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旧戦国
2

暫く二人で作業を進めていたが、蔵には同じような箱もたくさんあるため、新参者の慶次では分からず、一つずつ降ろしては名無しが確かめ、また元に戻す事を繰り返していた。

「あの…慶次様、もう大分降ろせましたし、あとは手伝いの人達とやりますので…」

大方出揃った頃、流石に申し訳ないと思った名無しが慶次に告げた。

「もう少しなんだろ?」

しかし慶次は手を止めずに言う。

「でも慶次様、お疲れでしょう?そのうち梯子も見つかると思いますし…」

これぐらい大丈夫なんだが、と慶次は苦笑したが、名無しは彼が息抜きを兼ねてここへ来ていることを知っていたので、これ以上手伝ってもらうのも気が引けたのだ。

「なら…」

自分が疲れず、かつ短時間で済めばいいんだな、と言った慶次が、突然視界から消えた。かと思うと、突然自分の視点が高くなる。目の前には一房の金の髪。

「けっ、慶次様っ!?」

見下ろすと、いつもは見上げている彼の顔が至近距離にあった。

「これなら名無しが指示を出す手間も時間も短縮できるだろ?」

慶次はニカッ、と笑顔で言った。

そう、彼は名無しを抱き上げ彼女の視線と手の届く高さを自分より上にしたのだ。

「えぇっ!?あの、いけません!おろして下さい!こんなことなさっては慶次様が余計疲れてしまいます!」

名無しは驚いて慶次に言うが、彼は

「こっちの方が俺は疲れないんだよ。それに、男が言い出したことを途中で放り出すのは粋じゃないんでね。さぁ、早く片付けちまおう」

と言って、彼女を下ろそうとはしなかった。結局、名無しは諦めて抱きかかえられたまま、上段の小物を探し始める。最初は気恥ずかしさと慶次への申し訳なさで一杯だった彼女もすぐに慣れてきて、支えていた慶次を自分の足代わりに、作業に没頭していた。



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