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「あ、あの・・・」

「あっ!そう言えばまだお名前聞いてませんでしたよね」

「え、あ・・・名前って言います」

「名前さんですね、私の事はコトネって呼び捨てにしちゃって下さい」



ニッコリと微笑みながら ぎゅっ と私の手を握りしめ、彼女は嬉しそうにそう言った。
私もつられて笑うが、彼女の後ろで納得がいかない様な顔をしているロケット団のしたっぱが気になり、思わずそちらを凝視してしまう。
すると何故かほのかに頬を赤くさせ、彼はフイッと私から顔を背けてしまった。
え、何この人。超可愛いんですけど。



「で、名前さんはどうして此処に・・・?」

「えっ・・?あーそれは・・・」

「もしかして、ヤドンを助けに・・・?!」

「え・・・あっ、そうそう!それ!うんそうだよ」



「ロケット団の先輩に会いに」なんて言えず、どうしたものかと思った私は彼女の言った言葉に対して反射的にそのまま返してしまう。
するとコトネは目を輝かせるなり、「じゃぁ私達と一緒ですね!」などと嬉しそうに言ってきた。

『私達』・・・・?

他にも誰か一緒に居るのだろうか。
私が不思議そうな顔をして首を傾げると、その姿を見たコトネは「ああ」と私にその笑顔をむける。




「もう一人、男の子がいるんですけど たまたまその人とヒワダタウンで会ったから一緒に・・ってなったんですが」

「はぐれちゃったの?」

「そうなんですよっ、私がポケモンセンターに行っている間に何処かに姿を消しちゃって・・・で、後でポケギアを見たら
 『今、おじさんの家にいるから先にヤドンの井戸に行ってて』ってメッセージが残ってて」




「結局は別行動なんですけどね」と、溜息交じりに笑う彼女を見て 私はこの子も苦労するんだなと意外にも思ってしまう。
だがそんな事をのん気に思っている間にも彼女は何を思ったのか、一人で何か納得のしたような顔をするなり
井戸に向かってずかずかと勢い良く歩き出した。

まさか早速井戸の中に入ろうとでも言うのか。


私は彼女の行動に驚き付いて行く事すら出来なかったが、それ以上に 先ほどから目の前に突っ立っていた
したっぱの彼が彼女の動きに敏感に反応し、必死でそれを阻止しようとコトネの前に立ち塞がる。




「おい待てっ、こっから先は通させねえぞ!」

「何よっ、こうしている間にもこの町の大切なポケモンが切られてるのよ!そこを退いて下さい」

「駄目だ、そんな事をしたらランス様の計画がめちゃくちゃになって、俺が怒られるだろ!」

「タンス様が何よっ!どうだって良いわそんな事」





真剣な表情でそう言いきったにも関わらず、不覚にも彼女の台詞に思わず私はブッと噴出してしまった。
た、タンス様だって!ああいい気味だ。いいぞ、もっといってやれコトネちゃん。

あの憎き上司の顔を思い浮かべながらそう思った私は、ニヤつく口元を必死に手で押さえつけ二人のやり取りをじっと眺めた。
睨んでいるコトネちゃんに対し、したっぱの顔は信じられないとでも言った様な顔をしたまま動かないでいるものだから余計に面白い。


だがそう思っていたら、後ろから何やら物凄い勢いで誰かが走って来るような足音が聞こえ
それに気付いた私達3人は一斉に後ろを振り返る。
するとそこには有り得ない程 怒りに満ちたオジさんがこちらに向かって猛スピードで走ってきており
そのあまりにも凄みの有る迫力に私達はおもわず後ろへ後ずさってしまった。




「ゲッ、さっきのオッサンじゃねえか・・!!」




顔を青くさせ、嫌そうな顔でそう呟いた彼を見ると どうやらあのオジさんと一度面識があるようだ。
そして一人頭を抱え込む彼を見たコトネは今かと目を光らせるなり、名前の手を取り井戸に向かって突然走り出した。



「今のうちですっ、行きましょう名前さん!」

「えっ、ちょっ・・!ちょっと待って!」




あまりの行動の早さに私は驚いたが、そのまま成すがまま彼女の言う通りにずるずると井戸のまん前まで引っ張られた。
すると私達が井戸の梯子に手をかけた頃、後ろで彼の悲鳴が聞こえたような気がしたが
コトネちゃんは特に気にする様子も無くゆっくりと井戸の中へと降りていく。
私もその後を慌てて追いかけたが、やっぱり仮にも同じしたっぱだからか 彼の事が気になりチラリとそちらを振り向いた。

だが予想以上に 彼の胸倉を掴んでいるオジさんの顔が必死で、あまりにも恐かった私はこれ以上は見ないほうが良いと

そう思って コトネちゃんに続き素早く井戸の中へと降りていった。















































あれからどれだけ時間がたっただろうか。

彼は小さく溜息を吐くなり、前でグダグダと喋り始めた彼女を見つめながら うんざりとそう思った。




「あんたそれでもランス様の部下なの?!まともに仕事が出来ないでよくこの所属に入ったわね」

「あのなぁ・・・、さっきからお前ランス様ランス様ランス様って・・・流石にちょっとひくぞ」

「ああもう黙りなさい!部下が幹部を慕うのは当然の事でしょ!」

「お前・・・この前ランス様とラムダ様が話してたからって、ラムダ様の部屋のドアに『調子にのるな』って小さく書いてたよな」

「な・・・なんで知ってるのよ!」




片耳を指で塞ぎながら、彼は面倒くさそうに隣で喚く彼女の話を座って聞いていた。

あの後、彼女がそこの辺にいる同じしたっぱ共に「ソイツを捕まえなさい!でないとランス様に言いつけるわっ」
とか言うから、結局挟み撃ちにされ 俺はあっけなく捕まってしまったのだ。
そしてそのままその場に座らされ、『ランス様の部下』について熱く語る事約10分。
いい加減嫌気がさしてきたので、俺は兎に角彼女から離れようと立ち上がったが
ガシッと女では考えられない程の力で腕を掴まれ それを阻止された。




「待ちなさい、何処へ行くつもり」

「何処でも良いだろ別に」

「駄目よ、ちゃんと理由を話すまで 此処を通すわけにはいかないわ」

「ったく面倒な女だな・・・俺の後輩がすぐそこまで来てんだよ。だから少し話したいことがあるから行くだけだ」




苛立ち気に頭をガシガシッと掻きながら俺がそう言うと、彼女は眉間に皺をよせてこちらを見てくる。
そして何かを言おうと相手が口を開きかけたがその瞬間、井戸の出口がある方からドスンッと鈍い音が聞こえ 小さく地面が揺れた。
それに続き、何やら騒がしい声が聞こえてきて おもわず俺達は不思議そうにお互いの顔を見合わせる。


するとその声がする方向から 井戸の前で見張り番をしている筈の同僚がこちらへ走ってきている姿が見え、
それは俺達の前までやってくるなり、泣きそうな顔でいきなり怒鳴りだした。



「おいっ、なんだよあのオッサン!!」

「いや、俺らにキレられても何が何だか知らねえよ」

「てゆうか、アンタ見張り番じゃないの?」



冷たく俺等がそう言い返せば彼は若干寂しそうな顔をしたが、だがそれよりも言いたいことがあるのか
彼は苛立ち気に地面を踏みつけるなり、聞いてくれ とでも言いたげな顔で話し出した。



「それがよっ・・!!女2人が井戸に行くから通せとか言ってる間に、いきなりオッサンと変な餓鬼が走ってきて
 そのままソイツに胸倉掴まれるなり井戸に落っこちちまったんだよっ」



今にでも泣きそうな顔で彼は一気にそう言うなり、取り乱した息を少し整えながら腰をさすっていた。
きっと井戸に落ちた時にでも打ち付けたんだろうか、彼は心底痛そうに顔を顰めていたが 俺達はそれが凄く間抜けに見えて仕方が無かった。
なんて言うか馬鹿らしくて、言葉もでねえよ。



「おいおい・・・・、年寄りに負けるとかダセーなお前」

「本当。アンタなんかランス様の恥よ、恥。」

「うっ・・、うるせえええ!!!」



溜息を吐きつつ じと目で呆れたように俺らが見てやれば、そいつは顔を真っ赤にさせて更に怒鳴り始める。
よっぽど寛に障ったのか、彼はぎゃーぎゃー俺達に向かって暫く叫んでいたが それの大半を聞き流してやった。

(シッポ切れなかった俺様が言えた台詞じゃねーが、素直に見張り番を失敗したと認めないのはどうかと思うぜ。)


だが俺が呆れたように深い溜息をついたその時、奴が走ってきた方向から数人の声が聞こえ 徐に顔をそちらに向けた。
そしてそれに気付いた他の二人もピタリと会話を辞めるなり、瞬時にそちらに意識を集中させ その先を睨みつける。

シン・・・と辺りが静まる中、暫くするとその騒ぎ声はハッキリと聞こえてきた。
女だろうか、高い声がキンッ・・と井戸内の洞窟に響き渡り おもわず顔を顰めてしまう。





「ヒビキ君も来れば良かったのになあ」

「いや、彼オジさんの下敷きになってたし 暫くの間は動けないと思うけど・・・」

「だからって、か弱い女の子二人だけでロケット団に挑むのはどうかと思いません?」

「うーん、できれば私もあそこに残って居たかったなー・・・なんて」





少しずつ近づいてくる姿に、その正体はまだ若い女二人だと言う事に気が付き 俺達は少し肩の力を抜いた。
そのまま後ろに居る二人に視線を送ると、それを合図に俺達は腰に付いているモンスターボールに手をかける。

まぁシッポ切るよりは子供の相手する方が何倍もマシだしな。

すると向こうもこちらの存在に気付いたのか、あと数メートルと言うところで足を止め 奴等はこちらを見つめてきた。
だがそのうちの一人が俺を見るなり、何か「げっ」と嫌そうな声を出しながら体を素早く後ろに背向けてしまう。


・・・なんだ?俺の顔にでも何かついてんのかよ。


そう思って彼女の背中をじっと見つめていると、何故か見覚えのあるような感じがしてくるのは気のせいだろうか。




もう一人の女が何やら戦闘モード満々でボールを構えているが、俺はバトルそっちのけで あの女が気になって仕方が無かった。


あの女・・・・
























何処かで会っただろうか























(嘘嘘嘘・・!!何で先輩がいんのよ・・!シッポ切ってるんじゃなかったの・・?!)

(どうしました名前さん?)

(しっ・・!お願いだから私の名前を呼ばないで・・・!)









嫌な汗をだらだらと流しながら必死に声を凝らして喋るが、それをますます不審そうに先輩が見てくるものだから
私の心臓の音はバクバクと暫く鳴り止まなかった。




とりあえず、お願いだからあの憎き幹部様だけはなんとしても会いたくはない















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結局出会ってしまいました(笑

もうそろそろ男の子って言うのにボロが出るのではないかと・・・
そう思っているのですが、なかなか機会がなくてそのままきてしまいましたが^o^
さて、後どれぐらいなんでしょうか(笑 ←聞くな

そして今回はまさかのしたっぱ3人組話になってしまいました*爆
次回はランス様としたっぱ女の子が暴れてくれればなあ・・・と←←


次でヤドンの井戸編は終わりです^^



09/12/06

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