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CITY HUNTER
1
ふと、香はまどろみながらシーツの上に手を這わせてみた。だが予想していた温かさはなく、シーツは既に冷えている。

「…りょお?」

呼んでも返事はなく、香は眠い目を擦りながらベッドから起き上がった。床に散らばった下着を身に着け、同じく散らばっていたパジャマを拾い上げてそれを着込むと、今は自分の寝床となった撩の部屋から出る。

廊下に出た途端、コーヒーとトーストの焼ける匂いが鼻に届き、香の腹が鳴った。訝しげにキッチンに足を運ぶと、そこに普段見ることのない撩の姿が、香の瞳に飛び込んできた。

「お、さっすが撩ちゃん、カオリンの起きる時間まで読めるようになっちゃった〜」

香がドアを開けたと同時に、フライパンから目玉焼きを皿へ移す撩がそう言う。

「…何してんの?」

「おいおい、朝起きたら、まずは『おはよう』だろ?」

「おはよう。で、いつも昼までぐうたら寝ているアンタが、何してんの?」

またツケでも増やしたか、はたまた何かしでかしたか…香の目が細められたのを見て、撩が慌てて手を振った。

「おい、別にツケも増やしてないし、何もしてないからなっ」

「自らそう言うなんて、ますますもって怪しいぞっ」

怒りのボルテージが瞬時に上がり、その手にハンマーを召喚しようとした香の手を掴むと、撩は彼女をリビングへと押し込んだ。

「いいから、座れって」

「ちょ…って、これ、撩が?」

見れば、リビングのテーブルには、すでにトーストとコーヒー、そしてサラダとフルーツまで用意されていた。そこへ撩が運んできた目玉焼きとウィンナーが並べられ、香はその前に座らされる。

「俺はもう食ったから、お前はここでさっさと食っちまえ」

そう告げると、撩は再びキッチンへと戻っていく。香はしばしポカンとしていたが、考えても無駄だと悟り、撩が用意した朝食に手をつけた。

いつもより少し時間をかけてゆっくりと味わっていたが、やがて食べ終わり、皿をキッチンへと運んだ香は、目を丸くした。冷蔵庫に入れてあった今日のための食材が、撩の手によって調理されていたのだ。先ほどキッチンに足を運んだ時に目につかなかったのは、どうやら彼が隠していたかららしい。そういえば、さきほどちらりと鍋を覗き込もうとしたら、慌てていたような気がする。

「ちょっと、撩!」

驚いた香を無視し、撩は彼女を再び彼女をキッチンから押し出した。

「いいから、いいから。お前、まだシャワー浴びてないだろ。歯磨きついでに浴びてこい。あ、服は用意しておくからな」

「え、りょ」

何か言いたげな香をバスルームまで連れて行くと、撩は有無を言わさず中に放り込む。

「もう…なんなのよ」

香は不可解な撩の行動に首を傾げたが、とりあえずさっぱりしようと、シャワーを浴びるために着たままのパジャマを脱ぎ捨てた。

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