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「ただいまー・・・・ってまだ戻ってないんだ先輩」




あれから倉庫に寄って必要な物を持ってきたは良いが、部屋に戻るなり先輩が居ないと言う重大な事に私は気づく。
肝心の男性が居ないにも関わらず 部屋の内装準備を一人でこの量をやれと言うのか。

私が「うーん」と一人で荷物を睨みながら唸っているその時、突然私の腰に付いていたボールがカタカタと揺れ動いた。





「え・・・?!」





一瞬の不意をつかれ、パカッとモンスターボールは開きかけたが すぐに気づいた私はそれを慌てて無理やり閉じてしまう。
またズバットが勝手に出る所だった。・・・と言っても既に最初の一匹はシルバーに取られてしまっているため、残りの一匹となってしまったが。
中はまだ確認した事は無いが、先輩が「両方共ズバットだ」とか言ってたから特に気にはしていなかったので私は再びそのボールをポケットの中へと押し込めた。




「さてと、さっさとと部屋片付けて先輩驚かせてやろっと」




今日はやけにボールが揺れ動くような気がしたが、それを無視して私は作業を進める事にする。
ボールがポケットの中で左右に揺れ、今にも出たそうにしているポケモンに気づく事無く 私は腕まくりをするなりピンク色のカーテンに手を伸ばした。



































あれからと言うものの、彼等と俺の立場は綺麗に逆転してしまった。
暫くランス様、そして俺の雑用係として働くことになった愚かなしたっぱ二人を 俺は足を組み直しながら顎で使いまわしている。
あー、なんて楽なんだろう。俺給料このままでいいから一生雑用が欲しいぜ。

そんな事を思いつつ、上から物を言う様に「ん」と短い言葉で書類の束を差し出せば、彼等は唇を噛み締めながら俺を睨んできた。




「おら、さっさとその紙束処分してこいよ」

「テメェ、俺等が雑用になったとたんにデカイ面しやがって・・・!!」

「あー、ランス様ー なんかこいつ等が言ってま「あー!!あー!!何でもないです!」

「そっそそそーですよ!ほら、ちゃーんと仕事してますから俺等!」

「はっは・・!懸命だな」



ニヤニヤと笑いながら彼等に一言言えば またギロリと俺は睨まれた。
が、ランス様と同じ部屋で仕事をしている今、彼等は迂闊に仕事を放棄できない身である故に こうして機嫌をとるように喜んで雑用してくれている。
なんとまあ間抜けと言うか、頼りない部下なんだろうか。アテナ様に思わず同情してしまう。

だがランス様に睨まれながらああ言われれば、誰だって必死になるに決まってるんだけどな。




「私が良いと言うまで一生私達の雑用ですので、ああ勿論拒否権はありませんから。それと逆らったら即問答無用でクビの覚悟で」





あの時の彼等の顔と言ったら、傑作過ぎるにも程があった。
その後も必死に「でもアテナ様が・・・!」とかゴタゴタ何か言っていたが、そんなのは関係無い。
一様俺とランス様で確認を取ってきたがアテナ様は笑顔で「あぁ、良いわよ」と さらりっと言ってのけた。

もはや反省するまで彼等に残された道は俺等の雑用以外に無いって訳だ。
きっと名前もアテナ様の所で働くようになっても、アイツ等が居ない方が働きやすいに決まってるしな。



「ランス様」



雑用係の彼等が渋々部屋を出て行ったのを確認し、我上司に声をかければランス様はすぐに振り返った。
書類に向けられていた真剣な視線は俺の視線とぶつかるなり、「なんだ」とでも言いた気な表情をしている。



「最近、寝てないですよね」

「・・・・・・」

「図星ですか」

「だからなんです」



眉間にシワを寄せ、苛立ち気に足を組み直したランスを見れば 誰だって今の彼は疲れていると言う事が明白だった。
それ程までして仕事を早く片付けなくても良いんじゃないかと俺は思ったが、それが幹部と言うものだろうか。

俺はランス様の机の上に置かれた種類の束を全部手に取り、溜息を吐きながら部屋のドアに向かった。



「これをラムダ様とアポロ様の所に届ければ良いんですね」

「・・・待ちなさい、それは私がやります」

「これぐらい俺にだって出来ます。・・・というか、出来れば寝てください」

「何故です」

「ランス様の整理した書類には文字の間違いが多すぎます」



俺の言葉に、ランス様がぐっと言葉を詰まらせるのが分かった。

寝ていないのに、しかも長時間続けて書類の処理なんかしていたら間違えるのなんて当然の事。
これ以上ランスが間違えた書類を直すのも面倒と思った彼は、書類を確認しながら逃げるように部屋を出て行く。



「じゃ、そう言う訳なので今日はもう寝てください」



そう言うなり彼は姿を消し、静まり返った部屋には バタン と扉が閉まる音が響き渡る。
そして暫くの沈黙の後に、ランスは机の上を呆然と見つめながら深い溜息を吐いた。



「・・・・・・・眠い」



これは可也きている と、自分でも思わず自覚してしまう程 睡魔が一気に押し寄せてきたのが分かった。
前に寝たのは2日前だったか。その日以降気にしないように仕事に没頭していたが
それが今、部下である彼に言われた事により「眠い」と言う事を思い出されてしまった為 急に視界が霞んで見える。

流石に今日ばかりは寝た方が良いと思ったランスは椅子からゆっくりと立ち上がるが、不意に視界の隅に映った書類に目を留めてしまう。



「・・・・・これは、」



ピラッと書類を手にとって見れば、それは彼にまかせた重要な内容が書かれている物であり ランスは思わず顔を顰めた。
保管は各自自己責任とは言え、これは流石に見過ごせなかった彼は置いていく訳にはいかず 渋々それを彼の部屋まで届けに行こうと扉に向かう。


「・・・・」


ゆっくり、ゆっくりと廊下へと出てヨロヨロと歩き出すが それでも上手く歩けず壁に手を付きながらランスは彼の部屋へと行く。
途中、窓を見つけ空を見てみれば もう夕日が沈みかけている時間になっている事に気づいた。
丁度この本部に居る皆は今頃夕食の時間だろうか。どうりで先程からあまり人とすれ違わないと思ったが、成る程。
ならばそれはそれで好都合だった。今のこの情けない状態を他人に見られては幹部の名が廃ると言う物だ。

ゆっくりながらもランスは一歩一歩と、着々と彼の部屋の近くまでやってくる。
そして視界がボヤケながらも、目の前のドアを見上げれば それは目指していた彼の部屋が瞳に映り込んだ。



「やっと・・・・」



着いた。
消え入りそうな声でそう言えば、手をドアノブに添え カチャリと音をたてて中に入る。
さっさと書類を置いて帰ろうとランスは部屋の中へと足を踏み入れるが、その時何故か 驚いた様な顔をした人物と目が合い 思わず眉を寄せてしまった。



「なっ・・!なんでランス様が此処に・・・・」



「げっ」とその言葉が前に付いていたのをランスは聞き逃す事無く聞き取ったが、残念な事に今は何も言い返す気力が無く ただ黙っているだけだった。

そう言えば彼女がまだ彼と一緒の相部屋だと言う事に今気づき、嫌な所を見られたと少し後悔はしたものの
ランスは一歩一歩と名前に近づいていき、持っていた書類を震える手で彼女になんとか渡す。



「これを・・・彼が戻ってきたら渡して下さい」

「せ・・・先輩に・・・?」

「あと・・・・」

「ま、まだ何か・・・」





軽く警戒態勢で構えてくる名前に、ランスは気にする事なくその肩にもたれ掛かった。
そしてビクリッと彼女の身体は微かに震え、ランスは僅かに動く口で彼女の耳元に小さく囁く。









「朝になったら・・・・起こしてください」









目を丸くして、一体今何が起きているのかがまるで分かっていない様な表情をした彼女を最後に 重たい瞼を閉じて、ランスの視界は真っ暗になる。

そして彼の意識がそこで飛び、全体重を彼女にかけたためか 床に崩れ落ちる音が部屋中に響き渡った。

























朝になれば




















これは一体どう言う事だろうか。
確か私は一人で部屋の内装をしていて・・・・そうだ、ピンクのカーテンを全部白のカーテンに変えて、ベッドのシーツも赤から黒にして。
あのふざけたカラーの部屋をまともにし終わったと思ったら、いきなりランス様が現れて・・・それで――――






「朝になったら起こしてください」






ふざけんな。自分で起きろ。

とでも言って彼を今すぐ放り投げたかったが、流石に先程の様子を見た後じゃそれも出来ない。
あんなに倒れる寸前まで仕事を頑張る理由が分からなくもないが、けど流石にアレは無いだろうと名前は思った。いや、実際ランス様なら毎日の事だろうけど
私なら絶対何が何でも彼を寝かしてやる。まぁムカつく人だけど一様人間の常識として、それぐらいはしてやるつもりだ。









だからランス様に押し潰されて苦しくても、耳元で彼の寝息を聞きながらそのままそっとしておいてやった。






















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仕事に入る前にちょっと小話的な(←
暫くランス様の出番がお休みになりそうな気がしたので此処で出せるだけ出しときます^p^(貴様

次回もセクハランスの登場ですね、分かりまs(ry



10/02/7


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