CITY HUNTER
4
夕飯は、いつもより少しだけ豪華だった。撩の手料理は完璧だったし、ワインもちょうどあったので、二人で飲んだ。ほんの少し目尻を紅くした香に、撩が笑みを浮かべる。
「なんか、今日のアンタってちょっとヘンね」
「そんなことないさ」
グラスに口を付け、からかいを含んだ瞳で香を見つめる撩に、頬杖をついた香が言った。
「なんていうか、ちょっと優しい?」
「俺はいつも優しい男だろ」
「どの口がそれを言うか」
ミニハンマーをヒットさせれば、イテェ、といつもの反応だ。でも、やはり今日の撩はいつもと違う気がする。
「あ、そうそう」
香が突然手を叩いて席から立つと、リビングに置いてあったバッグを手に戻ってきた。ごそごそとバッグから薄い箱を取り出すと、バッグを脇に置いて畏まったように座りなおす。
「えーと、誕生日おめでとう、撩。今年も一緒にいてくれて、ありがとう」
そう言うと、その箱を両手で包むように持ち、撩へと差し出した。ほんの少しだけ驚いたように目を見開くが、撩は一つ瞬きすると、目を細めた。
「わざわざ用意しなくても良かったんだぞ」
「でも、一年に一回のことだもん」
「ま…ありがとさん」
照れ隠しにぶっきら棒にそう言うと、香の手からそれを受け取った。白い箱にブルーのリボンが掛かっているだけのそれを、ゆっくりと開いていく。
「毎年何にするか悩むのよね〜。撩って、何が欲しいとか言わないじゃない?でも、今年はそれにするって決めてたの」
箱の中から出てきたのは、皮の財布だった。もう随分とくたびれた財布しか持っていないのを、香は気にしていたらしい。
「今年は、その財布にいつもお札が入っているぐらいには仕事してちょうだいね」
一言付けることも忘れないのが彼女らしいというか。撩は思わず笑ってしまい、早速、古いものから新しい物へと中身を入れ替えた。
「…気に入ってくれた?」
恐る恐る聞く香に、撩は口端を上げる。
「おぅ、これなら丈夫そうだしな。サンキュ」
手を伸ばし、香の柔らかな髪を撫でると、彼女はふわりと微笑んだ。そしてもう一度、花の様な笑みを零しながら祝いの言葉を口にした。
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