CITY HUNTER
7
夏希を見送った後、香は伝言板のチェックへ向かい、撩は教授の所へ行くと言ったので、それぞれ別行動の後、アパートへと戻った。
「ただいま〜」
玄関で靴を脱ぎ、撩が帰宅を香へ告げる。
「お帰り〜。コーヒー淹れるからリビングで待ってて。あ、手、ちゃんと洗ってね!」
「はいはい」
撩は言われたとおりに手を洗い、リビングへと入りソファーに腰掛ける。暫くすると、香がやってきて、撩にマグカップを渡した。
「はい、撩」
「あぁ、ありがとう…っぷ!」
撩は香からカップを受け取り、隣に座った香から、顔に何かを当てられた。
「この間の、お礼」
ニコニコ笑う香が差し出したものは、小さな花束だった。
「撩にはバラが似合うんだろうけど、バラをもらってバラで返すって、芸がないかと思ったからさ、ちょっと違うの入れてみたの」
だからこれ、と笑った香が撩に渡した花は、ライラックと、白いバラの小ぶりな花束だった。甘い香りが撩を包み、知らず口端が上がる。
「…思いは同じ…ってか」
「え?撩、なんか言った?」
「いや」
小さな声で呟かれた撩の言葉は、香には届かなかった。だが、撩の顔にはゆっくりと笑みが零れる。
「香、俺からも、ほい」
そう言って、撩から香りに贈られたものは。
「また、バラ?」
それは深紅のバラが3本と、とカスミソウの花束だった。香はそれを受け取ると、嬉しそうに笑いながらも、ほんの少し、戸惑いを含ませて撩を見る。
「香…おまぁ、一人で槇ちゃんとこ行っただろ」
「あ、もしかして撩、行ってきたの?」
「あぁ、さっきな。花が置いてあったから、さ」
「うん、一人で行ってごめんね…まさかこんなに早く依頼が終わるって思ってなくて」
香は撩の隣に腰掛けると、そのしなやかな身体を撩へと預け、頭を彼の肩へ乗せた。撩は香の肩に腕を回すと、軽く髪にキスを落とす。
「まぁ、今日は俺も槇ちゃんに色々話す事あったから、ちょうど良かったかな」
「そうなの?」
香が意外そうな顔をして撩を見上げた。撩は小さく笑うと、花束を持つ香の手に己の手を重ねた。途端に頬を染める香に、撩は目を細める。
「香…誕生日おめでとう」
「撩…ありがとう」
穏やかに微笑む香の唇に、撩がそっと己のそれを重ねた。言葉にはできない想いが溢れ、徐々に熱となって香の身体にも火が灯る。
――この先も、枯れることのない想いを共に――
そして重なった2つの影は、夜が更けても離れることはなかった。
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