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CITY HUNTER
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香は目の前に広げたものをみて、ほんのりと紅く染めた頬に笑みを浮かべた。そして、ギュッと抱きしめる。

――これは盗られないようにしなければ。

香が目の前に広げていたのは、可愛らしいブラとショーツ。最近、シンプルな下着しか購入していなかった彼女にしては珍しいセレクトだが、店で一目見て気に入ってしまい、ちょうど立て続けに入った依頼のおかげで懐は温かく、そろそろ買わなきゃな…と思っていた矢先だったこともあり、つい、買ってしまった。

最近の香の下着事情としては、基本的に色はベージュなど、しかもほとんど同じデザインの物ばかりだ。それはなぜかと言えば。

…あいつのせいだ。あいつがあたしの下着さえ漁らなければ…。

そう、それは彼女のパートナーであり、最愛の人だ。だがその彼には一つ(いや、色々あるが香としては目下の一番の難点である)困ったクセがある。それは、香の下着を漁り、彼が目に留めたものは片っ端から彼のコレクションに加えられて(ようするに、盗られて)しまうことだった。そして、それは香のお気に入りのものがターゲットになることが多い。というか、気に入って使用頻度が高くなると、必ずやられる。香もそれに気付いてからは、下着のデザインなどはなるべく統一し、お気に入りをなるべく作らないようにしていた。そのおかげか、最近は漁られることも減った気がするが(時々トラップが作動していることがあるため、止めている気配は見られない)、それでも何かの記念になるようなことがあるとなくなっていることがあるので、減っていることは減っていた。

これだけは。香はギュッと抱きしめると、紙袋にそれをしまい、衣類の入っているタンスではなく、別の所へとしまった。

それから、香は時々それを身に着け、こっそりと楽しんでいた。撩の目につくと絶対に盗られて戻ってこないことは分かっているので(こればかりはどんなに脅しても潰しても、どこに隠しているのか吐かないので、香は泣く泣く諦めるしかないのである)、撩が風呂に入っている間にこっそりと他のものと変え脱衣場にも置かないようにしたし、洗濯も撩が家を空けている間に手洗いし、こっそりと干していた。うっかり身に着けている時にそういう雰囲気になってしまった場合は危険だが、たとえば依頼中であれば手出しはさせていないので、そういう時などに狙って身に着けていた。

…っていうか、なんでこんなことでこんな努力をせねばならんのじゃ。

香はちょっと涙が出そうだったが、久しぶりにお気に入りの下着を身に着けることができる喜びには変え難い。仕方なくそんな日々を送っていた。

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あきゅろす。
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