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緊急新年会









「あけましておめでとうございます」






げっそりと言った彼等に、ランスは眉を寄せた。
いったい自分の部下達に何がおきたのか、そしてその脱力感は何だ。

そんなしたっぱ達をランスは心配する様子もなく、椅子に座り頬杖をつきながら彼等を眺める。
手に取ったマグカップに口を付け、まだ暖かいコーヒーを少し喉に通した。




「何でそんなに疲れてるんですか、貴方達は」


「「「・・・!!」」」




ピシャリと一瞬にしてその場に電撃が走った。

皆、口々に「信じられない・・・」とボソボソ呟き始め、ついにはフラフラと倒れだす者も出れば
つかつかとランスのもとまで歩きよって、その肩を揺らす者までいた。





「あなたは・・・!!私達に仕事を押し付けておいてそれを言いますか・・!!」

「何を勘違いしてるのか分かりませんが、私は貴方達が溜めに溜めた仕事を『今年中に終わらせろ』と言っただけです。溜める自分が悪いのでは」

「でもあの量は普通じゃ有りません・・・!!!」

「私はその普通じゃない量の更に倍はやっているのですがね」





サラッと言ってのけた我が上司に、したっぱはぐっと口を詰まらせた。
そしてランスは彼等に手を伸ばし 早速「で」と話を切り替える。




「勿論、出来ているんでしょう?」

「・・・・・・ええ、出来てますよ」




泣きながらせっせと無事終わらせた書類をランスに提出すれば、彼はそれをピラピラと一枚一枚確認していった。
大まかにソレを確認し終えると、満足そうな顔をしたランスがそこにいて 足を組み替えながら息をつく。







「流石、私の部下達ですね」







微笑んだ彼に、女子からの黄色い声援が部屋中を飛び交った。
「今年も素敵だわ!!」とか色々きゃーきゃー叫んで机をバシバシ叩いているその姿は何とも言えなかった。いや言ったら後が恐い。
だがそんな彼女らを特に気にする事はなく、ランスは残りのコーヒーを全て一気に飲み終えるとその書類を手に持つなり立ち上がり、そのまま部屋のドアへと手を掛けた。





「どうぞ、後はご自由に。良いお年を」





パタンと閉ざされたドアを合図に、彼等のテンションは急上昇していたのは言うまでも無かった。
色々なところから雄叫びが聞こえ、上司が部屋からいなくなった開放感からか。彼等は涙を流しながら次々とその場に倒れこむ。





「皆のものぉお!今夜は酒じゃぁあああ!」

「おい、なんかここに長老いんぞ」

「気にすんなっ。今宵は無礼講だ!よしっ、緊急新年会やんぞ・・・!!」

「おお良いなそれ!!」

「皆で朝まで飲もうぜ」

「俺も賛成ー」





わらわらと集まってきた彼等に、「じゃぁ私達も参加するわ」と女子も数名参加してきた。
結局この流れはランス様の部下全員参加じゃないかと思ったが まぁそれも良いか。

多少大人数だが彼等は広い空き部屋を集合場所にして 一先ずその場から次々と消えていった。



















それはまだ、名前が入るずっと前の 彼等の話。






















緊急新年会





















「俺様もかよ」

「良いだろ?お前もランス様の部下なら参加しろ!」

「いや、その理由訳わかんねーし」

「あのなぁ、良いか?今回は女も参加するんだぜ。男だけのむさ苦しい酒飲みじゃねーんだぞ」

「期待するだけ無駄だろ。あいつ等ランス様しか見えてねーし」

「それを言うなそれを」




やれやれと溜息を吐いた同僚に、俺は思わず眉を寄せた。
なんてったって新年早々、飲み会なんて参加しなくてはならないのか。折角仕事が終わって部屋で寝れると思ったのに これは無いだろう。

すると何故か、ここ最近続いた徹夜で溜まった疲労がいきなり込み上げてきて 俺は我慢できずにあくびをしてしまった。




「どうした・・?お前があくびするなんて珍しいな」

「・・・・俺はお前の中でどんなキャラなんだよ」

「まぁ、強いて言えば元祖俺様って感じだな。仕事と寝るのが優先で、酒の付き合いとノリの悪い」

「最低だなソレ」

「言っておくがソレがお前なんだぞ」

「へー、成る程」




どうでも良いかの様に適当に返事を返してやれば、同僚の彼は少しムッとした表情でこちらを睨んできた。
だがまたしても込み上げてくる眠気に勝てず、必死にあくびを噛み殺すと 流石に見かねたのか。彼は少し心配そうに俺の方に手を置いてくる。




「おいおい、お前大丈夫か・・・・?そんなに仕事やったのかよ」

「ああ、ずっげぇ眠いが・・・今日中に終わらせないと駄目だって言われたからよ」

「あー。そういえばお前最近したっぱのしたっぱから少し昇格したもんな」

「まぁな」

「今はただのしたっぱだもんな。 良いな後輩が出来てよぉ」




彼はしたっぱのしたっぱだからか、先に昇格した俺を羨むかのような目で見てくる。

だが実際昇格したって良い事は何も無いのだ。仕事は増えるわ 後輩の面倒と責任負わされるわ 面倒くさいわでそりゃもう大変な事この上ない。
まぁメリットと言えば給料が増えるのと、後輩を少しパシリにできるぐらいだから プラマイ0と言ったところか。


でもそれは彼等もいづれは通る道であり、それはもうほぼ確定状態だった。
あと数日もすれば新入団員が沢山入ってくるから、必然的に3年前からずっと居た彼等が昇格するのは極当たり前の事。
それが今回、俺が一足先になっただけ。 ただそれだけの事だ。別に優秀だからとかそんな問題ではない。

ランスさまの気まぐれ とでも言っておくか。






「くそ、今年は新入りの監督係りだし。本当に面倒くせーよ・・」

「そうなのか?」

「おー。しかもその内の一人と相部屋」

「うげー。・・・・入ってきた奴と早々相部屋で過ごすのは無理だわ」

「だろ」

「それだったら俺んところの4人部屋の方が同僚同士でまだ楽しいぜ。お前折角一人部屋だったのにな、ドンマイ」






トンと肩と叩いてくる彼に、俺は溜息を吐く事しか出来なかった。
本当に、新年早々とんでもない貧乏くじを引き当ててしまったものだ。新入りの面倒なんて、こっちから願い下げだ。

だがそう思っていたら、いきなり前に居た同僚が顎に手を添え、うーん と唸りだし 俺の顔をじっと見てきた。
そしてそのまま何を思ったのか、彼はしみじみと言った様子で口を開く。





「でも、お前が抜擢された理由なんとなく分かるかもな」

「・・・なんで?」

「だってお前面倒見良いじゃねーか」

「・・・・そうか?」

「まぁキレたら恐いけどよ、お前気付かない所で無意識に色々やってくれてんぞ」

「なんだそれ」

「ま、ようは新入りの面倒見れんのはランス様の所じゃお前ぐらいって事だろ」




俺だったら面倒見切れねえもん と笑顔でそう言い切った同僚に、俺は顔を顰めることしかできなかった。

そして暫く黙っていると、彼は俺に「それじゃぁ」と言って背を向ける。








「飲み会、参加しろよ!愚痴聞いてやっから!!」








結局強制参加か とツッコんだが、その声も虚しく廊下に消え去っていってしまう。




(眠いが・・・まぁ明日は休みだし。仕方がねーか・・・・)




彼の背中を見送りながら、俺は本日3度目のあくびをした。
























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遅くなりましたが、皆様あけましておめでとうございます^^*(遅
このサイトも無事新年を迎える事が出来ました・・・!
これも一重に皆様のおかげでございますっ。

そこで新年記念として、リクエストでも多かった先輩の話を連載の番外編として3話書かせていただこうかと思い、今回書きました^^
主人公が入るちょっと前の話で先輩視点です。
見苦しいかもしれませんが、三話完結まで宜しければお付き合いくださいませ。


09/12/04


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