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プリンセスライン









「あ・・・あの」

「なんですか」

「・・・・・青です」

「・・・・・」




少しの沈黙、そして「残念ですね」と名残惜しそうに離れていく彼を確認し、私は止めていた息を一気に吐き出した。
あんな綺麗な顔が近くにあったら、心臓に悪すぎる事この上ない。おまけに手の甲にキスだなんて、なんたることだ。

良いタイミングで青に変わってくれた信号機に感謝しつつ、握られていた手が離れてくのに私が安心したその時、
急に彼の手が ついっ と私の手を撫で 思わずビクリッと身体が震えてしまった。
何事かと私は慌てて彼の方へと振り向けば、そこには笑顔で微笑んでいるアポロさんの顔しかなく 私は更に困惑する。




「あ、ああああのっ」

「顔、真っ赤ですよ」



ピタリと触れられた手がとても冷たく、私は体中が熱くなる感覚に襲われた。
するとそのまま頬に添えられていた彼の手が私の顎を捕らえ、優雅な手つきで視線を合わせられる。
じっと、宝石の様に綺麗な彼の瞳には私が映りこんでいて 今車の中は二人きりと言う現実に胸の高鳴りが止まない。

すると彼が私の耳元に顔を近づけ、唖然としていた自分に対しいきなり ふー と軽く息を吹きかけたきた。
ぞわぞわっと何かが体中に駆け巡り、私は車の中と言う事を気にせずに 叫びにならない声を上げてしまう。





「ひぎゃぁあああっ!」

「おや、少々遊びすぎましたね」

「ちょっ、ちょっとやめて下さい・・・!心臓に悪すぎますっ・・・」

「あぁ、すみません。かなり緊張しているみたいでしたので」




悪びれた様子もなく車の運転を再開したアポロさんを、私は真っ赤な顔で思いっきり横目で睨みつける。
ああ あれですか、大人の余裕と言うやつですか。畜生、これだからイケメンは嫌なんだ。

何事もなかったかの様に運転に集中する姿は、まさに素晴らしいと思える。その平常心を少し私にも分けてもらいたいぐらいだ。

「はぁ・・・」と深い溜息を吐いて、私は気を紛らわそうと車の窓から外を眺める。
時間的に5時近くだろうか。 外は一面綺麗な夕日で覆われており 都会の町並みとは思えない程綺麗な光景だった。
あまり学校から遠くまで来た事は無かったが、こうして車が街中を進むにつれて今まで見た事もない店が見れるのは なんだか新鮮な気分になる。


(でも・・・こんな所に来て、どうするんだろう)


食事と言っても、見渡せば何処も大きなショッピングビルが建っているだけで
私が知る限りじゃ とてもじゃないがゆっくりできそうな店は有りそうに無い。


すると突然アポロさんが一件のビルの駐車場へと車を動かすなり、機械にカードを差し込み そのまま中へと入っていく。
しかも周りに建っているどのビルより高くて大きなこの立派なビルに、普通に慣れた様子で車を運転できるアポロさんが凄い。いったいどれだけお偉いさんなんだろうか。



「・・・どうかしましたか」

「え、ああいや。お気になさらず」



と言っても無理な話だ。
ナマエはアポロを探るような目でガン見し、口元に指を添えて「うーん」と唸っているものだから 流石のアポロも気になり運転に集中できない。

すると車を停める為、バックしようと彼がナマエの助手席に手を添え 椅子の間から顔を出し、後ろを向きながら起用に車をバックしていく。
そのせいか、お互いの顔の距離がぐんと近くなって 思わずナマエはその顔を直視してしまった。



(うわ・・・・)



なんだろう、男の人の運転に集中する横姿って なんだか凄くカッコいいような気がするのは私だけだろうか。
いや、勿論アポロさん自体はカッコいいし 文句なんて無い。
けどスーツにこの表情は更に反則だ。これが大人の魅力と言う物だろうか、女子高生の私にはまさに効果絶大。




「さ、着きましたよ」

「あ、はい・・・」




シートベルトを外そうと私が手を伸ばしている間にも、彼はさっさと車から降りて行ってしまう。まったく無駄な動きが無い人だ。
私は鞄を持ち、ドアを開こうと腰を少し上げたら 窓越しからいつの間に着たのか アポロさんの姿が映っていて思わず驚いてしまう。
するとドアを開け、私の鞄を ひょいっ と持ち上げるなり 開いた手で私の手を持ち上げて車から降ろしてくれた。



「行きましょうか」



まったくなんと言うジェントルマンなんだろうか。
紳士的すぎるにも程がある。今の大人にはよく出来すぎた男だと私は思ってしまった。ああ、私の高校には絶対こんな素敵な人は居ないな。

そして私はそのまま彼のエスコートに甘え、震える手を必死で動かなさないようにしながら 私達は駐車場から出た。
































「じゃぁ、お願いします」

「かしこまりました」

「いや、意味わかんないです」




ただ一言、私はそう正直に言うと 彼が困ったように眉を変形させたのが分かった。
綺麗なお姉さんが手にしている服に、私はチラリと視線をやる。今からこれに着替えて来いと言うのが どうも納得できない。
するとアポロさんが「困りましたねぇ」と呟き、そのまま私の身体を上から下まで見た。




「制服姿だと、少し・・・」

「なんですか、私の制服姿がそんなに気に入らないんですか」

「いえ、私は構わないのですが・・・。ただ後で変な噂をたてられて困るのは貴方ですよ?」

「・・・・・・・」




確かにもっともな話だ。
制服着た女子高校生とスーツ着た大人の男性がこんな所で一緒に歩いていたら、援助交際と思われても不思議じゃないだろう。
ましてや、それが私の知り合いの耳にでも入ったりしたら とんでも無い事になってしまうのは目に見えている。

私が ぐっ と黙り込んでいると、アポロさんが少し身体をしゃがませて私の顔を覗き込む。
優しい笑顔で「すみません」と謝ってくる彼の姿を見ていたら、服がどうのこうのなんてどうでもよくなってきた。と言うより、
彼は悪くないのに何故私は 今彼を謝らせているんだろう。私を心配して言ってくれているのに、本当に心の狭い自分が情けなくなってくる。


そして私が「着ます」とお姉さんから服を受け取れば、彼は先程の悲しそうな表情を一変させ してやったりとでも言った様な笑顔を私に向けた。




「絶対に似合いますよ。貴方は細いですし、綺麗に着れますから」




私の腰を手でなぞりながら素敵な笑顔で言った彼を、私は思いっきり引きつった笑みで返してやる。
少しでも彼をいい人と思った自分が馬鹿に思えてくる。いや、実際言い人なんだけど・・・なんかちょくちょくセクハラっぽいのは何故だろうか。

そのまま まんまと彼の言いなりになってしまう自分を情けないと思いながら 私は隣で微笑んでいるお姉さんと一緒に化粧部屋へと移動した。





(に・・・似合うのかな)





運動してたし、太ってはないと思うけど もう部活を辞めてしまった今じゃそれも頼りにならないだろう。
私はアポロさんの視線を背中で感じ取りながら、泣きたい気持ちで着替えにむかった。



































プリンセスライン


































部屋を出るなり、私のもとへ案内人の人がやってきて そのままエレベーターの前へと連れて来られる。
そのままボタンで行く階を設定されるなり、「行ってらっしゃいませ」と 私一人だけ中へと入れられた。




(やっぱり恥ずかしい・・・・)




ビルの最上階で待っている彼を、私はいったいどんな顔で見れば良いんだろうか。
ただ不安に思いながら悩んでいても、その距離は確実に近くなっていった。



























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とりあえず自分の頭はパーンですね^^^(←

今日はアポロチョコレートを買おうと思います(笑



10/02/14

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