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「おまえら、そんなところで何をしている?」




アポロに頼まれていた資料を持ってきたラムダは、アポロの部屋の前に人だかりが出来ているのを見て怪訝そうに眉を寄せた。
やけに騒がしいと思ったら、その殆どがランス部下やアテナの部下であるのに気づく。




「らっ、ラムダ様!・・・すみません、ちょっと静かにしてもらえませんか」

「いや、静かにしろっつわれても・・・・俺アポロにコレ渡さなきゃなんねーしよ」



そう言って彼はピラリと一枚の紙を部下に見せ、溜息を一つ吐いた。
だがそれでもドアの前から耳を傾けたまま退かないでいるしたっぱ共に嫌気がさしたのか、ラムダの表情は曇る一方だ。

すると廊下の向こう側からカツカツッとヒールの音が聞こえ、それは彼等のすぐ後ろで止まるなり凛とした声が響き渡る。




「ちょっと退いてもらえるかしら」

「あ・・・アテナ様!!」

「ど・・、どうぞどうぞっ・・!」




行き成り登場した女幹部のアテナを見たしたっぱ達が、一斉に勢い良く左右へと体を退けた。
ラムダは不機嫌そうに「なんか俺の時とえらい違いだな」と、ボソリと呟いていたが、当のアテナは別に気にする事なく足を進める。

(なんつーか、顔赤くして本当に単純だよなー、アテナんとこの部下。)


そう思っていると、アテナはアポロの部屋のドアに手をかけ 普通に中へ入っていこうとするからラムダもそれに続き彼女の後へと着いて行く。
だが行き成り彼女は振り返るなり、ラムダの手から資料をピッと素早く取り上げ微笑んだ。



「これは私からアポロに渡しておくわ。だからあんたは外で待ってなさい」



バタン・・、と虚しく閉ざされたドアをラムダはただ呆然と眺めていることしか出来ず 気付いた頃にはカチャリと言う音が聞こえた。
鍵をかける程聞かれたくない話でもあんのか と、彼は苛立ち気に舌打ちをするが、後ろに居るしたっぱ共の声で更にそれは苛立ちを増した。




「アテナ様って本当に綺麗だよなー」

「だなー。俺もランス様よりアテナ様の所属につきたかったぜ」

「畜生、なんで俺んところの女は皆ランス様信者なんだよ」




ガヤガヤと好き勝手話始めた部下共を黙って見ていると、ラムダはふとドアの隅で座り込んでいるしたっぱに目をとめた。
ドアに手をつき、一人でブツブツ言っている彼の肩に「おい」と手を添えると その体はビクリッと震えあがる。

確かコイツは・・・・




「お前、ランスのところの部下だろ。何そんなに心配してるんだ?」

「べっ・・!べべ別に俺は何も・・!」

「ほー、俺様に嘘つこうってか? 確かお前、爺さんに怒鳴られてヤドンの井戸の中に餓鬼を入れちまったそうじゃねーか」

「な・・!なんで、それを・・?!」

「しかもそのせいでヤドンのシッポを最後まで切りきれなかったみてーだし、おかげでこっちは金の収入が減っちまったんだぜ?」




にじり寄るラムダに、したっぱの彼は額に汗を流しながら口を閉ざすが、ラムダだけではなく周りに居たアテナの部下達が
彼とランスの部下達をいっせいに視線を向けた。

絶体絶命、彼らにとってはまさにソレだった。




『事が済むまで、決して他人に漏らさぬように。特にラムダには言ったら許しませんよ』




今、この扉の向こう側に居るであろう先程のランスの台詞が、彼等の口を硬く閉ざしていたのだ。








































外が何やら騒がしいと思ったら 一つの紙を手に持って室内に入ってきたアテナを、アポロは表情を変えることなく出迎えた。





「これ、ラムダが貴方に渡したがってたみたいだから ついでに持ってきたわ」

「そうですか、ご苦労様です。」

「で、」




アテナはチラリと視線を目の前にいる人物に目をとめ、綺麗に微笑みながら唇を吊り上げた。




「貴方が名前?」

「ええ、そこの馬鹿がそうですよ」

「ランス、アンタには言ってないわ」




ピシャリとアテナに言葉を叩かれ、ランスは額に青筋を浮かばせながら顔をひきつかせる。
だがそれすらも気にせずアテナは名前に近づくなり その顔を楽しそうに覗き込んだ。




「成る程、良いわ貴方。私好みの顔をしてる」

「いや、あの・・・」




頬に手を添え、うっとりと顔を覗き込んでくるアテナに 名前は固まってしまった。
今、彼女の格好は先程とは違い したっぱの男の服を着ているため、きっと男と勘違いしてるのであろう。


(どうしよう・・・・)


もしあんな格好のまま本部を歩こうものなら 誰だって不思議がって仕事所ではなくなる。
一様買い物に行く時に、鞄の中に忍ばせておいた自分の団服を着てこいと ランスに指摘され着替えたのだが、今この状態は何だ。




「アテナ」




椅子に座り、足を組み直しながらそう呟いたアポロの言葉にアテナは振り返った。
何だ とでも言いたげな顔をしている彼女に向かい、アポロは表情を変えずにサラリと言った。




「そいつは女ですよ」

「・・・・は」



彼女は目をぱちくりさせ、小さく声を漏らしてしまう。
だが次の瞬間、彼女は名前に向き直るなり その手を胸へと押し当てた。




「う・・・嘘でしょ・・・、この年でここまで小さい胸が存在するだなんて・・・」

「すみません、胸小さくて」

「でも確かにあるにわあるのね・・・・・」

「あの、若干揉むの辞めてもらえますか」





さわさわと体を触って確認してくるアテナに、私は一体何なんだと密かに心の中で呟く。

が、その手が下の方へと伸びてきた時は流石の私も思考停止してしまった。




「な・・・無いわ。本当に女なのね」




真剣に呟いたアテナに対し、流石のアポロとランスもギョッと目を見開き驚いた。
どこまでもヒートアップしていく彼女の行動に、アポロは表情をすぐさま戻してそれを阻止する。




「少しやりすぎですよ」

「あら、ゴメンなさい」




未だに驚いた表情を隠せないでいるアテナに、アポロは少し溜息を吐きながら額に手を添えた。
すると後ろでその様子を見ていたランスは腕を組み直し、壁にもたれ掛かりながらボソリと呟く。




「そんな上も下も無いのを触っても意味なんかありませんよ」




彼の爆弾発言に、私はキッとランスを睨むが 返ってくるのは見下ろしてくるムカつく笑顔だけだ。
拳を握り締め、ふつふつと煮えくり返る程の怒りがこみ上げてくる感覚に 私は唇を噛み締める。


(テメーよくも言ってくれたなこのタンス野郎めっ・・!)


だがランスと名前の間に火花が散っているのを気にもせず、アテナは「そういえば」と何かを思い出したかのように口を開いた。




「アンタ達はいつから知っていたの?」

「・・・私はつい先程ですよ、ヤドンの井戸を出たらこの馬鹿が女の格好をして現れたものですから」




名前から目を逸らさず、未だににらみ合いながらそう応えたランスにアテナは「ふーん」と頷くなり
アポロに体を向け、「貴方は?」と聞き返した。

するとアポロは顎に手を添え、平然とした顔でサラリと言った。






「最初から気付いていましたよ」






その場に居た全員がピタリと停止し、一斉に彼の方へと顔を向けた。
ランスとアテナもそうだが、何より一番驚いているのは名前本人だろう。
驚きのあまり、喋れないでいる名前に変わって ランスは口を開くなりアポロに近づいた。



「アポロ、まさか貴方あの時から知っていたというのですか」



あの時と言うのは、一番最初に名前とアポロが遅れてこの部屋に入ってきた日の事だろう。

驚愕の眼差しで見つめられたアポロは、何を今更と言う顔をして答えた。




「はい」




たった一言、そう答えたアポロに対し3人は信じられないとでも言った様な表情でその場に固まってしまった。


だがアポロはそんなのも気にせず、私に視線を向けるなり 口角を微かに吊り上げた。





「明らかに女なのに 男の団服を着ていたのを見て、怪しいと思っていましたが・・・」





これは最初からあの場で『女』と言っておいた方が良かったでしょうか? と喉で笑った彼を見て、私はおもわず撃沈してしまった。


(う、嘘でしょ)


だがそんな私達を無視し、机の上にある紙と服を一緒に掴むなり彼はそれを私に差し出してきながら視線を向けた。







「明日から貴方はアテナのところで働いてもらいます、勿論この服を着て ですがね」







上は前と変わらず長袖の「R」の文字に、下はミニスカートと言うどう見ても女性用の団服に 私は一瞬何を言われたのかが分からなくなってしまった。
そんな私を見るなり、彼は視線を向け「安心しなさい」と呟く。









「男と偽っていた理由は問いません、ですのでこの紙に書かれた仕事をやれば 貴方をこの場に置いてやります」









どうします? と足を組み直しながら微笑んだ彼に、私は手汗で滲んだ拳を強く握り締めた。
勿論、バレずにまだ此処に置いてもらえるなら 私はこの話を逃すわけにはいかなかった。










「やらせて下さい」





頷いた私を見て、彼は一層楽しそうに目を細めながら 見つめてきた。
















新しい挑戦

















その後すぐ、別室で着替えた名前とアテナがアポロの部屋を出て行ったのを 他の部下達は驚いた表情で見つめていた。

ラムダに追い詰められていたしたっぱの彼は名前の後ろ姿を確認するなり、「あ」とおもわず声を漏らしてしまう。
それに気付いたラムダも、アテナの隣で歩いている彼女に視線を向け 暫くその後姿をじっと見つめていた。




「なんだ、アイツが何かあったのか?」




何か少し感づいたかの様な表情をしたラムダに、彼は しまった と、口元を手で押さえたが もう遅かった。


すると突然再び扉が開き、中から出て来たランスは廊下に出るなり、見知った部下達とラムダの姿に眉を寄せた。
彼等の様子を見るところ、盗み聞きしようとしていたのが一目同然だ。



「何してるんです」



ランスの冷酷と恐れられた冷たい表情に、見下ろされたしたっぱ達はただ肩を震わせて雷が落ちるのを待っていた。



















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新章的な物に突入致しました(笑 ←
これで恋愛要素が増えてくr(ry

今までランス様が活躍してましたが、アポロ様のターンがやってまいりました^p^(何
ラムダ様とアテナ様の登場に、今回は幹部陣が勢ぞろいです・・!やったね!←←

これからもこんな連載ですが、温かい目で見守っててやって下さい^^*
それでは!

09/12/22


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