CITY HUNTER
5
教授の屋敷から帰った後、情報収集に出掛けた撩を見送り、香とハナは夕飯の準備をしながら談笑していた。昨日はハナも緊張からくる疲れで夕飯を殆んど食べられなかったのだが、今日は朝から食欲旺盛だ。聞けばまだ学生で、若いなぁ、と香は笑った。
「何言ってるんですか、香さんと私、そんなに変わらないじゃないですか。お肌もキレイだし、ちょっと色素の薄い瞳もキレイだし」
「ふふふ、ありがとう。そうやって誉めてくれるの、ハナちゃんだけよ」
香のその言葉に、ハナは意外そうな表情を浮かべた。
「え?冴羽さんか、香さんのこと誉めないんですか?」
「あー、アイツは誉めるどころか貶すわね」
「えっ、嘘でしょ?」
「ほんと、ホント。今は言わないけど、男女とか言われてたしね」
「え、香さんが?」
「あたし、ハナちゃんぐらいの時はまだ男の子と間違われる事も多かったからな〜」
苦笑する香は、ハナから見れば女性以外何者でもない。だが、確かに中性的な面立ちだったので、言われてみれば…と、香を見つめる。
「ねぇ、香さん。ちょっとそう言う格好、してみませんか?」
「えっ?」
ハナの言葉に、香は思わず彼女の顔を見た。冗談かと思ったが、わりと本気のようで、香はたじろぐ。
「ちょっとだけでいいので!」
「いや、まぁ仕事で男装することもあったから、できなくはないけど…」
「ほんとですか?じゃあ、見たいなぁ」
「ん〜、じゃあ、ちょっとだけね?」
「やった!」
嬉しそうに笑うハナを見て、香はやれやれと苦笑いしながら、客間兼私室に入った。ハナはリビングでお茶を飲みつつ、香が部屋から出てくるのを待つ。
暫くして部屋から出てきた香を見て、ハナは手を叩いて喜んだ。どうせならと、香はさらしで胸を潰し、以前、潜入操作で着ていた白い男物のシャツにジーンズを身につけ、髪も後ろに撫で付けた格好で現れたのだ。
「香さん、カッコいい!冴羽さんも黙っていたらイケメンだと思いますけど、香さんはまたタイプの違うイケメンだなぁ」
ほぅ、とため息を吐くハナに、香は苦笑する。そう言えば、女子高生の時にこんなこともあったな、撩と出会ったのも、ちょうどその頃だったなぁと思い出していれば、突然、アパートの警報器が鳴り響いた。
「なっ、何!?」
ビクッ、と身体を竦めたハナの肩を抱き、香は客間へ駆け込んだ。ドアの鍵を掛けて仕込んであったトラップを次々に発動させながら、香はハナをベッドの下に押し込む。ちょうど人が入れるだけのスペースがあり、そこにハナを入れると、香は声を掛けた。
「ハナちゃん。もうすぐ撩が帰ってくるはずだから、絶対にここを出ないこと。いいわね?」
「でも、香さんは!?」
「あたしは大丈夫。撩が必ず助けてくれるから」
香はそう言ってニッコリ笑うと、ハナを隠すように、ベッドの前に立ち塞がった。程なくして、乱入してくる複数の足音と、相手を言葉巧みに誘導しながら連れていかれた香の足先に、ハナはなすすべもなく、ただ押し込められた穴の中で、声を必死に押さえていた。
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