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CITY HUNTER
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今日も眼下に広がる街の何処かで、あいつは息をしているんだろうか。もしかしたら、今頃は何処かの女と一緒にいるのかもしれない。

香は屋上に上がると、ネオン街に目を向けた。秋の気配が夜風から伝わってくる。

「せっかくだし、一人で月見酒といきますか」

そう呟くと、手にしていたビールの缶を開けた。今日は十五夜、夜空には皓々と満月が輝いていた。

ぼんやり月を眺めながら、ビールを喉に流し込む。一本空けてしまい、香はほんの一瞬考えた。

「どうせ撩のヤツ、帰ってこないんだし…お月見、ここでしてもいいか」

そう独りごちると、一旦下に戻る。再び屋上に上がり、マンションで一番高い場所に腰を落ち着けた。

「えぇと…お月見って言ったらやっぱり月見団子は外せないわよね。それから…ワイン…なんてお団子に合うかなぁ?」

独り言を呟きながら、香は下に敷いたマットの上に持ってきたものを並べる。グラスに戸棚に隠しておいたワインを注ぐと、即席の月見席の出来上がりだ。

香は団子を一つ頬張り、ワインを飲みながら月光浴を楽しんでいた。


*******


撩は階段を上がると、そっとドアを開けた。気配を消して滑り込むようにリビングに入るものの、パートナーの部屋からは人の気配がない。

「なんだぁ?香ちゃんは何処へ行ったのかなぁ〜」

誰ともなく暢気な声でそう呟くと、それとは裏腹な視線で室内を見る。

…特に変わったことはない。

荒らされた形跡は全くなく、とりあえずリビングで何かあったわけではなさそうだ。ならば、彼女の部屋はどうだろう。気配を探ってみるが、何も感じられない。そっと扉を開いてみたが、特に変わった形跡もない。

「さてさて、ウチのお姫さんはどこへ行ったのかね」

そう呟くと、撩は発信機を確認するべく、部屋を後にした。

「…なんだぁ、アイツ、ここにいるのか?」

クーパーに仕込んだ追跡装置のモニタを見て、撩は眉を顰めた。念のため発信機のついている服は確認済みだ。一着なかったということは、今現在、それを身に着けているということだ。

「…屋上か」

部屋にはいなかったし、それとなく他の階も気配を探ってみたが何も感じられなかった。ということは、上しかない。

「ったく、人騒がせな」

ブツブツと口では文句を言いながらも、撩は足早に屋上へと向かった。

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あきゅろす。
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