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CITY HUNTER
2
「…ミック!」

「Hi, カオリ」

そこに座っていたのは、お隣のビルで恋人のかずえと暮らしているミックだった。白い手袋をはめた右手をヒラヒラと振りながら笑顔を見せる相手に、こんな所で会うなんて、と、香は驚いた。

「どうしてここに?」

「仕事の帰りだよ。この喫茶店はケーキも有名だし、カズエに買って帰ろうかと思っていたら、カオリが見えたってワケ」

甘いマスクで優しく微笑む彼は、香がミルクティーを飲んでいるのを見て、紅茶を注文した。コーヒーもあるのだが、香に合わせて紅茶にするミックに、香は思わず笑みを浮かべる。

「カオリこそ、どうしたんだい?リョウは?」

ミックの言葉に香は思わず苦笑を漏らした。そんな彼女を見て、ミックは片眉を上げる。

「うん…ちょっと、考え事したくて」

「なら、ジャマしちゃったかな?」

頬杖をついて笑みを浮かべながらそう尋ねるミックに、香は慌てて手を振った。

「全然、そんなことないわ。ちょうど、誰かと話したいなって思ってたところだったし。だから、ミックが来てくれてよかった」

よかった、と花のように綻んだ笑顔を見せる香に、ミックは笑みを深くした。そして先ほど外から見えた彼女の、憂いを含んだ顔を思い出し、心の内で小さく溜息を吐いた。どうせそんな顔をする原因は、一つに決まっている。

「カオリは本当に、カワイイね」

「もぅ、何言ってるのよ」

「ウソじゃないよ。それに出会った頃よりキレイになった」

香はほんのり頬を赤らめるが、ミックのそれはいつものことなので、クスクス笑うとカップに口を付けた。そんな彼女を見て、ミックは尋ねる。

「で、何を考えてたんだい?…リョウのこと、かな?」

ミックの質問に、香は一瞬動きを止めたが、口端を僅かに歪め小さく息を吐き、外を見た。

「ミックはなんでもお見通しなのね」

「そりゃ、カオリのことはいつも見てるからね」

ニッ、と笑ったミックに、香は苦笑した。ミックは撩に負けず劣らず女好きではあるが、こうやって香の心を解きほぐす言葉を欲しい時に的確に投げかけてくれることも多く、香としてはありがたいと思う事もあった…そんなこと、他の誰にも言えないが。

「まぁ、カオリにそんな顔をさせるのは、リョウだけだろうし」

「あたし、どんな顔してた?」

「そうだね…」

ミックはそう呟くと、ふいに香の頬に手袋をはめた掌を添えた。香が丸く目を見開くと、甘く微笑んで親指の腹で頬を撫でる。

「まるで迷子になった子供みたいな、今にも泣きそうな顔、かな」

その言葉を聞いた瞬間、さっ、と香の顔から表情が消えるが、すぐに眉を下げ、ミックを見た。

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