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CITY HUNTER
3
「…では、貴重なお時間頂きました、ありがとうございました!」

一通りインタビューが終わり、カメラクルーが立ち去ると、ミックは名残惜しげに腕の中の香を解放した。ほんのりと上気した頬で一つ息を吐き出した彼女に、彼が笑う。

「ゴメンね、カオリ。さすがにキミの顔をローカルとはいえ映像として出してしまうのは、リョウに怒られそうだったからね」

「あ、うん…こっちこそ、気を遣わせちゃって。ありがとうね、ミック」

申し訳なさそうに眉を下げる香だが、ミックとしては堂々と彼女を腕に抱ける機会が与えられたようで、内心ではリポーターの彼女に感謝していた。

「でもおれたち、恋人同士だと思われていたみたいだよ」

ミックに笑いながらそう言われ、香は苦笑した。

「ビックリしちゃったわ。ミックとあたしじゃ釣り合わないし、かずえさんとの方が絶対に映えるのに」

あー、ミックとかずえさんがインタビュー受けてたら、絶対に観たかったな〜、と、先ほどまで赤い顔で大人しく抱かれていたとは思えない態度でそう笑った香の腕を、ミックが引き寄せた。

「そんなことないよ…カオリ、気付かないのかい?」

「え?」

ミックは香の腰に腕を回しながら囁くようにそう言い、彼女に周りを見るように促す。どういうことだろう、と周囲を見れば、その隙に、ミックの唇が香の頬に押し当てられた。

「…っっっ!」

「…ホラ、みんな見てるよ」

途端に耳朶まで染まった香に、昔から女を落としてきた甘い声で、耳元に唇を寄せてミックが囁く。

「そ、それはミックがキ、キ…」

「うん。ごちそうさま。さっきはデザート食べ損ねたけど、カオリは甘くてデザートにはちょうどいいね。それに…せっかくそういう関係に見えるなら、ソレに乗らない手はないだろ?」

真っ赤な顔で口をパクパクさせている香に、ミックはクスクスと笑った。だが、この楽しい時間ももう終わるだろう。なんせ先ほどから、突き刺すような殺気が彼の身体を取り巻いているのだから。それは先ほど街中を歩く男たちの羨望の眼差しとは比べ物にならないほど鋭く、ミックのうなじをチリチリと焦げ付かせるような、熱を持った視線だった。

似たような服を着ていた偶然から思いがけず転がり込んだ楽しい時間だったが、香のこの姿を見るのも、今日が最初で最後だろうな、とミックは内心で思った。少なくともこのグリーンのシャツを香が着ることは、もうないだろう。それ位、あの男は香に対してだけは狭量で見境がなく、そして香を捕らえて離さないのだ。

あぁ、そういえば、嫉妬に狂ったアイツみたいなのを、Green-eyed monsterって言うんだっけか。グリーンのシャツを着た彼女を、緑色に染まった瞳で見つめるアイツは、今、どんな顔をしているんだろう。

ミックはニヤリ、と悪戯を思いついたように口端を上げ、掌でパタパタと顔を煽っている香の腰を更にグイッと抱き寄せると、足早に歩き出す。

「え、ちょっ、ミック!」

慌てたように声を上げる香に、ミックは緊張感を漂わせながら小声で答えた。

「…カオリ、キミを狙っているヤツがいるみたいだ。ちょっと急ごう」

「え…分かったわ。ごめんねミック。巻き込んじゃって」

「なんの、このくらいのスリルは逆に刺激になっていいさ」

突然動き出した二人を慌てたように追いかけてくる気配が、ミックは面白くて仕方ない。香は気付いていないのがこれまた楽しくて、ミックは彼女に気付かれない様に内心で笑いながら、香の腰を抱いたまま、足早に街外れへと歩いて行った。

――辿り着いた先が、きらびやかなネオン輝くホテル街で、パイソンの弾丸より先にミックが香からハンマーで潰されるまで、あと少し。ちなみに先ほどのインタビュー映像は、誰かさんの手によってお蔵入りさせられたともっぱらの噂である。

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あきゅろす。
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