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マリッジブルー










「ナマエ元気無いじゃない。どうしたの?」

「んー・・・・あー、いやいや 何でもないよ」





結局夢じゃすまされず、ついにこの日がきてしまった。
有り得ない、これからあの写真の人のうち一人と食事に行くなんて。どうしよう。

私は自分の身なりが可笑しくないかと廊下の鏡で必死にチェックしていると、隣でその様子を見た友人が眉を寄せた。




「ナマエ、あんた今日なんか変よ」

「うん、私もそう思う・・・・・・あ、ねぇ顔とかおかしくない?」

「うん、日本語がおかしいかな」

「いやいやマジで言ってんのこっちは。 顔!私の顔どう?」

「・・・・・可も無く不可も無く、十人並み」

「よし」

「良いんだ」




「いつもどおりか?」って聞きたかったのかと、友人はその時理解したが
これ以上ツッコムとナマエの日本語が更に可笑しくなるので、すぐに諦める。

空がオレンジ色に染まる頃、時刻は4時ぐらいだろうか。
私達は下駄箱で靴に履き替え、校舎の外へと出た。日に日に冷たくなっていく風に震えながらも、ナマエは緊張のせいか別の震えが襲ってくる。

すると隣に居た友人が「あ」と声を出し、何かを思い出したかのような表情をするなり 私に顔を向けた。




「そう言えばさ、ナマエって今日開いてる?良かったら一緒にどっかお店行こうよ」

「あっ、ゴメン。今日はちょっと大事な用事があるんだ」

「マジでか。じゃぁ今度一緒に行こっかー!」

「うん、有難う」




そう言ってぐりぐりと私の頭を手で押し付けながら抱きついてくる友人に、私は「苦しい」と言いながらも思わず笑ってしまった。

そう、結局私は高校生なのだ。 今こうして友達と話したり、遊んだりしている時間が私にとって一番幸せな時間な故、
やはりどうしても婚約の事は理解し難い事だった。やっぱり、私には少し早すぎると思う。

どうせ食事だって一回家に帰ってからだと思うし、このままトンズらしたらいけないのかな。
そもそも昨日いきなり言われたんだし、私にだって意思があるんだ。相手が大人だからって関係ない。




「よし、決めた」




私が意気込んでそう言えば、隣で歩いていた友人が何事かとこちらを振り向く。
だがそれを気にする事なく 私は友人の手を掴んでまっすぐその瞳をみつめた。




「やっぱり断ろうっ。恋人よりも友達、それが私の高校生活! ああ、恋って難しいねまったく・・・!」

「何アンタ」

「いやぁー、やっぱり友達って良いねー。もう愛してるっ!」

「うわぁ・・・・」




思いっきり引いている友人を無理やり掴み、ぐいっとその腕を引き寄せて 今度は私から抱きついた。
あきらかに嫌な顔をされたが、知ったこっちゃない。 兎に角、今私の心を癒してくれるのは友達の存在のみなのだ。
追い討ちをかけるかのように昨日母がいった婚約話、そんなのは早いところ忘れてしまおう。

今まで悩んでいたモヤモヤを全て吐き出すように「はぁ」と呟けば 白い息が出て、そういえば冬になったな と改めてナマエは思った。
今、隣に居る友人は大学が既に決まっていて 私といえばまだ何も決まっていないのだから情けない事このうえない。


(就職どうしようかなー・・・いい加減決めないと自分遅れすぎてるし)


悩んでも答えは出ず、ナマエが頭を抱えようとした時 ふと、隣で居た友人の足が止まった。
そして気づかずに歩いて行ってしまおうとした私を急いで引きとめ、「ちょっと・・!!」と私に声をかけてくる。





「見てあれっ・・!ヤバイ、超カッコいいんだけど・・!!!」

「あーまたバスケ部のOBの先輩でしょ。あんた好きだったもんねー」

「違うわ馬鹿!先輩じゃなくてあの人、スーツ着てる人」

「・・・・あぁー、もしかして先生?」

「・・・・いや、ウチの学校にあんなイケメンは居ない」

「あ、そっか」

「うん」




即答した私に友人が素早く頷き、お互いに視線の先を見た。
するとそこには人だかりが出来ていて、主に女子が黄色い声援をおくってはキャーキャー騒いでいる。
「誰」と言う声が飛び交う中、私は少し遠くからその姿を凝視していると 何かが頭の中でひっかかった。



「ん・・・?」



眉を寄せ、少しの間唸りながら必死に考えていると 何故か昨夜の事を思い出した。
昨日母が見せてくれた写真、3人のうち1人に似ているような気がしてくるのは何故か。いや、別人かもしれないが、でも。

私は悩みながら、校門に寄りかかっている男性を見つめた。見れば見るほど絵になっているが、果たして本当に彼なのか不安になってくる。
だが、歩きながら序々にその距離を縮めて行くと、その微かな可能性は確信へと変わっていく。

少し薄めの青色をした短髪に、女性も羨む透き通った白い肌。
深い藍色の瞳はとても綺麗な色をしていて、微かに伸びた睫毛に ハッキリと浮き上がった手の骨格が色っぽさを際立たせていた。
黒いスーツをしっかりと着こなし、足を軽く組み 腕時計を見つめている姿はまるでモデルの様だとナマエは思ってしまう。




「・・・って、何見惚れてるの私」




まるで何かの魔法にかけられたかのような錯覚に陥った私は寸前の所で気を持ち直し、おもわず止めてしまっていた足を再び動かした。
友人の腕を掴みながら早歩きで校門へと向かい、なるべく群がっている女子達に隠れながら出ようとナマエは考える。

幸いな事に 周りに居る女子達が邪魔で目のやり所が無いのか、彼は腕時計だけをただじっと見つめていたので こちらに気づく事はあまりないだろう。


(良かった、これで今日は・・・・・)


安心し、ほっと息を吐いたのも束の間。
上手い感じに女子達の後ろを通り抜けようとした瞬間、私は念の為にと僅かながらもチラリと横に視線をやる。




そしたら何故か、腕時計を見ていたはずの彼の視線がじっとコチラを見ていて バチリと私の視線とぶつかった。




「あ」




しまったと口を押さえた頃にはもう遅く、彼がコチラに気づいたのか 周りにいる女子には目もくれず
コンクリートの地面を靴でコツコツと鳴らしながら 優雅に私の元へと近づいてきた。


(え、え、え・・・えええ!!)


動揺している私を気にもかけず近づいてくる彼に、隣にいた友人は「え、嘘っ。私!?」とか言っている。うん、素敵な勘違い有難う。
そして驚きのあまり固まっている私の目の前まで来た彼はそこで足を止め、私の顔をじっと見た後にゆっくりと口を開いた。




「では、行きましょうか」

「え・・・は、はえ?!」




慣れた手つきで肩を抱かれ、まるで流れるかのよな華麗な動きに 私は思わず間抜けな声を上げてしまった。
周りに居た女子達の突き刺さる痛い視線に、ざわめき声の中に紛れた残念そうな声が校門で響き渡り
部活中の男子まで見に来る始末だ。くそう、見せ物じゃないぞこの野次馬共め。

するとチャリと鍵をポケットから取り出し、車のロックを解除した音が聞こえ そちらに視線を向けると私は驚きのあまり、目ん玉が飛び出そうになった。



(うげええええっ・・・!ちょっ、これって外国の高級車だよね・・・・?)



家の車とは大違いで、綺麗に光り輝いている黒い高級車に私は思わず一歩後ろへと後ずさってしまうが肩にまわされた彼の腕がそうはさせてくれなかった。
まって、私こんな凄い車に乗れないって。と言うか周りの視線がありえないほど痛いんですけど!
今更ながら此処は学校の目の前。しかも校門を出たらすぐに一般道路に面しているので、高校生以外からの人々の視線がかなり痛かった。

私は助けを求めるかのように後ろに居る友人に顔を向けるが、そこには大口を開け 何とも間抜けな顔をした彼女の姿が映りこむ。




「良いなー」




ただ一言。それだけでもう私は無理だと悟った。
普通「私の友達に何するの」とか、「何処の誰か知らない人にナマエをつれて行かせないわ」とか。もっと素敵な言葉を想像していたのだが、
どうやら彼女に期待するだけ無駄だったようだ。 現に彼女の視線は私じゃなくて車。
そう、まさに 私<車 な感じだろう。 ・・・・・まったく私も酷い友人をもったものだ、明日は絶対に許さないぞ。

私はそう思いながら額に手を当て 眉を寄せていると、彼がいきなり助手席のドアを開け 手を差し出してくる。
パチクリと瞬きをし、私は初めての事で驚き固まっていると 彼が少し微笑みながら小声で囁いた。



「お手をどうぞ」

「え・・・あ、はい?」



さっと手をとられ、そのまま引き寄せられるように助手席に座らせられ 私はされるがままになっていた。
そして隣の運転席に彼が乗り、キーを差し込んで車のエンジンをかける。



「では行きましょうか」

「え、え・・・・!?」



私の返事も聞かず、彼は何事も無いように平然な顔をして車をだした。

どんどん遠ざかっていく学校を横目に、私の頭は緊張と驚きでいっぱいになってしまう。





(断るどころか・・・・・いったい何がどうなってんのか、さっぱりなんですけど)





カチコチに固まってしまった私に対し、彼が運転しているのにもかかわらず 器用に視線だけを私に向け、目を微かに細めたのが分かった。





















マリッジブルー



















(どうしよう、怖いって言うか 恐れ多すぎてどうしたら・・・・!)

隣に居る彼に視線を向けれず、私は先程からずっと車の窓から外の風景を眺めていた。
そして信号が赤になり、車が止まった時。いきなり彼が口を開いた。



「そう言えば、先程は人が多かったせいで自己紹介が遅れましたが・・・・」

「え、・・・あっ、いえ別に」



手はハンドル、そして視線は前に向けたまま そう言った彼の横顔はありえない程素敵だった。
ぼへーっと思わず私が見惚れていたら、不意に彼がコチラを向き 私は急いで顔を引き締める。



「私の顔に、何かついていますか?」

「え・・・!?いやややや別に!!ただ・・・」

「ただ?」



そこまで言いかけて口を閉ざした私に対し、彼は少し微笑みながら私の顔を覗き込んできた。
って顔近い。お願いだからそれ以上近づかないでくれ、私が死んでしまう。

だが彼の瞳が私を逃がすことはなく、見つめられることに耐え切れなくなった私は 思い切って言ってしまおうと口を開いた。





「か・・・カッコよかったので、み・・・見惚れてただけです」

「ああ、ではお互い様ですね」

「はい・・・・・って、はい?」

「私も、貴方に見惚れてしまいましたよ」






私の手の上に彼の大きな手が被さり、私は心臓が飛び出るんじゃないかと思った。
そして彼は運転席から少し身を乗り出し、私の手をそのまま優雅な動きで持ち上げ そのまま口元へと持って行く。






「私の事はアポロと呼んで下さい。―――――ナマエ」






ちゅっと小さなリップ音を立てて離れていく唇に、私は頭が真っ白になってカチコチに固まってしまった。
手にキスをされるなんて漫画や映画だけの世界かと思っていたのに、まさか自分がこんな素敵な人にされるだなんて夢にも思ってみなかっただろう。






私はただ彼の瞳に捕らえられたまま、心の中で必死に信号が青に変わる事を願っていた。






















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うわぁなんじゃこりゃぁ、でもアポロさん そいやぁっ!!^o^)/(殴
今日は祭りですね、分かりまs(ry

アポロさんの車に連れ去られるのが将来の夢です(帰れ



10/02/9

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