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CITY HUNTER
5
「じゃあミック、ありがとうね」

香は撩と夏希を見送ったあと、香はミックと連れ立って、伝言板のチェックと夏希の部屋のチェックを済ませた。盗聴器のほかに、彼女の部屋に録画するための機器もあり、香はミックと手分けしながらそれら外すと、ダミーを置いて部屋を出た。

「いや、この位お安い御用だよ、カオリ。また何かあったらなんでも言って」

「ふふふ、助かるわ。かずえさんにもよろしく伝えてね」

「あぁ、伝えるよ」

ニッコリ笑って事務所へと戻っていくミックを見送ると、香は少しだけ逡巡した後、自分の車に乗り込み発進させた。そして先日まで世話になっていた花屋の前で止める。

「おばちゃん、こんにちは!」

「あら、香ちゃんじゃないか。いらっしゃい、今日はどうしたんだい?」

「ちょっとお花をもらいたくて…いいですか?」

「もちろん、大丈夫だよ」

香は目的の花を告げると、店主は手早くそれを花束にしていった。それを眺めながら、香はふと、先日、撩が香にくれたバラを思い出した。

「ねぇ、最近、撩のヤツがここでバラ買ったりしなかった?」

香の言葉に、彼女は手を休めずに返答する。

「ふふふ、どうかしらねぇ」

楽しげに笑う店主に、香は苦笑した。やっぱり、ここで買ったんだ。

「ねぇ、おばちゃん…」

香は頼んでいた花束を受け取ると、それとは別に話をし始めた。香の言葉に店主はほんの少し驚いたようだが、すぐに笑顔になり、香に頷く。そして花束を受け取ると、香は花屋を後にして目的の場所へと車を走らせた。

その場所は、槇村秀幸の墓地だった。本来なら明日の命日に来たかったのだが、さすがにこの依頼を明日までに終わらせることは無理だろう。

「アニキ、久しぶり」

香は花を手向けると、そっと墓石を撫でた。柔らかな風が香の頬を撫で、知らず微笑みが彼女の顔に浮かぶ。

「ごめんね、明日は来られなさそうだし、撩は今依頼中だから、あたしだけなんだ」

香は秀幸に向けて、いろんな話をする。別に返事が返ってくるわけではないが、時折吹く風がどこか兄らしく、香は小さく笑いながらたくさんの話をした。

「でね…アニキ。あたし、撩とこれからも、ずっと一緒に生きていく」

香の決意を秘めた瞳で、真っ直ぐに秀幸を見た。その光を湛えた瞳に、温かな春の木漏れ日が差し込み、香は思わず目を眇める。その日の光に、香は兄の姿を見た気がして、透明な雫を一粒、秀幸の眠るその石に零した。

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あきゅろす。
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