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あんたがアホだ











あれから私はランス様の部下を辞めてからと言うものの もう彼の所属ではなくなったと言う開放感からか、結構好き勝手にできていた。


もし部下だったら、仕事が出来ないと言う理由でその監督官でもある上司のランス様にいつクビにされてもおかしくない状態なのは当然。
だが今は少しの間だけとはいえ、まだ次につく幹部が決まっていないフリーしたっぱな私は最高幹部であるアポロ様にさえ
怒られなければ、よっぽどクビになる事は無いだろう。


だから、それを良い事に私は結構色々と自分なりに今のこの環境を楽しんでいた。
その証拠に、私は今 廊下の隅に寄っている二人の姿を面白いとでもいうぐらいにガン見している。いや、正式に言えば1人の幹部を だが。
おそらく部下である女性に、その上司であるランスが何かの資料を渡し 仕事を任せているようだ。


女性はよっぽど嬉しいのか、ランス様の顔を見ては顔を赤め こちらの様子などまったく気付いてはいなかった。
だが彼はどうやら私の視線に気付いたらしく、ピクリッと眉を吊り上げるなり彼女から視線を外しまっすぐ顔を上げた。



するとバチリとお互いの視線がぶつかり合い、その不機嫌そうな顔と私の笑顔との間で火花が散った様に見える。

私はこのチャンスを逃すまいと、頭の中がランス様でいっぱいな彼女には聞こえない程度の声で呟く。




「腹黒、人でなし、ろくでなし、ナルシー野郎、嫌味しか言え無いとか 素敵な才能を5つもお持ちで羨ましい限りです」




馬鹿にするかのように、プップーとでも笑ってやれば彼は意外にも表情はそのままで何も言い返しては来なかった。
そう、彼はもう自分の部下では無くなった名前を捕まえては怒鳴ることもせず
寧ろ相手をしてられるか と言う態度を最近ずっととっていた。


(まぁ、そのおかげで私は今 こうして言いたい放題言えるんだけどね。)


別に私は相手が怒ってこないとつまらないと言う感情は生まれなかった。
だってこうやって聞こえる声で言えば必ず相手の耳には届いているのだ。嫌でも心の隅に屈辱的な思いはメラメラと燃え上がっている筈。



そう思ったら納得したのか、または気が治まったのか。
名前はそのまま満足そうに軽い足取りで廊下を歩き、その姿は彼等から段々遠ざかっていった。


何も言わずにただじっと、廊下の先を見つめるランスにやっと気が付いたしたっぱの彼女は不思議そうにその姿を眺めた。
首を傾げて、じっと見つめていると ランスはいきなり持っていた資料全てを彼女に託し、そのまま歩き出してしまった。



「すみません、そろそろ時間が無いので私は仕事に戻ります」

「・・・・っあ、はい!ランス様」

「では、それを頼みましたよ」

「お任せ下さい!」




弾かれたように返事をした彼女に、ランスは綺麗に微笑むなりそのままスタスタと優雅な足取りでそこを去っていく。
その笑顔にやられた彼女は顔をボッと火のように赤し、そのまま手を自分の頬にそっと添えた。



「流石ランス様・・・歩く後姿も絵になるわ」



うっとりした顔で ほぅ と、溜息を吐いた彼女はそこでふと ランスから渡された資料に目を留めた。
今回の仕事内容が書かれたそれはヤドンのシッポとまではいかないが、なかなか重大な仕事だ。

それを何事も無く仕舞おうとしたが、おかしな『何か』を見つけた彼女は目を瞬いてもう一度その紙を見つめる。




「穴?」




そこには紙の隅側に親指程の穴が開いており、よく見れば紙が全体的にシワシワな事に気づく。
だが、彼女は特に気にする様子もなく それをポケットに仕舞うなり、鼻歌交じりで廊下を軽く走った。





(あいつらにランス様と至近距離で話せたこと、自慢してやろうかしらっ)





ルンルンな彼女は、その穴が彼の怒りが堪えきれず無意識的に開いてしまった物だと気付くことはなかった。

そして丁度ランスが廊下の角を曲がり姿が見えなくなった直後、その方向から派手な音が聞こえ壁が微かに揺れた。











































「何これ」


書類倉庫に入るなり、私はあまりの汚さに驚愕してしまった。
私の先輩でもある同室の彼に、大切な書類がこの保管庫にあるかもしれないから見てきてくれ
と言われたので来たは良いが、これはないだろう。

溜息を吐きながら私はしゃがみ込むと、その場に散らばっている紙の数々を広い集めた。



「いくら暇だからって、これはちょっと失敗したかも」


彼はランスの部下でもあり、私以外の新人の面倒まで見ているため 結構他のしたっぱに比べて少しばかり忙しいらしい。
日頃頑張っている先輩のため、快く引き受けたは良いが あまり気が乗らないでいた私は ぼーっとそこの辺にあった資料を拾い上げた。



「・・・・これは」



『サカキ様万歳』と書かれたそのポスターには、見慣れた顔が笑顔でポーズを決めていた。
ロケット団のボスでもあろう彼が、こんな間抜けな事をしていて良いのであろうか。見ているだけで痛い、痛すぎる。
完璧合成であろうそのポスターを棚の奥に仕舞い、私は何も見なかった事にした。


(よし、作業に戻ろうか。)


とりあえず下に散らばっている紙の山を整理するところから始めようと思った私は、再びしゃがみ込み服の裾を捲くった。

すると後ろから突然、カチャリとドアが開く音が聞こえ 少し遅れて廊下の風が室内に入り込む。
バサッと舞う紙を手で掴みながら、それでも長くなりそうなこの作業を中断するわけにはいかず 私はそのまま真剣に資料の内容を読み漁る。

私の後ろに居るであろう人物は、きっと自分と同じで何か無くした資料を探しにきたのだろう。
お互い大変だな と心の中で呟き、そのまま次の紙に目を通そうとした時 微かに見えたその内容に私は目を輝かせた。




「あ・・・コレだ・・!」




ポケモンを進化させる道具の一つである石について書かれたその資料は、間違いなく先輩に頼まれていたそのものだ。
やっとこの汚い部屋からおさらば出来る嬉しさからか、ほっと溜息を吐いてそれを手にとる。

だがそれはヒョイッと上から伸びてきた手に奪われ、私の手はスカッと空を切った。
え・・・。何で・・・

何事かと思い 上を見上げれば、そこには資料を手にしてこちらを見下ろしてくる憎き上司が立っており、おもわず私は顔を顰める。

あー・・・、本当に最悪。






「・・・・ランス様」

「おや、貴方でしたか。こんな汚い部屋の地面に這い蹲っているとは、とんだ虫が居たものですね」

「なんですか、今日は偉くベラッベラ喋るじゃありませんか」

「ええ、折角誰も居ないので。良い機会かと思いましてね」




唇を吊り上げて笑った彼を見た私は、一瞬背筋が凍りついた。

まさか今まで何も言い返してこなかったのは他の人に見られないようにだったのか。
そりゃあ一々、幹部である彼がしたっぱ一人に対して常日頃怒りを露にしていたら それは確かに示しがつかない。


嫌そうな顔をした私を見た彼は、その間逆でとても楽しそうな顔をして微笑んだ。



「最近、私に向かって何やらゴチャゴチャと言ってますが どうぞ今此処で好きなだけ言いなさい、さぁ」

「いえ、特に貴方に関する感想はございませんので」

「嘘をおっしゃい、ほら 口元が言いたそうに動いてますよ」



言いたいんじゃない、これは引きつってるんだよ。
とか言えたらどれだけ楽だろうか、私は何も言えないまま 黙って彼を見つめた。

すると彼は、何も言えないでいる私を見て満足しているのか
私から視線を外し、手元にある資料に目を移して口を開く。





「これは確か・・・。私が頼んだ仕事内容では」

「そうなんですか。何でもいいからさっさと返してください」

「口の利き方がなっていませんね。この床に散らばってる紙をその口に突っ込みますよ」

「嫌です」




即答すれば彼は喉でクツクツと楽しそうに笑った。
私はその姿にイラッときたが、我慢して何も言わずに彼を睨み上げる。

すると彼は「あぁ、そうだ」と何か思い出したかの様な顔をするなり、そのまま手に持っていた資料を両手で掴んだ。

ビリビリッと音がし、そのまま無残に引き裂かれた紙くずが私の頭上から降ってくるのを確認した頃は 何が起こったかわからずに固まってしまった。
私は何故 とでも言いたげな顔で彼を見れば、そのまま頭を強く掴まれ 彼は私と視線が同じになるようにしゃがみ込んだ。





「これは私の仕事です。私から彼に直接内容は言いますので、貴方はどうぞ自分の部屋にでもお帰りなさい」

「・・・・へー、そうですか」




とんだ捻くれ者が居たものだ。
私は精一杯の笑顔で「でわ遠慮なく帰らさせてもらいます」と言って、さっさと部屋を退場してく。
ドアノブに手をかけようとした時、後ろから「それと・・・」と言う声が聞こえたので まだ何かあんのか と嫌々振り向いた。

すると足元にあった紙で靴を滑らせ、そのまま私の視界には薄暗い天井が広がる。
一瞬何が起こったか理解できないでいたが、「あ」と声を漏らした時にはもう遅かった。
背後にあったドアに近かったためか、 ゴンッ と鈍い音が頭に響き そのまま私は頭部を抱え込んで倒れた。



「・・・っつ!」



耐え切れないほどの頭痛に、私は思わず目に涙を浮かべた。
ズキズキと痛む感覚と、彼の前で綺麗にすっ転んでしまったと言う恥ずかしさに思わす『死にたい』と思ってしまう。

そして彼は私の元まで歩いてくると、そのまま目を細めて冷たく言い放つ。




「あほ」




たった一言私にそう言い残すと、そのまま私を軽く足で避けてスタスタと部屋を出て行く。

私はその背中を眺めながら、「絶対にわざとだ」と、ワナワナ震えながら彼を睨んだ






















あんたがアホだ

















ランスが一人で微かに笑いながら廊下を歩いていたものだから、
それを見たラムダが何やら 不思議な物でも見るかの様な目で唖然と立ち尽くした。



「一人で笑ってるとか頭大丈夫か」



微妙な顔をしながらそう問う彼に、ランスはすれ違い際に彼を横目で見ながら呟いた。





「ええ、大丈夫ですよ。少なくともあの馬鹿よりは」






あの馬鹿の正体を知った彼は、「成る程」と笑いながら 珍しく上機嫌なランスの背中をじっと眺めた。













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頭大丈夫ですか^p^←(お前がな
そしてアホ発言してしまいました。ランス様、気を確かに!←←
5000hit企画のリクエストで廊下でランス様に遭遇した(モノマネ後) でしたが、
浅葉様、こんなヘボでどうしようもない内容になってしまい、すみませんでした・・!orz←←

残りのリクエストも、是非書かせていただきますね^^!←(いらん
それではリクエストどうも有難うございました*


09/12/9

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あきゅろす。
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