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CITY HUNTER
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「はぁ〜、美味しかった!ミック、ごちそうさまでした」

香は満足げにそう言うと、華のような笑顔でミックを見上げ、礼を言った。本当は自分の分は自分で払うつもりだったのだが、香が少し席を離れたタイミングで支払いは既にすまされており、結局彼女は一円も払っていなかったのだ。

「なんの、カオリのその笑顔が見られるなら、ランチ代なんて安いものさ」

「ほんとに、ミックってその辺スマートよねぇ」

どこか呆れたように、それでも楽しそうにそういう香の肩を、再びさりげなく抱くミックだが、今回は大人しくその腕に収まってくれるようだ。ミックは香に気付かれないように、そっと小さく笑った。大柄で金髪の絵に描いたような外国人と、女性のわりには背の高い、そして本人は全く自覚していないが…これはミックのかつての相棒のせいだ…モデル体型の美しい女性が寄り添い並んで歩いている姿は、どうやっても周囲の目を引く。しかも、たまたまとはいえ、二人の服装はよく似ていた。これで目立つなというのは無理な話だ。

だが今、ミックの腕の中にいる香が、そんなことに気付く様子は欠片もない。先ほどのランチがいかに美味しかったか、ニコニコ笑いながらミックに語り掛ける姿は、誰が見ても愛らしだろう。通りすがりの男たちの羨望の眼差しがミックに突き刺さるようで、知らず彼の気分も高揚してくるようだった。

「すみません、そこのお二人!」

そんな時、二人は声を掛けられた。振り返れば、そこにはカメラマンとリポーターという、明らかにテレビクルーの姿があった。どうやらローカルテレビのようだが、地元の取材でもしていたのだろう。

「あの、今、この街の取材をしていまして。そしたら素敵なお二人が通りかかったので、是非ともおススメのスポットとか、お二人でよく行く場所なんかを教えて頂ければ!」

とても元気な声で二人に声を掛けた若い女性は、興味深げに二人を見ていた。キラキラした瞳に、香がいなければナンパの一つもしていただろうが、今、ここには彼女がいる。
ミックは香の肩に回していた腕をグッと引き寄せると、よろめいた彼女の身体を自分の身体に寄り添わせ、顔をカメラから隠すために頭を胸に押し当てるように抱き締めた。腕の中の香はミックの動きに咄嗟に逃れようとしたが、次の彼の言葉に、その動きを止める。

「Sorry , カノジョ顔出しはNGなんだ」

ミックの言葉に腕から抜け出そうとしていた香が大人しくなり、彼はほくそ笑んだ。これで堂々と彼女のしなやかな身体を堪能できる。ミックは香が動かなくなったのをいいことに、彼女の柔らかな髪に唇を寄せると、そっとキスをした。
もちろん、ローカルテレビで新宿界隈では映ることもないだろうとは思っているが、誰がどこでみているか分からない。そんな状況で、彼女の顔を公共の電波に乗せるのは、さすがのミックにも躊躇われたことも事実だ。

ミックの自然なその仕草に、腕の中の香だけでなく、リポーターの女性まで頬を赤らめる。彼はそんな相手に飛びきりの愛想笑いとウィンクを披露しながら先ほどの質問に答えた。

「それに、この街にはあまりなじみがなくてね。さっき2人で行ったランチの店なら紹介できるけど、それでカンベンしてもらえるかな?」

「あ、も、もちろんです!」

赤い顔のままでミックにマイクを向けてくるリポーターの女性に、流暢な日本語と外国人特有だと思われる動きで対応しながらも、ミックの意識は常に香にあった。大人しく抱かれる彼女の身体は思った以上に柔らかくて甘い香りが漂ってくる。ふわふわと香の髪が顎のあたりを擽る度に、ミックの胸の奥が疼いた。

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