、ビールを煽った。そして二人はその後、下らない話をしてたらふく飲んで、その日のうちに肩を組みながら陽気にアパートへと戻った。
「あ、冴羽さん。私、アルコール飲んだら朝まで起きませんので、ウフフ」
「…りょーかい」
――そしてその夜、撩は香を客間から連れ去ると、彼女を食べつくしてから眠りについたのだった。
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