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旧KYO
秘密の呪文
夜の帳の中、苦しげな吐息が耳に届く。それは決して消えない、心の傷が見せる夢。

そんな時、彼は彼女を抱き寄せ耳元で名を囁く。たったそれだけのことだが、彼女は安らかな寝顔を見せてくれる。そんなことで自分も救われるようで、愛しい。

*******

またあの夢。大切な人をなくす、悲しい夢。何もできない自分は、やがて圧倒的な闇に押し潰されそうになる。

だがいつの頃からか、自分の名を呼ぶ声が闇から救ってくれるようになった。その声は、優しく護るような温もりを与えてくれる。たった一つのことで自分を救ってくれる存在が、愛しい。

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――ゆや――

たった二文字の言葉は、二人の間で密やかに交される時、たしかな息吹を持った言霊となる。幻の世で交された言霊は、やがて『絆』という名で現の世をも繋ぐ、揺るぎない意思へと生まれ変わる。

――ゆや――

それは二人を繋ぐ、二人だけの、この世でたった一つの秘密の呪文なのかもしれない。




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