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あれから部屋に行き、荷物を全部片付け終わる頃には夕方になっていた。

とりあえずお腹がすいたな と思った私はロケット団には珍しい食堂へと行くために重たい腰をあげた。



(ご飯がカンパンとか、パンの耳とかじゃないでしょうね・・・・)






最後にくるのは罰ゲーム





「ぽ・・・ポケモン・・・?」

「あぁ、お前持ってねえだろ?したっぱのしたっぱでも普通、皆3匹ぐらいは持ってんぞ?」




がやがやと騒がしい食堂で一人食事を取っていると、幹部の所から戻ってきたヤド先輩が「隣あいてるか?」
と、言って私の横に食事の乗ったお盆をテーブルに置いてきた。

なんかヤドンの事があってから私が先輩を見る目がすっかりかわってしまったんだよね。
その証拠に一緒に食事をとるのは良いものの、その件があってどこか話しにくそうだし。
あ、ヤバイまた笑いそうだわ私。


そしてそんな私を気にかけずに、しばらくの沈黙の後に切り出した話題が「自持ちのポケモン」の話しである。
ああ、そういえばすっかり忘れていた。



「あーポケモンかぁ・・・」

「明らかにお前持ってねぇよな・・ってかバトル初心者って感じの顔してるしな」

「むっ・・・失礼な、これでも一様・・・」





「一様」の後の言葉に詰まり、私は話すのを一度辞めた。

どうだろう・・・もうかれこれ3年前以来バトルどころかポケモンすら持ってないし、
これは初心に戻ったってこと・・・なのかな?うーんちょっと難しいぞ。

行き成り黙り込んだ私に驚いたのか、ヤド先輩が目を見開いて固まっているのが視界の隅に映る。
そんな先輩も気にもかけずに、私は更に一人でもんもんと悩みを深ませる一方だ。

「そういえば最近ずっと自分のポケモン見てないや」と何処か遠くを見つめてボーと考えだす。


(私のポケモン元気かなぁ・・・)



まだ湯気が立っているつやつやのお米を箸でつつきながら、徐にそれを口に運んだ。
温かくてふわふわなお米に少し感動しつつ「美味しいな」と内心呟き、気付かないうちに
更に口にパクパクと無心にご飯を運んでいた。

あー、ご飯美味。ロケット団も少しはまともな所だったのね。


「お・・おい、何か俺様ヤバイ事でも言ったか・・・?」

「え・・・ああいや別に」

「いやそう言うけどよ・・・お前なんか無言で飯食うと怖ぇよ」

「そんな事ないですよ・・・あーご飯が美味しいなー」

「ぐっ・・・・」




私の態とらしい言い方に引っ掛かったのか、ヤド先輩は泣きそうな顔をして「ほ・・ほら食えよ」と
コロッケやら色々と私のお皿にひょいひょいっと乗せていく。

な、なんだこの素直さはっ・・!ってかその顔は反則でしょ先輩!


(ああやっぱり先輩可愛いよっ、萌えー)


そして私は先輩から貰ったおかずをさっそく口に運び、その味を堪能した。
見る見るうちに幸せそうな顔をしてしまう自分は単純だなと思ったが、そんなのはもう気にしない事にした。



「いやー、なんだかわるひでふねー」

「口に物入れて喋んな!」

「んぐ・・・・いやいやすみません。所でポケモンどうしましょうか」

「あ・・?あぁ、そうだったな」




本題を思い出したヤド先輩がふと、足元に置いてあったケースに手をのばし、カチッ と音を立てて開く。
そこには何個かのモンスターボールが入っており、その内の二つを先輩は取ると私に渡してきた。
先輩あんた凄いの持ち歩いてんのね。
ってか私モンスターボールを持ったのかなり久しぶりなんだけど。



「ま、したっぱのしたっぱだし在り来たりなポケモンでも文句言うんじゃねぇぞ」

「えっ・・?あ、はい。有難うございます」

「おー」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」





(え、こんな簡単にポケモンもらっちゃっていいの?!)


そんな事を考えながら、私は二つのモンスターボールを じー っと見つめた。
まぁ、したっぱのしたっぱに渡されるポケモンなんてたかが知れてるがそれでもほんの少しの好奇心からか、
中に何が入っているのかが気になって仕方が無い私は、「んー」と唸りながらボールと睨めっこをする。

まぁ、無難にアーボックとかかな・・・いやでもそれは女が多いし・・・ということは
マタドガースかな?私あんまりよくこの二匹の事を知らないんだけどな。

すると中で カチカチカチッ とポケモンが揺れているのか、ボールが左右に揺れ動き始め、私は驚いてご飯を食べるのをやめた。



「え・・・ちょ、ヤド先輩・・・中でポケモンが」

「だからその呼び方いい加減辞めろってーの」

「いや、そうじゃなくてですね」

「ほら、さっさと飯冷める前に食っちまえよ。」




駄目だ、聞いちゃいねえ と私は内心そう呟き、いまだ小刻みに揺れているモンスターボールへと再び目を向ける。

(もしかして出たいのかな・・・?)

不謹慎にもそう思った私は周りをキョロキョロと見渡した。
現在食堂にはかなりの人数がいるものの、幸いな事に私達は隅の方のテーブルで食事をしているため周りに居る人の数は少なかった。
大丈夫・・・だよね。
ちょっとぐらいなら と思い、私は意を決してボールを開ける事にした。

揺れていたボールが パカッ と音を立てて開くと、それは徐々にポケモンの姿へと変化していき、私の目の前に現れる。



「ズバッ!」


おおおっ、ズバットか。



「おい、静かに飯も食ねえのかお前は」

「ズバズバッ・・!」

「ん、お前声少し可笑しくねえか・・?」

「いや明らかに私じゃないからね先輩」



「あー?」と眉間に皺を寄せてた先輩の顔がこちらに振り向く。
そして徐々に目を見開き、口をあんぐりと開け なんとも間抜けな表情でしばらく固まっていた。
あ、その顔良いですね先輩。


「ばっ・・・馬鹿!!何、此処で出してんだよお前!!」

「いやー、これ中ズバットだったんですね。確かにしたっぱのしたっぱにはお約束なポケモンな事で」

「話し聞けよ!ってか早くしまえソイツ!!」



ヤド先輩が怒った顔で怒鳴ると、テーブルの上でバサバサッと飛んでいたズバットが私の頭の上に止まって唸り声を上げた。
どうやらこのズバットはヤド先輩には反抗的な様だね。

モンスターボールを握り締めズバットを戻そうとしている先輩に負けじと、それを意図も簡単に避けるズバットに
先輩のイライラ度は更に増してく一方だ。
ああ、駄目だ本当に先輩可愛いすぎる。


(それにしてもこのズバット動き早いな)


ぼやーっと二人の格闘している様を眺めていたら、それに気付いたヤド先輩が私の方をキッと睨み、
一旦ズバットから視線を外してこちらに振り向いた。
あ、手伝えって事ですね。


「おいっ、ボサッとつったってねーで早くソイツを捕まえろ!!」

「あーはいはい。ほら、こっちおいでー」

「スバッ」


私が手を広げると、意外にも素直にズバットはそれに従い嬉しそうに腕の中にすっぽりと入ってきた。
おお、なんだコイツ可愛いじゃないか。
「先輩ほら、」と視線を促すと、絶対捕まえる事は無理だと思っていたのか
呆気に取られていた先輩が弾かれた様にボールを握り直して、今度こそズバットを戻す。



「いやー、素直で可愛いズバットで良かった良かった」

「良かったじゃねーよテメェ!!」

「あたっ!ちょ、頭グーは痛いって」

「うるせ!ってかそもそも食堂でポケモン出す馬鹿が何処にいんだよ!!」

「そんなに怒んないの先輩、今度ヤドンの写真あげますから」

「いらねぇ!」



隣で未だにあーだのこーだの怒鳴っている先輩を「はいはいすみませんでした、もうしませんよ」と、適当に流して
残っているご飯を早く食べてしまいましょう と気にもせずに、再び箸でご飯を口に運んだ。


(そんなに怒んなくても良いのにどうしたもんだか)


周りの皆も数人はこちらを見たものの、殆どの人がどうでも良いかのように話しをしながら食事を楽しんでいた。
ロケット団と言っても、所詮したっぱの集まりであるこの場に「緊張感」と言う言葉はどうやら存在しないらしく、寧ろ
ふざけてる奴が多いぐらいで、真剣に仕事をしてるのはごくわずかな人達のみだ。

チラリと隣を横目で見ると、先程まで怒鳴っていたヤド先輩も不満そうな顔をしながらも疲れたのか、それとも
ただ叱る事に面倒臭くなったのか、渋々箸を動かしていた。

そんな先輩に私はお詫びにと、おかずをお皿に分けてあげると一瞬驚いたような顔をしたが、すぐにいつもの仏頂面に戻り
黙って食事を始めた先輩を見て「やっぱり可愛いな」とか思ったりした。
ああ、萌えを有難う先輩。


「にしても此処の食事ってちゃんとしてるんですねー」

「・・・・お前どんなの想像してたんだよ」

「かんぱんとかー・・・」

「はぁ?」

「あと、パンの耳とか?」

「ブッ・・・!」



「汚いですよ先輩」と、私はハンカチを渡すとそれを受け取った先輩は口を拭いながら「お前洒落になんねえよ」
「てかお前さっきからロケッド団馬鹿にしすぎてねえか?」等と愚痴を言い始める。

そんなに可笑しかっただろうか?と私は首を捻った。



「いや、だって地下で活動してるって聞いたからてっきりそうかと」

「そんな飯で俺等がやってけるかっての!!」

「そんなもんですか?」




「ええ、まず私は少なくともやっていけませんがね」



「「・・・・・・・」」



言い合っていたのが突然ピタリと動きが止まり、嫌な沈黙が訪れた。
明らかに私と先輩以外の声が聞こえ、横へと視線を送ると同じく先輩も青い顔をして固まっているのに気づき、
何やら言ってはいけない事を言っしまったような気がしてくる。
嫌な汗が頬をつたり、私達は声のした後ろへとゆっくり顔を向けた。

するとそこには、薄い青色の髪をした人物が目を細めて、私達を静かに見下ろしていた。
その目だけで十分人を殺せるんじゃないか と思うほどの威圧感に自然と体が後ろへと引いていく。







「あ・・・アポロ様っ・・!」





不意に先輩がそう名前を呟く。
それを聞いた名前は信じられないといった顔を隠しきれずに、その人を呆然と見上げた。

(ま・・・マジでか)




この人があの、ロケット団を3年かけて再びまとめあげた最高幹部のアポロ様









「こんばんわ、何分待っても新入団員が私の部屋に集まらないもので来てみたのですが・・・ここでしたか」








そう言ってアポロは口元に手を添えて、微かにだが笑ったような・・・そんな気がした。








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はい、きたよアポロ様。大本命です←←
ってか食堂とか勝手な設定付けてしまってすみませんorz
だって憧れるんですよ・・!したっぱ皆でガヤガヤとご飯を食べて・・・、
それでもって幹部の皆さんは各部屋で静かに食べてそうな感じが・・^p^)
いや色々とすみませんでした。


09/11/2

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