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公私混同はいけません






「ラムダさぁん…お腹痛いよぅ…」
「あん?生理か?」
「…女の子相手によくそういうこと言えますね」
「男相手に生理かなんて言えるかよ」
「そういう意味じゃないっつーの」


 机に突っ伏しながら大して笑えもしない漫才のようなやり取りをしたら痛みが悪化したような気がした。変なものを食べたわけでもないし、食べすぎたわけでも飲みすぎたわけでもないのに、何故こんなにお腹が痛いのか。(もちろん生理でもない)。これじゃあ仕事どころではない。今日中に仕上げなきゃいけない報告書があるのに。


「そんなに痛ぇなら寝てろよ」


 そう言ってラムダさんはあたしのノートパソコンをぱたりと閉じた。電源を落とされたような気がして(まだ保存してないのに!)一瞬どきりとしたが、作動中のランプはきちんと点灯していてほっと息をついた。
 いやしかし、寝てなどいられない。あたしは閉じられたばかりのノーパソを開いた。


「これ今日中にやんなきゃいけないんです。アポロさんに怒られるの嫌ですもん」
「アポロだって鬼じゃねーんだからわかってくれるって」
「いや鬼ですよあの人…こないだ風邪ひいた時に体調管理も実力のうちですとか言われましたもん。自分もしょっちゅう風邪ひくくせに」
「まぁアポロはその分ちゃんと働いてるから文句言えねぇよな」
「そーなんですよねー」


 ハハハ、と乾いた笑みを浮かべるとまた痛みが増した。ちくしょう、どうなってんだあたしの腹。痛くなるにしても何故こんな大事な時に。まったく空気の読めないハライタだ。
 机に突っ伏していた顔を上げて、キーボードに手を乗せる。けれどその先ができない。文章を捻り出すために頭を働かせるだけの余裕がないのだ。書かなきゃといくら思っても頭が動かなければ手も動かない。


「あーもー無理すんなって、寝てろ」
「やだ…アポロさんのお説教は嫌ぁぁ」
「どーせこんな状態でやったって酷い報告書しかできねぇよ、どっちみち怒られるんだから寝ろ。ほら、俺様のベッド貸してやるから」
「うぅ…」


 ラムダさんに手を引かれて席を立つ。彼の言うことは尤もだ。どのみち怒られる運命なんだ、もう腹を括ろう。
 お邪魔します、と小さく呟いて、ラムダさんのベッドへ潜り込んだ。ラムダさんの匂いがする。なんだか抱きしめてもらってるみたい、だ。


「…1時間したら起こして下さい」
「何で?」
「ちょっと寝れば治ります…多分」
「あーハイハイ。じゃ1時間したら起こすけど、治ってなかったら大人しく寝ろ。わかったな?」
「う…、はい」


 渋々ながらも返事をすると、ラムダさんは満足したように笑ってくれた。ちょっとだけ痛みがひいた気がする。
 おやすみ、と優しく響くラムダさんの声と一緒に、すうっと眠りに落ちた。




 はたと目が覚めると辺り一面真っ暗だった。


「え ちょ 今何時…1時ッ!?」


 ポケギアで時間を確認したら目玉が飛び出た。どう見ても夜中の1時だ。布団に入ったのは夕方の4時頃だったから、かれこれ9時間寝ていたことになる。あああもうアポロさんのお説教3時間コースだこれは。1時間で起こしてって言ったのに!
 …ていうかラムダさんはどこ行った?


「とりあえず電気つけな…おわっ」
「おー、起きたか」


 電気をつけよう、と思った瞬間にパチンと蛍光灯に明かりがついて。見れば、どこかから帰ってきたらしいラムダさんが電気をつけたようだった。こんな時間まで、一体どこで何をしていたんだろう。というか、何故こんな時間まであたしを起こしてくれなかった!


「ラムダさん!1時間後に起こしてって言ったじゃないですか!」
「そーだっけ?悪い忘れてた。んなことより腹はどうなんだよ」
「え、あ、…治った」
「そりゃよかったな」
「はい。…じゃなくて!報告書仕上げなきゃいけないから1時間で起こしてって言ったでしょ!?どーすんですかお説教3時間コースですよコレ!」
「俺が代わりにお説教3時間+反省文50枚コース受けてきたから大丈夫だって」
「なんだよかったー…ってえぇぇ!?」


 まるでちょっとその辺散歩してきた、とでもいうような言い方に一瞬聞き流しそうになった。どういうことですかと聞き返せば、ラムダさんは「やべぇばれた」というような顔。それだけであたしは全部がわかってしまった。書きかけの報告書を完成させてくれただけじゃなく、提出が遅れた責任も彼が被ってくれたんだと。だからこんなに帰りが遅かったんだ、と。


「ごごごごめんなさい…!」
「…ちゅーしてくれたら許してやってもいいけど?」
「ブッ」


 ちゃっかりしているラムダさんのことだから、どうせタダではないだろうと思っていたけど。思いがけない要望にかぁっと顔が熱くなった。一方のラムダさんはニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながらこちらへやって来る。まずいまずいと頭の中で警鐘が鳴った頃にはもう彼の腕にがっちり捕まってしまっていた。


「ちょ、最初からそのつもりでやったんですか」
「まさかぁ、そこまで計算高い男じゃねぇよ俺は。偏に俺様の優しさよ」
「嘘くさー」
「あれー、いいのかそんなこと言っちゃって。アポロに全部バラすぞ?報告書の提出遅れたのはナマエですって」
「仕事とプライベートの区別ぐらいして下さい」
「もう勤務時間外だぜお嬢ちゃん」


 ニヤリ、ラムダさんが不敵に笑う。まったく困った上司だ、優しいんだか意地が悪いんだか。
 …まぁ、そういうところも好きなんだけど、ね。


「ほら、早く」
「しょうがないですねぇ…」


 苦笑を浮かべながら、静かに目を閉じる。そっと触れるだけのキスをすると、そのままぎゅっと抱きしめられた。











20091229







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遥輝様より素敵すぎるラムダ様夢の頂物を貰いました!^^///
もう遥輝様が書かれるラムダ様にメロメロでございます^p^w笑←
読み終わった後も一人で妄想・・・ゲフン、いえ 余韻を楽しく味わって貰わせております^o^(貴様

素敵な小説に相互リンク、本当にどうも有難うございました!



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あきゅろす。
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