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「ん・・・・・」



小さく声を漏らし、重たい身体を少し動かせば 窓から差し込む光が顔を照らした。
朝日の眩しさに少し目を細め、ランスは溜息を吐くように息を吐けば ふと下に視線をやる。




「・・・・スー・・・」

「・・・・・・・」



なんとも幸せそうな顔をして寝ている名前の姿を、ランスは呆れた顔で何も言わずにただじっと睨んでいた。
そう言えばあの時彼女にもたれ掛かって、そのまま自分は寝てしまった事を思い出す。

確か「朝になったら起して下さい」と自分は言ったはずだが、結局は自分で起きてしまった。
と言うより、自分よりも熟睡してしまっている彼女の姿が不思議で仕方が無い。





「・・・・・・起きないんですか・・・」

「・・・・・・・んー」

「・・・・・朝ですよ・・・・」

「・・・・・・」





これは完全に駄目だ。

ランスは深い溜息を吐き、じっ とただ静かに彼女の寝顔を見下ろした。
























思えば、最初からこの女は気に入らなかった。



自分は間違っていないと 自分だけは正義だとでも言いたげな表情で睨んでくる彼女の目がどれだけ私をイラつかせた事か。

本当に何故ロケット団に入ってきたのかが謎で仕方が無い。
ポケモンを傷付けるのが嫌で、おまけにわざわざ男の格好をしたり、上司に逆らったり
自滅的な行為をしてもなお、まだ彼女が此処に居たがる理由が分からない。






「辞めてしまえばいいのに」





ただ無表情で、自分でも驚くほどに冷たい声でそうポツリと呟けば ピクリッと彼女の身体が動いた。
だがまだ起きては居ない事に気付いたランスはそのまま名前に近づき、その寝顔をじっと静かに見つめる。


―――ああ、見ているだけで心がモヤモヤする。
そこまで自分はこの女が嫌いだったのか。 顔、そして彼女の声を聞くだけで私はいつも何か複雑な思いに悩まされていると言うのに。

どうして、


どうして彼女が・・・・








「どうして貴方が、此処に居るんですか」







どうして私の目の前に現れた。



絶対に、彼女も
そして私も、同じ組織と言う立場で出合ってはいけないのは目に見えていると言うのに。

どうして『彼女』なんだ。

この女に人やポケモンを傷付けれるわけがない。
なのに何故、ロケット団に入ってきたのか―――



考えれば考えるほど、ランスの頭は痛くなった。
そして名前の顔を見つめれば見つめるほど、胸が痛くなった。

何故だろう。いつもはこんな事を思わないのに、疲れているせいだろうか。
自分らしくも無く、ここまで彼女の事で悩まされてしまう自分が情けない。





―――ああ、駄目だ・・・・イライラがおさまらない。







「どうしてなんだっ・・!」






噛み付くように彼女に叫び、その胸倉を思い切り掴み上げれば 彼女との距離が一気に縮まった。
寝ているだなんて事も関係なく、彼女の顔と自分の顔を無理やり合わせる為 服を強く握り持ち上げれば
その衝撃のせいか、眠りから覚めた彼女は眉を寄せ 重たそうにその瞼をゆっくりと上げた。






「・・・・・・良い夢が見れましたか」






皮肉っぽく、鼻で笑いながら冷たく言い放てば ただ彼女は黙っているだけだった。
ぼーっと焦点の合わない虚ろな目で黙り込んでいる彼女にランスは掴んでいた服を離せば、そのまま彼女は後ろへと倒れこんでしまう。

まるで人形のような寝起きの彼女に不審を抱く事無く、ランスは彼女に視線を向けると不意に名前の口が小さく動いた。





「・・・・・いえ、貴方のせいで最低な夢しか見れませんよ」

「・・・・・・ほう」





睨む力も無いのか、彼女は虚ろな目のままボソリとそう呟き そして静かに目を閉じた。
そのまま視線が合う事なく、ただランスが睨んでいると 名前は目を瞑ったまま話し出す。





「・・・・私の事、嫌いですよね」

「・・・・なんですか行き成り。気味の悪い」

「私なんかが入ってこなければって、思ってるでしょう。そうすれば、狂わなかったのにって」

「言っている意味が分かりませんね」

「・・・・・・・ランス様」

「・・・・・なんですか」

「ポケモン・・・・・嫌いですか?」





瞬間、ランスの目が静かに見開いた。
微かに息を呑む音を聞き取った名前はそれを確認し、そのまま話を続ける。





「トレーナーだって、ロケット団だって・・・・何も変わらないんですよ」

「・・・・」

「少し残酷な事もするけど、でもそれが嫌いだからって理由じゃ無い事は知ってます」

「・・・・・で?だからなんですか。嫌いじゃなくとも、別に必要以上に親しみを込める意味が何処にあるんですか。
 貴方のようにポケモンを大切にしたくてたまらないロケット団に、なれと言うのですか」

「そんな事一言も言ってないですよ。ただ正義面している私が  嫌いなんでしょ?」

「ええ、そうですね。少なくとも、貴方の様な人がロケット団に居ては駄目でしょうがね」





フッと笑ったランスは黙っている名前を一瞥すると、そのまま笑みを消し 冷酷な表情を浮かべて睨んだ。





「ロケット団が復活するために、私達はどんな事でもする。例えそれがポケモンや人を傷付けようとも、関係ない。
 誰が泣き叫ぼうとも、止めようとも、どんなに汚かろうとも、それが絶対なんだっ」




『絶対』
小さく叫ぶようにランスがそう言い、名前を未だに睨んでいると そこでようやく閉ざしていた目を開いた。
名前は真っ直ぐランスを見つめ、上半身を起し 彼と視線を合わせて口を開く。







「ロケット団は、ただ闇雲にポケモンを苦しめる組織なんかじゃない」






力強く言った名前の言葉に、思わずランスはビクリと身体を震わせた。

何故・・・・・何故だ。
今、不覚にも彼女が一瞬、あの方に見えたのは。


ランスは戸惑い、何も言えないでいると 今まで黙っていた分を吐き出すかのように名前は話し出した。





「復活するために、皆見失ってる。ロケット団が復活するためなら、もっと残酷な事をする必要があるって思い込んでいるけど、それって違うと思う」

「・・・そうやって、自分が此処に居れる理由を言いたいだけですか」

「違う。 ただ今のロケット団って、このままじゃ潰れると思うから」

「ありえませんね」

「ありえる」

「何故?」

「だって、・・・・サカキ様がそう言ってたから」




私の言葉に、ランスの表情が一気に変わったのが分かる。
そして彼は、「あぁ」と何かを確信したかのように小さく呟き 私の顔を見て笑った。




「貴方が気にくわない理由、ハッキリしましたよ」

「・・・・・なんですか?」

「貴方――――」

























知る者と知らぬ者























私より、もっと前のロケット団の事を 知っている――――――



































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ランスと進展する手前のお話。
お互い素直じゃないって萌えr(殴

性格が逆なようで似てるのってのはお約束(←



10/04/01


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