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CITY HUNTER
5
食事が終わると、リビングで二人、暖炉に火をつけてのんびりと過す。新宿にいても変わらない風景だが、時間の流れはどこかゆっくりとしたものだった。他愛ない話をして笑ったりしていたが、ふと、香は思い出したように言った。

「ねぇ、撩。結局依頼って、どんな内容だったの?」

ソファで寝そべり寛ぐ撩を、ソファを背もたれにして床に座っていた香が見上げる。片眉を上げた撩が、なんだ、と口を開いた。

「まだ分ってないのね、香ちゃんは」

「わ、分るわけないじゃない。あんた何にも言わないんだから」

やれやれ…と肩を竦める撩に、香がムッとした表情を見せた。仕方がないなぁ、と撩は頭をガリガリと掻くと、起き上がって床に足を下ろす。ちょうど香の真横へと足は下ろされ、上体を前屈させるように屈めると、撩は香の顔を覗き込んだ。

「XYZだよ、香」

今朝言われた言葉が、繰り返された。香は目をパチパチさせると、首を傾げる。

「わかんない?」

「わかんない」

「じゃあ、今日は何の日だ?」

悪戯っ子のような笑みを浮かべる撩に、香は素直に答えた。

「撩の誕生日よ」

「で、この依頼はお前にしか片付けられないって言ったよな」

「うん。そう言ってたよね、撩」

頷き、香が撩の顔を見る。彼はその答えに満足そうに笑うと、身体を起こした。そして素早く香の脇に両腕を差し込むと、あっと言う間に彼女の身体をソファへと引き上げ、抱きかかえるようにソファに倒れこんだ。

「ちょっと、撩!」

抗議の声を上げる香を無視し、撩は彼女の身体をガッチリとホールドする。その柔らかな髪に顔を埋め、甘い香りを堪能すると、楽しげに言った。

「これは撩ちゃんからカオリンへの依頼でした〜」

「…え?」

思いがけない言葉に、香が動きを止める。その隙に撩は香の顎に手を掛け、上を向かせるとその唇に己のそれを重ねた。暫く味わうように堪能すると、ゆっくりと開放してやる。香がほぅ、と息を漏らすと、撩が言った。

「だから、お前への依頼。今日から、お前の誕生日まで、二人でここで過すっていう」

「ここで…?」

「そ。まぁ、アパートでいつもみたいに過しても変わらんけどな。たまにはいいだろ」

瞳を大きく見開き撩を見つめる香が、小さく尋ねる。

「だから…ここ最近は、仕事してたの?」

「やっぱバレてたか」

香は夜の仕事の事を言っているのだ。最近はあまりそういう仕事について隠すことはなくなっていたが、せっかくの計画が台無しになってしまっては元も子もないため、ここ一週間ほどは黙って仕事をこなしていた。だが、やはり香にはお見通しだったらしい。撩は苦笑すると、未だ驚きを隠せない香の額に、自分の額を合わせた。

「…で?俺の依頼は受けてくれるのか?」

「…ほ、報酬による」

こんな状況でも、香らしいというかなんというか。撩は彼女の一言に思わず笑うと、耳元で囁くように告げる。

「とりあえず、前金は身体で…ってどう?もちろん、依頼が終わったら別の報酬も用意してあるけど。あと、お前の依頼も一つだけ、ただで請けてやるよ」

「だ、だったら。あたしの誕生日も、ずっと一緒にいて欲しい」

「…了解」

香の可愛らしい依頼に、撩は小さく微笑んだ。それじゃ俺の依頼と重なるだろ、と心の中で呟きつつ、己と同じ気持ちでいてくれる彼女に、愛おしさも募る。なんと欲のない女で、そして自分はなんと欲深いのか。この手に抱いてからその思いは強くなるが、相手が香だから、それも仕方のないことか。

自分に都合のいい考えに僅かに苦笑すると、撩は香を抱きかかえたまま起き上がった。そして彼女が恥じらいを感じるその前に、再びその唇を塞ぐ。愛撫するように舌を絡めれば、鼻にかかった甘い声が、撩の身体を熱くした。

その後、香の誕生日が訪れるまでの間、二人はずっとそのコテージに滞在した。そして彼女の誕生日の朝、撩からの依頼の報酬として…彼女の薬指に、細いリングが填められた。

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あきゅろす。
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