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旧戦国
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傍目にみても、その二人は目立っていた。片や、鬣のような金の髪と大きな体に派手な衣装を身に纏い、これまた大きな馬に跨がっている男。世に有名な前田慶次その人である。もう一方は体の割に大きな薙刀を持ち、こちらも馬に跨がっていた。女ながらに傭兵を生業としている名無しである。二人は先程から不毛な言い合いを繰り返していた。

「…なんでついてくるんですか?」

「そりゃ俺の行く方向が名無しの行く方向と同じなだけだろう」

「さっきからそればかりじゃないですか」

「それ以上の言葉はないねぇ」

「…」

しれっ、とした顔でそう言い続ける慶次に、名無しはさすがに我慢出来なくなっていた。だが、怒れば更に慶次の思うツボな事は、この短い道中でもよく分かっている。どうしたものか…悩んでいると、分かれ道に行き当たった。ふと、名無しに名案が浮かぶ。

「…慶次殿はどちらへ?」

「お前さんは?」

「慶次殿が先に言って下さいよ」

名無しはにっこり笑って慶次を見た。そんな彼女に、彼はすっと目を細め暫く考えた後に、一方を指した。

「…あっちかねぇ」

その慶次の指差す方向を見て、名無しは綺麗に笑顔を見せながら、馬首を逆の方向へと向ける。

「あぁ、ならここでお別れですね!では、また何処かの戦でお会いしましょう!」

そう告げると、名無しは慶次が何か言おうとするのを無視し、馬を走らせた。後ろも振り返らず、暫く駆けさせた後、もう大丈夫だろうという所まで来て馬の足を緩める。本当は慶次の指差した方向へ向かうつもりであったが、彼から離れられるのであれば、惜しい道でもない。

――アノヒトハ、トテモキケンナカオリガスル――

名無しの心にそんな声が響いた直後、背後から聞き慣れた声が聞こえて来た。

「よぉ、名無し!また会ったなぁ」


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