CITY HUNTER
2
「香」
そんなある日、香は撩に呼ばれた。ちょうど依頼遂行中で、依頼人はお風呂タイムだ。香は撩が不埒なことをしないように見張っていた。
「なに?今夜も夜這いかけたらコンペイトウだからね」
じろり、と香に睨まれて、撩は、ぐぅ…と声を漏らすが、どうやらそうではないらしい。
「何よ」
「おまぁ、俺になんか隠してない?」
「…ないわよ、そんなもの。てか、あんたはどうなのよ」
香は撩の突然の質問に、ほんの少し返答に詰まってしまったが、なんとかそう答えた。撩は人の機微に聡く、香の嘘などすぐに見抜いてしまうだろうから、ここは正念場と言えるだろう。
「おれぇ?香にぃ?」
「いや、いいわ。撩の隠し事なんて、どうせろくでもないものだろうし」
「なんだよ、俺だって秘密の一つや二つぐらい…」
「え、あるの?」
「ぎくぅ」
「また、ツケ増やしたとかじゃないでしょうねぇ?」
「な、なんのことかな〜。撩ちゃんなんのことかわかんな〜い」
「あんた…ウチの経済的ピンチの元凶をまた増やしただとぉぉ!」
香は掌に特大のハンマーを召喚した。それを見た撩は顔から血の気が引き、思わず土下座する。
「ちょ、待て待て待って香サマ!この通り、この通りでございますぅぅぅ!」
「問答無用っっ!!!」
依頼人が風呂から出てくると、リビングでは潰れた撩と、その隣で悠々とコーヒーを飲む香の姿があった。
――良かった。まだ気付かれてない。気付かせては、いけない。
香はコーヒーカップで口元を隠しつつ、少しだけ口端を上げた。
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