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旧戦国
3


その後の事は覚えていない。気付くと名無しは雑賀の郷に帰ってきていた。どうやら雑賀衆の人間が戦地から連れ帰ってくれたらしい。あの時は分からなかったが名無しも怪我をしていたので、その治療を受けていた。

だが、名無しは自分の身体の事などどうでも良かった。あの時…自分の身代わりとなって斬られた孫市がどうなったのかだけ、彼が助かったのかどうかだけを知りたかったのだ。

人づてに彼が生きている事と、怪我は思っていたより浅く、今はもう大分傷も塞がりかけている事を聞いた。でもちゃんと自分の目で確かめたい。そう、自分がこの地を去る、その前に――。

数日後、完全に傷の癒えた名無しは早朝から部屋を抜け出していた。手には身の回りの物を最小限だけ持ち、ある場所を目指していた。

その場所は、孫市の部屋だった。微かな気配が障子の向こうから伝わってくる。少し躊躇った後、名無しはそっと障子を開けた。

そこには穏やかな寝息を立てる彼の人がいた。ちらりと覗く包帯が痛々しいが、思ったより元気そうだった。

――よかった。これで安心していける――

名無しは再び障子を閉めた。切なく微笑んだその瞳に、光る雫を溜めながら。


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あきゅろす。
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