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カントーからジョウトへと帰ってきたのは良いものの、基地へと戻る前にこの格好をどうにかしようと思った名前はとりあえず
ひたすら歩くことにした。
いやだってまだ時間あるし、こんなにフリーに過ごせる日は今日ぐらいしかないからねっ。

そう思い ポケギアを見ながら私は道を歩いていると、何やら後ろから誰かが走って来るような音が聞こえてきた。
ザッザッ と地面を靴で蹴るその音がだんだんと自分の方へ近づいてくるのに気付いた名前は何気なく足を止め、何事かと後ろを振り向いた。




「どけっ・・!危ねぇんだよっ」

「は・・・?・・ってちょっとあぶなっ・・!」




ドンッと鈍い音がし、一瞬のうちにぶつかった二人はそのまま地面へと寝るかの様に倒れ込む。
お尻を強く打ちつけ、上からのしかかってくる重さに耐えながらも 自分の汚れた服を見て名前は顔を顰めた。

あーあ、折角の服が土まみれになっちゃったよ・・・・まあ、もう着ないから良いけど。
でもワタルさんになんだか少し悪いような事をしてしまったな。まぁ、着ないんだけどね。大事な事なんで二回言っとくよ

じんじん と痛みが後から体中に渡り、私はぶつかってきた奴に文句の一言でも言おうかと
倒れたままの状態で睨むように見上げた。

だがそこにあった顔を名前は見ると、驚愕した様な顔で唖然とその人物を見つめてしまう。
う、嘘。








忘れやしない懐かしい顔









「し・・・シルバー?」

「いって・・・・あ・・・何で名前を知って・・・・」

「嘘、アンタ本当にシルバーなの・・・?!」

「悪いかよ・・・てか誰だお前・・・・・」





同じく体を強く打ったのか、痛そうに体を動かした彼は小さく舌打ちをしながら私の上から起き上がる。

そのまま視線がバチリッと合うなり、シルバーは じっ と私の顔を凝視してきた。
そして私の事を誰か思い出したのか、その顔はしかめっ面から 目を見開き、驚きの表情へと素早く変わっていった。




「お・・・お前っ・・・!何で此処に・・!?」

「あ、あんたこそ 連絡もよこさないで今まで何処行ってたのよっ」

「それはこっちの台詞だろ 馬鹿かお前」



ギン とした目で鋭く睨まれ、名前は「ぐっ」と押し黙ってしまった。

それよりも彼は今、私に何て言った・・・?「馬鹿」だって・・・・?
いつからそんな言葉を発するようになってしまったのか・・・。昔はあんなに可愛いかったのに・・・!


だが彼は、信じられないように驚いた表情をした名前を気にする様子もなく 一人でさっきからこちらを じっ と見つめてくる。
な・・何だか少し恥ずかしい様な。



「お前、・・・なんか雰囲気変わったな」



まじまじと私の顔を見ながら言う彼の言葉に、私は肩をガクリッと落としてしまった。
いや、あのね。私より貴方の方がガラリと雰囲気変わってるんですけどね。気付いてるのかな。

拍子抜けした名前はそう思い、未だ自分の顔を見てくる彼に向かってため息を吐いた。




「その言葉そのままそっくりアンタに返すわ。いつからそんな目つき悪くなったのよ」

「うるせえ・・・・別に何も変わってねーだろ」

「いや凄く変わったよアンタ」

「変わってねぇっ」

「いーや、可愛さ半減してるもん」

「男に可愛いとか言うな胸糞悪い」




再び嫌そうな顔をして舌打ちをしながら言う彼に、私はおもわず遠い目をしてしまう。
ああ、もう完全に反抗期だねこれは。
これは私が今何言っても恐らく何も受け入れてくれないだろう。

そう思った名前は、取り合えず今は 昔の彼の姿を頭から消し去る事にした。




「それよりも、何だよその髪」

「え・・・・あ、あぁコレね・・・」

「切ったのか・・・?」

「いやいや切ってないよ、ただ編み込んであるだけ。解けばちゃんと長いから安心して」

「べ、別にっ・・、お前の髪の事なんか気にするか」



そう言いつつも、少し安心したかの様に息を吐いた彼を見て 心配してくれてんだな と私はシルバーの顔を見て少し笑った。
だがしかし彼はそんな私の顔を見るなり、照れてるのか怒ってるのか区別がつかないほど
顔を赤くさせて眉を思いっきり吊り上げた。




「おっ、俺が聞きたいのは何で髪が短ぇかって事だけだっ!」

「えっ?!・・・あー・・・いや、それは・・・まぁ、ね?」



グサッと痛い質問を衝かれ、私は答えられずに視線を彼から思いっきり逸らしてしまう。
だがそれが気に入らなかったのか、シルバーはムッと不満げな表情をして名前の腕を思いっきり掴んだ。

ああ、もうそんな顔しないでっ!こ、恐いからシルバー。




「・・・なんだよ、何か言え無い理由でもあんのかよ」

「いや・・・理由っと言うか何というか・・・」



ギリギリッと腕を掴む彼の力強さに、名前は顔を顰めながらも 話を逸らそうと懸命に辺りを見渡した。
だがその間にも彼の痛い視線は外れる事は無く、じっ とただ無言で私を睨み続けてくる。
ああ、これは正直に話すしかないのか・・・・。

もう無理かと思いため息を吐いたその時、私はふと 彼が片手で持っているモンスターボールに目が留まった。
しかも一つだけを大切そうに先程から離さないところを見ると、どうやら普通じゃないだろう。

話しが逸れる事を願い、名前は意を決してシルバーに問いかけた。




「ねぇシルバー・・・そのモンスターボールの中には何が入ってるの?」




私がボールを見ながらそう問えば、彼は肩をギクリッと震わせて黙り込んだ。
どうやら言え無いことが有るのは私だけでは無いようだね。

私はじーっと彼とボールを交互に見つめると、素早く手を伸ばしてそのボールに手をかける。
彼は驚いていて力が入らなかったせいか、案外あっさりとそのボールはシルバーの手から取り上げる事が出来た。
おお、案外チョロイもんだね。

だが一瞬で気を取り直した彼は弾かれた様にハッとするなり、私からボールを取り返そうと必死で手を伸ばしてくる。



「かっ・・・返せっ!それは俺の・・・・っ」

「へー、シルバーってポケモン持ってたんだ」

「わっ・・・悪いかよ」

「いや別に・・・ただちょーっと気になるなぁと」



彼の動きが少し止まったのを見逃さなかった私は目を光らせるなり、手にしているボールを握り直す。
そのまま彼に取られる前に素早く カチッ とボールを指で押しながら投げれば、それは宙を舞いながら少しずつ姿を現していった。


「ばっ・・!馬鹿っお前・・・!」


慌てて止めようとシルバーが動き出すが、その頃にはもうポケモンはボールから出てしまっていた。
タシッと地面にそのポケモンは着地するなり、ヨロヨロと傷だらけの体を左右に揺らしてこちらを見てくる。
水色をしたその丈夫そうな肌に、鋭い牙をしたそのポケモンは よく知っている姿であり、私は目を見開いた。




「わっ・・ワニノコ」

「チッ・・・弱ってんだから出すんじゃねぇよ・・」




私から奪うように彼はボールを取ると、素早くワニノコをボールへと戻す。
だが私は彼の言葉は頭に入らず、首を傾げながら少し信じられないような顔をして彼を見つめた。
いやだって明らかにおかしい。


「ねぇ、・・・そのワニノコいったい何処から貰ってきたの」

「・・・」



普通ワニノコなんてポケモンは野生で捕まえる事はまず難しい。
そしてそのうえ、私にはそのポケモンを持っている博士の事を知っていたから尚更不審に思ってしまった。

未だ黙っている彼に、真剣な表情で「シルバー」と少し強めで名前を呼べば、彼は参ったかのように口を開いた。



「・・・ソイツは研究所から盗んだんだよ・・・っ!」

「ぬっ・・・盗んだっ・・・・?!」

「わ・・・悪いかよっ!」

「悪いに決まってんでしょ!!」





自棄になったシルバーの発言に私は即答すると、彼はイラ立ち気に舌打ちをして 行き成り立ち上がった。
私は少し驚きながら彼の行動を見続けていたが、彼が服に付いた土誇りを叩きながら歩き出すのを見た時には私も慌てて立ち上がっていた。




「・・・・何処に行くのよ」

「何処だって良いだろ」

「ちょっ・・・!待ちなさいっ!」




急いで走り出した彼の背中を見て、私も必死になって後を追いかける。
その時、先程よりもボールを強く握っていた彼の手が気になって気になって
私はその中で休んでいるポケモンの存在が彼にとって大きな物なのかと少し思えてきた。












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ヤドンの井戸に入る前にちょっとライバル君との話しを・・!
ツンデレキャラの口調は凄く難しいです・・・orz ←←

流石サカキ様の子^o^笑
さて、そろそろまたランス様の出番がきそうです・・・!


09/11/25


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あきゅろす。
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