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CITY HUNTER
3
槇村の墓に着いたら、二人で墓参りをすませた。香はいつものように手を合わせ、少しだけ兄と会話を交わしてから、撩の顔を盗み見た。真っ直ぐに墓を見つめる瞳に、真剣な色を見つけて、はっ、となる。

「…なに、カオリン。撩ちゃんに惚れ直しちゃった?」

香がじっと見ていると、撩がからかい混じりの視線を流してきた。

「何バカなこと言ってるのよ」

ほんの少し赤面しつつも反論する香に、撩が笑った。そしてくるりと背を向けると、もと来た道をクーパーの方へと戻る。香も立ち上がると、慌てて撩を追って墓地を出た。

それから、撩が運転するままに、海岸を走っていた。香としてはいつ依頼人に会うのかと内心そわそわしていたが、撩の方は一向にその気配を見せない。それどころか、鼻歌まで飛び出す始末だ。

「ねぇ…どこ行くの?」

本当は依頼の事を聞きたかったが、それは堪えて今から行こうとしている場所について尋ねた。だが、撩は口端を上げただけで、具体的な言葉は口にしなかった。

「香ちゃんとしっ〜ぽりできるところ♪」

「…冗談は顔だけにしてよね」

「ひっでぇなぁ」

香の言葉に口を尖らせるが、だからと言って機嫌が悪くなっているようではない。香は結局諦めて、少し窓を開けると外の風を車内に取り込んだ。3月の終わり、もう春の気配がする風に、短い髪を遊ばせる。少し肌寒いが、気持ちいい。

暫くすると、海辺から離れ、車はどんどん山へと入っていった。今年はもう桜が咲いてるのねぇ、とのんびりと言う香に、そうだな、と短く撩が返す。そのまま山道を辿れば、人里離れ山が深くなり、さすがに桜もまだ蕾だという辺りまできて、湖が見えてきた。そして、その湖畔には、小さいがしっかりした作りのコテージが一軒建っていた。

「暫くあそこに滞在するぞ」

「え?」

撩の言葉に、香は目を丸くした。だがそんな香には構いもせず、撩はコテージの前にクーパーを止めた。

「ね、撩」

「とっとと後ろに積んだ荷物を運ぶぞ、日が暮れる前にな」

香の言葉を最後まで言わせず、撩はさっさと車を降りると朝積んできた大量の容器を後部座席から下ろした。それを抱えてスタスタとコテージのドアの前に立つと、器用に片腕と顎で荷物を支えながら、銀色の鍵を取り出し、それを鍵穴に差し込んだ。香も慌てて車を降りると、いくつか荷物を手に持ち、すでに中へと入っていった撩を追った。

内部は綺麗に手入れをされ、作り自体はシンプルだが、過しやすそうな空間が広がっていた。ここいらの夜はまだ寒いのだろう、暖炉には薪が用意されている。香がリビングをキョロキョロと見回していると、キッチンでごそごそとしていた撩が呼んだ。

「おーい、何してんだよ」

「ごめん、でもここ、どこなの?」

香が慌ててキッチンへと足を踏み入れると、そこも使いやすそうなところで、ざっとみたところ食器も道具も一揃いは揃っているようだった。

「あぁ…昔な。槇村と組んでた時に出会った依頼人の持ち物さ」

ほんの少し懐かしそうな目をした撩だったが、それも一瞬でいつもの表情に戻る。香は一言、そうだったの、と言うと、小さく微笑んで荷物を置いた。

「撩ちゃん、腹減った〜。香、このキッチンの皿とか、冷蔵庫の中身とか、全部使っていいからな。夕飯の用意してくれ」

そういうと、撩はヒラヒラと手を振りながらキッチンを出た。はいはい、と苦笑しながら、香は運び込んだ容器を開けていく。どれも温めなおしたり皿に盛り付ければいいだけの状態だったのだが、せっかくなので何か一品でも作りたい。冷蔵庫を覗いて、香はサラダだけは作る事にした。

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あきゅろす。
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