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旧KYO
お酒にはご用心(2005年正月ネタ)

「…こいつに酒を飲ませたのは誰だ」

新年を迎え、おめでたい雰囲気を払拭するような顔で狂が言った。横には酔っ払い、彼にもたれ掛かるゆやがいる。

「ごめーん、狂さん!でも今日ぐらいはいいでしょ?」

そんな狂相手に、悪びれる事もなく幸村がいつものノリで言った。

「こんな酒の味も解らないチンクシャに飲ますな、勿体ねぇだろ」

狂は徳利に伸びるゆやの手を抑え、溜息を吐く。

「別にいーでしょっ、味ぐらい分かるわよ!って言うか、これ買ったの誰だと思ってんのよっ!」

酔いのため目元を紅く染め、何とも言えない色香を漂わせたゆやが狂に詰め寄った。徳利を巡って狂の腕と格闘したために少し着崩れ、さらに艶を増した彼女の姿を見る漢達の目が狂を不機嫌にさせる。

「…ダメだ」

ゆやを睨みつけ徳利も銚子も手の届かない所へやる狂だが、酔っているゆやにはその睨みも効かない。

「う〜っ…幸村さぁん!」

彼女はプッ、と頬を膨らませた後、飲ませた本人の元へ行った。

「狂が虐めるんですぅ」

フラフラと狂に対する愚痴を言いながら飛び込んで来たゆやを嬉しそうに抱きしめると、幸村は楽しげにとんでもないことを口にした。

「わぁ、ゆやさん可哀相〜!じゃあボクと二人で向こうで飲も?」

横で聞いていた梵天丸は慌てて止める。

「おいおい、ゆやちゃん、もう止めとけよ?幸村も悪ふざけは止せ」

「…ダメですか?」

「うっ…」

元々ゆやには甘い梵天丸は、幸村に抱きついたまま潤んだ瞳で見上げてくる彼女に僅かにたじろいだ。すかさずサスケが反対側から幸村とゆやの間に割って入った。

「おい幸村、何バカなこと言ってんだよ!ゆやねぇちゃんを離しやがれ!」

「そーや、そーや!」

後ろから紅虎もサスケに賛同の声を上げる。

「え〜っ」

「えーっ、じゃねぇ!」

ふざけたような態度の幸村に業を煮やしたサスケが、ゆやから幸村をベリッ、と剥がした。勢い余って、ゆやがよろめく。その先には何やら柔らかい物があった。

「キャ〜ゆやちゃん、いらっしゃ〜い」

「ふにゅっ!」

ゆやがよろめいた先には灯が手を広げて待っていた。彼女を胸で受け止め、灯はゆやの頭に頬擦りする。

「あかりひゃ〜ん、く、くるひい…」

「アラ、ごめんねゆやちゃん」

「…ぷはぁっ」

緩められた腕から顔を出し、ゆやは息を吐いた。

「でも、灯さんの胸って柔らか〜い!なんか美味しそうな匂いもするし…」

「んもうっ、ゆやちゃんたら、可愛いんだからぁ!」

((((そりゃアレが入ってりゃ匂うだろ))))

そこにいた漢達はゆやの発言に、心中で同じツッコミを入れたことは言うまでもない。

「…とっ、とにかく!いつまでゆやさんとくっついてるんですか、灯っ!?」

アキラが痺れを切らせ灯に食って掛かった。

「アキラ、この灯ちゃんに指図する気?」

「何言ってるんです、早く離れなさいっ!!」

「何よ、秘密バラされたいの?羨ましいならゆやちゃん奪ってみなさいよ!」

勝ち誇ったように見る灯に、アキラは怒りで真っ赤な顔になる。

「〜〜〜っ!!!!とにかく、離れなさいっ!!離れろよっっっ!!!!」

アキラは二人を無理やり引き離した。ゆやは再びよろよろと座敷をさ迷い、ペタリと座り込む。その前にはほたるの姿があった。

「ほたるさん、一緒に飲みましょ?」

潤んだ瞳とほんのり桜色に染まった頬で、ゆやはほたるににっこりと微笑む。

「…可愛い…」

ほたるはそう呟くと、ゆやをぎゅっ、と抱きしめた。その座にいた全ての漢から一斉に鋭い視線が浴びせられる。その中でも先程から殺気に近いものを放出していた漢がゆらりと立ち上がり、ほたるの前に立った。

「何?狂」

ほたるはゆやを抱きしめたまま、狂を見上げる。狂は無言でゆやの腕を取り、ほたるの腕から奪い取ると無理矢理彼女を立ち上がらせた。

「なによぅ、アンタは向こうで飲んでなさいよ!アタシは皆と飲むんだからぁ」

ゆやはジタバタと暴れる。

「…そんなに飲みたいなら俺から奪ってみろ」

そんなゆやに狂はそう告げると、不敵に笑って持っていた徳利の酒をあおった。

「…ふぅん、奪えばいいのね?」

ゆやは酒をあおる狂に言うと、突然彼に飛びついた。狂は彼女が届かないように徳利を頭上に上げる。が…、次の瞬間、彼は驚いて目を見開いていた。

「「「「「…っ!!」」」」」

狂だけでなく、そこにいたもの全てが驚き固まった。なんとゆやが、

――狂の首に腕を回し、キスを――

狂の口から直接酒を奪ったのだ。凍結してしまった一同を余所に、ゆやは喉を鳴らし、口移しの酒を飲み干す。そして満足げにこう言った。

「ゆやたんの勝ちぃ!」

それを合図に、周囲の者が騒ぎ出す。赤くなる者、青くなる者、様々だが、騒々しいことこの上ない。騒ぎの張本人は、ふふっ、と笑みを漏らし、狂の腕の中で夢の世界に旅立ってしまった。その様子をあっけに取られて見ていた狂は、やがて、クッ…、と笑うとゆやに囁いた。

「好き勝手やりやがって…このまま静かに眠れると思うなよ?」

――その後、狂とゆやの姿が見えないことに気づいた漢達は、新年早々ヤケ酒をあおる破目に陥り、今後皆の前でゆやには酒を飲ませないと心に誓ったとか。



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あきゅろす。
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