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私はきっとランス様が苦手だ。



この人は自分の何を見てるのか、何が気になるのかは知らないけど

でもきっと私に何か原因があるのかもしれない。
今こんな壁際に追い詰められる様になったのは、確かにさっきの発言のせいだけど

でももっと前から私を見ていたのは間違いないから。























「ら・・・ランス様」

「なんですか」

「一体何をなさるおつもりですか」

「何って・・・わざわざ言わないと理解できませんか」



喋る度にランスの息が頬にかかるのが嫌でも伝わる。
じっとその瞳で見つめられ、目を離さずに右手を私の頬に添えた。
そのまま、するすると何回か撫でられる感覚に、私の背中はぞわぞわっと寒気が襲う。
この人頭大丈夫なのか。



「ランス様、貴方男を襲う趣味があるとかまさかそんな筈は・・・」

「上司が部下の躾をするのは当たり前の事だと思いますけど」

「しっ・・・躾って」



寧ろ私をしつける前に、お前は精神科に行ってきた方が良いよ。
そんな私の気持ちを知ってかしらずか、彼はまったく私の前から退く気配をみせようとしない。
それどころかランス様がどこか楽しそうな顔をしてる様に見えてしまったのは気のせいではないだろう。
ちゃんと話してここから抜け出さないとな。
名前はランスを睨みながら、口を開いた。




「すみません、その前にちょっとお話ししたいことが」

「・・・・・・なんですか」



あきらかに今、ランス様の機嫌が一気に悪くなったのを見たような気がした。
眉間に皺をよせて、上から私を睨んでくる視線が痛くてたまらない。
それでも私は言わなければならない事があった。




「ヤドンの事なのですが」

「・・・・・まだ何か不満でも」

「当たり前です、というかそこまでしてお金を稼がなくても良いでしょう」

「馬鹿ですね、組織を完全復活させるためには結構な金額が必要なんですよ」




フッと鼻で笑われたのにイラつきながらも、私は彼を睨み続けた。
先程からずっと思ってはいたがどうしてそんな平然とした態度がとれるのか不思議でならない。

この人の言う事は間違っている。



「どうしてもこの仕事をやるおつもりですか」

「当たり前です、それがロケット団である私の任務ですから」

「任務・・・そうですか、これが任務ですか」



少しだけ笑ってやった。だって、こんなの可笑しすぎるでしょ。
そんな私の態度が気に食わなかったのか、彼の表情からは笑顔が消え、あの冷酷な顔が再び姿を現した。
頬に添えられた手も肩へと移動し、少しだけ強く握ってくる。
あー、今の彼は凄く怒っているんだろうな。




「何が可笑しいのですか?」

「いえ別に・・、ただ本当に小さい人だなあっと」

「っ・・・我々の何処が小さいというのです」

「何処がって、そんなのポケモンを傷付けて、自分達を守ろうとする所がですよ」

「・・・・っ!」



バシンッと鈍い音が部屋に響き渡った。
最初は何が起こったのか理解できなかったが、右の頬がジンジンと痛み次第に熱くなっていくのに、少しだけ頭が追いついた。
・・・あぁ、私はこの人に平手をくらったのか。

少し時間がたってからやっとランスに頬を叩かれたと言う事に私は気付く。
これは早く冷やさないと腫れるな。




「次何か言ったら、今度は平手じゃすみませんよ」

「マジですか、じゃぁちょっとは考えて発言をした方が良さそうですね」

「ほう、少しは理解しましたか」




ランスが見下したような目で、私に微笑む。
本人は余裕そうな顔をして、私の腫れた頬を楽しそうに手を添えた。
今に見てろ、その顔絶対にくづしてやる。




「じゃぁランス様、言い直します。私はこの仕事が出来ないので今回の任務から私を外してください」




言ってやった。
ランス様は顔には出さなかったが、少しだけ添えた手が微かに動いたような気がした。
その隙に私は彼の肩を思いっきり押し、その場から逃げるように彼との距離をとる。




「と言うわけで、それで宜しいでしょうか」

「まちなさい」

「・・・・なんでしょう」

「貴方は何故そんなにそこまでして拒むのですか。何がそんなに気に食わない?」

「そんなのここのやり方は自分には合ってない。ただそれだけですよ」

「・・・・それでよくロケット団に入ろうと思いましたね」




言われてみれば最もですね。
でも私はロケット団に入りたくてなにも入ったわけではないし、だけどそれがバレては困るから。
だから必要最低限の任務はやる。だけど反対にやらない任務だってあるのも当然だ。

だから今回のヤドンのしっぽについては、後者の方をとらせてもらいます。




「私の部下になれなかった事を、後から後悔しますよ」

「あー、確かに女の子にモテなくなるのは困りますねー」

「・・・・馬鹿にするのもいい加減にしなさい」

「というかあれですよね、ランス様って女の人には優しいくせに男となるとこの扱いですもんね。実に分かり易い性格・・あ、いや失礼」




絶対に態とだろと言う感じで喋ってやったら何だか少しだけ、すっきりしたような気分になった。
自然と顔が笑っていたのか、私を睨んでいるランス様の顔に青筋が浮かんでいた。
その顔を見つめている私の表情は、きっとニヤついているだろう。




「折角の優男が台無しですね」




瞬間、ぴくりっと彼の眉毛が釣りあがった。
イライラオーラがひしひしと伝わってくるこの感じは、先程の冷たい物とはまた違った恐さがあった。

たとえるならばまさに鬼。




「じゃぁ、自分はこれで失礼しますね」

「ええ、もう二度と戻ってこないで下さいね。したっぱのしたっぱが」

「自分の服もしたっぱとデザインがあんまり変わって無い事わかってるんですかね」



ハッと鼻で笑ってやりながら、自分の服を強調するように指をさして言ってやった。
そして気付いたら、ランス様の手には先程まで転がっていた椅子が。
まさかそれを投げる気か。


「すみません、よく聞こえませんでした。もう一度言ってください」

「いえもう時間なので自分は寝ます、おやすみなさいランス様」

「そうですか、出来れば一生眠ってても構わないんですがね」




バチバチッとお互いの目の間に火花が散って見えた。
先程見つめられる感覚より、やっぱり私にはこうやって睨み合ってるほうが性に合うようだ。
まぁこの人の事はあまり好きになれそうにはないが。

私は最後に、自然とボソリと呟いてしまった。




「ヤドンに呪われろ」







バキッ!と椅子が折れる音が聞こえたので、私は素早くランス様の部屋から飛び出していった。

そのすぐ後、椅子がドアを超えて廊下の壁におもいっきりぶつかったのを
どっかのしたっぱが見たとか見てないとか。













こんな上司の部下は無理











これからすれ違う度に笑ってやろうかな







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あれ、何か最初と大分違う雰囲気に←
怒ってる時の可愛いランス様も大好きです


09/11/7

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あきゅろす。
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