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あの流星群を1

















「痛い・・・・」





胸を押さえて地面に座り込み、私は額に汗を滲ませた。
どうしよう、最悪なタイミングできてしまった・・・・。ここからじゃ家まで遠いよ。

ズキズキと突然痛みが襲ってきた事もあり、私はその場で暫くうずくまっていると突然人の影が私と重なる。
誰 と、私は上を見上げれば そこには空と同じ色をした髪の青年が居て、彼は何をする事も無く私を黙って見下ろしていた。





「・・・・・」

「あの・・・っ」





まるで「興味が無い」とでも言った様な、そんな涼しい顔をして立っている青年を【名前】は不思議な思いで見つめる。
助ける気が無いなら早くこの場を去ってほしいと普段の私なら思うが 何故かこの時だけは違った感じがした。

綺麗に輝く青い瞳はまるで私の大好きな星の様で 思わず息を呑んでしまう。本当に、彼はとても綺麗な目をしてる。

そのまま ぼーっと暫くの間無言で見つめていると、突然その瞳が近くまでやってきて 私は数回瞬きをした。
何も言わず相手もただ じっ と私を見つめていて、何を考えているのか分からない表情をしている彼は本当に不思議としか言いようが無い。

すると突然、私の身体がふわっと浮いたかと思ったら 彼の腕がしっかりと私の身体を持ち上げていた事に 私は数秒遅れて気づいた。
何故 とでも言いた気な顔で彼を見つめれば、相変わらずやる気の無い目で私を見下ろしてくる。




「何か」

「いや、・・・お姫様抱っこって始めてだから・・・・なんか新鮮だな と」

「・・・・・もう痛くなさそうですね」

「ああ嘘嘘!痛いのは本当」




一瞬力のゆるんだ腕に落とされると悟った私は、思わず声を荒げて必死で彼にしがみ付く。なんとも情けない姿だが、地面に落とされるよりはマシだ。
相変わらず彼は白々しいとでも言いたそうな顔で私を見下ろすが、これでも一様痛いのは本当の事。



(ヤバイ・・・・また)



再び眉を寄せ 汗を垂らしながら蹲った私を見た彼は、一瞬の沈黙の後「はぁ」と深い溜息を吐いた。
・・・・なんか凄く馬鹿にされてる感がするのはこの際気にしないでおこう。と言うか言わなくてもそうであろうが。

そんな事を考えていたら、彼は何も言わず突然歩きだし 私は目を見開いて彼の顔を見つめてしまう。
それに気づいた彼は私にチラリと視線を向けると、再び視線を前に戻して静かに口を開いた。





「近くに良い場所があるので、そこまで連れて行きますよ」





「仕方が無いから」と言う言葉が最後に付いていたのは、流石の【名前】でも分かった。というか顔に書いてあるのがバレバレだ。



(―――――なんか不思議な人)



親切なのか 嫌味しか言え無いのか どちかかが分からないまま、私は大人しく彼の腕に抱かれる事にした。


















「ねえ・・・」

「何です」

「良い場所って・・・・」

「此処ですが」

「いや・・・此処」




ロケット団基地じゃないっ

私は、目の前で足を組み 慌てる様子もなくただ平然と椅子に座っている彼を見つめた。
そう言えば彼の服が妙に黒っぽいと思ったら、成る程。ロケット団の一員と言う事も頷ける。
さっきは『R』の文字が無くて気づかなかったが、どうやら彼はただ単に上の服を団服に着替えていなかっただけらしい。

私は憎い思いで彼を軽く睨むが、相手は無視して手元の本を読んでいた。





「ねぇ、私がこんな所に居ても良いの・・・?」

「良いも何も、此処は私の部屋です」

「いやあのね、ちょっと頭大丈夫?」

「何が」

「貴方はロケット団で、私は一般人」

「はい」

「一般の人がロケット団の基地に入るのは、ちょっとまずいんじゃないの?」




彼に連れて来られた時は たまたま運良く人とすれ違わなかったから良いけど、もし見つかってしまったら大変な事になるのは確実だ。
私はポケモンを持っていないから良いけど、あのロケット団の事だ。きっと人質にしたり、脅迫したりして何か悪事に巻き込まれるに決まっている。

私は彼が貸してくれたベッドで横になりながら、一人蒼い顔をして汗を垂らした。
もうあの痛さは無くなったが、それでも今すぐに動くのは流石に無理で 少し深めに布団を被り直す。

そして視線を本に向けたまま、先程から器用に返事する彼を 再び私は見つめた。




「あの・・・助けてくれて、おまけにベッドを貸してくれたのは感謝するわ。でも・・・」

「でも?」

「い、いい行き成り人とか入ってこないよね・・?」

「馬鹿ですね。入ってくるわけ無いでしょう」

「本当に言い切れる?!」

「当たり前です」

「何で?!」




挙動不審でわたわたと慌てる私に 彼は疲れたように重い溜息を吐いて椅子から立ち上がる。
そのまま私の前までやってくると、横になって寝ている私の耳元へ口を近付けてきた。





「あまり五月蝿いと襲いますよ」

「すみませんでした」




ドスの効いた凄みのある声で囁かれ、私は即答して謝る。
あの穏やかな美しい声の持ち主から まさかこんな恐ろしい言葉が吐かれるとは思いもよらなかった私は大人しく顔まで布団を被った。

すると彼は再び溜息を吐き、窓の外を見つめながら部屋のドアに手をかけた。



「もう日も沈みましたし、今日は大人しく寝なさい」

「・・・・本当に誰も来ないんですよね・・?」

「貴方もしつこいですね」




眉を寄せ、腕を組みながら睨んでくる彼の顔が怖くて 私は思わず布団で顔を隠してしまった。
だがその様子を見た彼は何も言わず、ただ部屋には暫くの沈黙が続き 微妙な空気が漂っている。まさか、怒らせてしまったか。
チラリと布団を少しだけ持ち上げて彼を盗み見れば、そこには再び部屋から出ようとドアノブに手をかけている彼の姿が居り 私は何故か少しだけ寂しい気持ちになる。


すると彼が今まさに何処かへ行こうとしたその瞬間、突然部屋のドアが勢い良く開き 思わず彼と私は目を見開いて固まってしまった。
バンッと派手な音と共に現れた人物は息を切らし、肩を上下に動かしながら酷く怖い顔で彼を睨んでいる。




「アポロ・・!!!貴方またサボってましたねっ」

「人聞きの悪い・・・私はただ外の空気を吸いに行っただけです。それと部屋はノックしなさいとあれ程言ったでしょう」

「黙れっ」

「おや、口調が荒くなってますよ。いつもの貴方らしくない・・・どうかしましたか」

「貴方のせいですよ!あ な た の」




ガシリッと彼の胸倉を掴み、凄みのある顔でそう叫ぶ相手を五月蝿そうな目でアポロは見つめていた。


(そうか、彼はアポロさんって言うのか。なんかちょっと良い名前で羨ましいなぁ・・・・)


私がそう思いながらボヤッと考え込んでいると、突然アポロさんを掴んでいた彼が私の方へと視線を向けた。
ビクリッと私は肩を震わせ そのまま急いで布団の中に隠れたが、それも呆気なくバッと勢いよく布団を剥ぎ取られてしまう。
ギロリと冷たく見下ろしてくる視線はアポロさんとはまた違った怖さがあって、私は顔を真っ蒼にさせて黙ってしまった。

すると彼は、後ろで何処か澄ました顔をしているアポロさんに振り返り、ジトリと相変わらずの表情で睨んだ。




「誰です」

「さぁ、誰だと思いますか」

「私が聞いてるんですよ、馬鹿ですか貴方は」

「すみません、何故彼女がこんな所に居るのか今思い出しますので少しの間考えさせてください」

「アンタのベッドの中に居るんですよ、アンタの!それぐらい分かるでしょう」

「はて、誰だったか――――」

「っ!」




苛立ちが頂点に来たのか、彼は部屋を飛び出そうとドアに手をかけ こちらに振り返る。
「貴方が分からないなら、報告するまでです」とだけ言ってドアを開けた彼を、アポロはギラリと目を光らせて見つめた。
そしてそのまま部屋を一歩出た彼の首元へアポロは素早く腕を振り下ろし、トスッと言う音と共に彼は廊下へと倒れこんでしまった。





「相変わらず五月蝿い男ですね、貴方は」





涼しい顔をして彼を気絶させてしまったアポロさんを見て、私は背筋が凍るのが分かった。
とりあえず、彼を怒らせたらただじゃすまないだろう。というか殺されてしまう。

すると私の視線に気づいたアポロさんがこちらに近づいてきて、私はぎょっと目を見開いた。
そのまま「まさか私まで・・・!」と思った私は目を硬く閉ざし、首を縮み込ませていると いきなりふわっと布団をかけられる。





「とりあえず、人が入ってこないと言い張った事は謝りましょう」

「・・・は・・はい?」

「兎に角、貴方はもう寝なさい」








ずるずると、まるで物かのように気絶している彼を引きずりながら部屋を出て行ったアポロさんを 私はボケッとした表情で見つめた。

なんか今彼の表情が凄く優しく見えたのは私だけか―――



私は恐る恐る布団を掴み、とり合えず彼の言う通り大人しく眠りにつく事にした。



















2010.6/13

とりあえず、リクの前に何してんだ って話ですよね(←
少しプチ連載(とまではいかないかも)的な感じで、すこーし続きます。
すみません、彼が大好きなんです。そしてチョコも大好きなんです。うん、アポロ((


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あきゅろす。
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