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(つ・・・・疲れた〜・・・!)
「なんなんだ一体この荷物の量は」と思わず愚痴を言いたくなる程運んだ名前は
運び終わった仕事の開放感からか、どっと押し寄せた疲れに大きなため息を吐いてその場に座り込む。
意外と男のフリをするのって、大変なのね
ヤドンとしたっぱ先輩
(いったいこの荷物の中には何が入ってんのよ・・)
名前が「はぁ」と再びため息を漏らし、その荷物をじっと睨む。
その時、廊下の向こうから歩いてくる人影があった。
ってかさっき合ったばかりの・・・したっぱの彼じゃん。
何やら顔を歪ませて「最悪だぜ・・・」とか「う〜ん・・・」とか色々唸ってるけど大丈夫なのかな。
すると私の視線に気付いたのか、彼は目を合わせるとすぐさま駆け寄ってきた。
「おっ!お前丁度言い所であったな」
「何かまだやることでも?」
「いやいや、もう仕事はねぇよ。・・・・・お前はな」
言い終わった彼はまた顔を沈ませ、深く息を吐いた。
ん、どうしたんだろう?彼にしては珍しくテンションが低いような気がするんだけど。
何か悪いものでも食べたのか。
それを不思議そうに見てた私に気付いたのか、彼は「すまねぇ」と無理やり笑顔を作って
私の方へとふり返って話を進める。
「今日からお前の指導係になったから、宜しくな」
「はぁ・・・・・・ってえええーー。」
「なんだその嫌そうな顔は!・・俺様じゃ不満だってーのかよ」
「いや不満なんてめっそうな!・・・ただ指導係が付くとか面倒く・・・」
「ああ”?」
「いや、何でも無いです」
あきらかに不満を漏らした私に対して、彼はドスの効いた低い声で上から鋭く睨んでくる。
私は耐え切れず、すぐさま即答で返事をして姿勢を正した。
それに気分を良くしたのか、したっぱである彼は偉そうに「分かれば良いんだよ分かれば」等と言いたい放題言っている。
くそう、したっぱの癖に・・・これだからロケット団は困る。
「で、お前の部屋は俺様と相部屋だからな!有り難く思え」
「は・・・?あ・・・相部屋?」
そんな事したらもう初日でバレんだろ!っとか心でつっこみを入れながらも
いやロケット団だし、そんなしたっぱ一人一人に部屋があってもおかしな話か
と、思ってしまう自分がいて少しだけ納得してしまう。
だけどそれは着替えとかお風呂とか、ほぼ私生活をこの男と過ごすことになるわけでいくら私でもそれは・・・
そんな思いを込めて少し嫌そうな視線を送ってはみるが、
彼がまた顔を顰めるので希望も虚しく、小さい声で「分かりました・・」と、一様返事をしといた。
(ど・・・どうしよう・・・・なるべく服は薄いのは着ないでおこうかな・・・)
そんな事を色々考えている私も気にも留めず、彼は「あ、そうだ」と、何か思い出したかの
ような仕草をし、そのまま徐にポケットに手を突っ込むと部屋の鍵を差し出してきた。
きっと自室の鍵であろうそれを、私にひょいっと投げつけてくる。
鍵投げるとかお兄さんちょっと危ないよ。
「ほらよっ、コレ部屋の鍵だから。先に開けてとっとと自分の荷物をはこんどけ」
「あ、有難うございます・・・・・って、あなたは・・?」
何故自分だけ?と疑問に思ったことを彼に問いかけてみると、彼は小さな声で
「俺様はまだ仕事が残ってるからな・・・」と何処か切なげな顔をしながらそう呟いた。
さっきから気になるのだが、彼のあまり仕事が乗り気ではないこの様子はいったい何なんだろう。
そこで名前は彼が握っている数枚の紙に気付いた。
もしかして仕事ってこの資料の・・・?
気になり、少し彼に近づいてその内容を見てみると、意外な名前が目に飛び込んできて私は目を見開く。
そこにはあるポケモンの事が詳しく書いてあり、正直我目を疑った。
や・・・・・
「ヤドン・・・・?」
「・・・?!あっ・・テメェ何勝手に見て・・!!」
「ちょっとヤドンて・・・しかももの凄く詳しい資料をそんなに・・・・?」
「わ・・・わりぃかよ・・・!」
そっけない態度をとりつつ、私の視線から資料を隠すように紙を後ろに回す。
あー・・成る程成る程そういう事ですか、はいはい。
私がじっと哀れむような視線を送っているのに気付いたのか、したっぱの彼は「何だよ・・・」と不機嫌そうに答えた。
「いや、貴方がそんなにヤドンを愛おしいんでるなんて想像もつかなかったので・・・意外です」
「ば・・・!違ぇ!!俺はなぁ、仕事で調べてんだよ!誰がこんなポケモンの事好き好んで・・・」
「あーはいはい。照れ隠しですね、分かります。」
「お前ぶん殴るぞ!!」
顔を真っ赤かにして怒鳴る彼を見て、私は少し「可愛い」と思ってしまった。
しかも俺様な性格にあの顔で『ヤドン』て。ぶふっ・・ヤバイ吹くわコレ。
(あれか、ゆわゆるツンデレか。)
しかもヤドン好きな先輩とか、なんとも良いキャラしてるじゃないですか!
「今日から貴方はヤド先輩で決定ですね」
「明らかにお前俺様の事馬鹿にしてんだろおい」
「どうせ部屋に戻ったら「ヤドン萌えー」とか写真見ながら言ってるんですよね。大丈夫です、私耳塞いでますから」
「しばくぞ」
どんどん声が低くなってくヤド先輩(もういいやこれで)を私は気にせずに話しを続ける。
「何処が好きなんですか?」「いつから?」「てかその資料はやっぱり仕事と偽り私用で枕とかに入れて寝る用ですよね?」
等と、お構いなしで質問をぶつけた。
勿論、言わずと当然本人の不機嫌度はMAXだけど
「まぁヤド先輩がヤドン大好きなのは黙っときますんで安心して下さいな」
「・・・・もうどうでもいい」
そう言うと先輩はヤドンの資料を ぐしゃっ と握り締め、何処かへ歩いていってしまった。
その顔にはもはや元気もなく、ただ疲れが滲み出ているばかりだった。
「ヤド先輩って意外と面白いなー」
これなら少しロケット団でも楽しく過ごしていけるかも。
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したっぱ君に勝手に名前つけちゃいました。←
彼は何だかんだで出番が増える筈ですので、はい。
でも流石にヤド先輩はネームセンスに欠けてる・・・・orz(笑
09/11/2
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