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上は白色のシンプルなデザインの服に、下には黒色のスカートといった格好で名前はトイレからその姿を現した。
髪型から服装まで完璧に男のつもりでいた自分が、先程彼から貰った服のせいか
今では何処から見ても女の子にしか見えなかった。

複雑な顔をして歩いていると、先程までいたベンチの所に荷物を見てくれていたワタルさんを発見する。
そして、時計を取り出して時間を確認していたワタルが、ふと名前に目を留める。



「・・・似合うな。さっきの格好より」



つぶやいた彼にじっと見つめられ、名前は気まずそうに目をそらした。

風が吹く度にヒラヒラと揺れるスカートの感覚にそわそわしながらも、
名前は慣れない格好だからだ と、両手でしっかりと布を押さえつけて気にしない事にした。
やっぱり元の格好に早く戻りたいよ。
そして隣で見上げてくる彼の方に視線をチラリと移しながら、意を決して言った。



「あの・・・・一つ良いですか・・・」

「ん、何だい」

「何で・・・その、ワタルさんはこの服をチョイスしたんですか」




バクバクと心臓が脈打つ音が私の頭の中で響き渡った。
嫌な汗が体中から出るし、視線はそわそわしてしまうし、今の私は挙動不審すぎるにも程があるだろう。

だけど今はこれを聞かなければ私の気が済まないのだ。
初めてあって間もない彼に、一発で女と見抜かれた理由が分からない限り 私は不安で今夜はあの部屋で眠れやしない。

ドキドキしながら彼を見れば、そこにはベンチに座り少し何かを考え込む姿があった。



「まあ、そうだな・・・」



言いながら、見上げてくる位置にいた彼が行き成り立ち上がり 私の目の前までやってくる。
一瞬にして見下ろされるような視線に 私は少し動揺してしまったが、そんな思いはすぐにかき消された。
手を私の頭にポンと置き、ニッコリと微笑みながら覗き込んでくる彼の顔は凄く楽しそうであった。





「ここまで まんまと騙されてくれるとは思わなかったから正直俺も驚いてるんだ」





え?

コイツ、今なんて言っただろうか。
ピタリと動きが止まった私の頭が一瞬にして凍りついた。
嘘ですよねワタルさん、だって貴方あんなに必死になって服選びに行ったじゃないですか。

ぐるぐると頭の中で謎が渦巻き、混乱状態に陥った名前を彼は何事も無かったかのような顔で笑って見ていた。
取り合えずこれ以上彼と関わってはいけないような気がした私は 逃げようと必死で体を動かそうとするが




「逃がさないよ」



ガシッ と想像以上の力で私の頭を鷲掴みしてくる彼に、私は驚きよりも恐怖心で体が凍りついてしまった。
そしてそのまま ぐぐぐっ と顔を近くまで寄せられて、彼は再びまじまじと私の顔を見た。



「へぇ、本当に女の子なんだったんだね。」



くつくつと喉で笑うワタルの姿に、名前は先程までの彼はいったい何処へ消え去ったのだろうと遠い目をした。

とりあえず、私はこの人に「騙された」らしい。
勿論、 今この格好=女  と言う真実を知るための彼の作戦と言う事だろうか
そうなると今までの行動が全て演技と言う事になるわけだから、それはそれで驚きだ。


(この人はとんでもない演技者だと言う訳だったか)


名前は泣きそうになりながらも、何事も無いような顔で彼を見上げた。
勿論、彼の手は未だに私の頭の上のままだ。




「ワタルさん、いったい貴方は何を知りたくてこんな事をしたんですか」

「え、いや俺じゃないんだけどな。まぁとある人に頼まれてね」

「とある・・・人?」

「まぁ名前までは言えないけど、取り合えず君を女か調べさせて欲しいって事だったからさ」



だからゴメンね。と謝る彼の姿にはこれっぽっちも謝罪の気持ちは無かっただろう。

だが今はそれよりも問題なのは、「とある人に頼まれて」と言う言葉だ。
いったい誰が私の事を調べるように彼に言ったのかが知りたくて私の頭はいっぱいになった。




「にしても、見るからに男かと思ってたから最初は驚いたけど・・・・まさか本当にその格好でトイレから出て来るとは思わなかったな」




私が今 穿いているスカートをまじまじと見ながら彼はそう言うと、少し可笑しそうに笑った。
まんまと騙された私にとっては今その顔は凄く憎い物でしかなく、いったい誰が犯人かを知りたくなる。
本当になんなのよこの人は。

そして彼は本題に入るのか。笑顔こそ変わらなかったが、一瞬にして声が真剣なものへと豹変した。



「君はさ、何で男の格好なんかしてこんな所に居るんだ?」



獲物を捕らえるようなその瞳が一瞬ギラリと光った。

その目に一瞬たじろいだが、此処で動揺しては全てが崩れてしまう。
名前は平常心を装って、彼に負けじと睨みながら口を開いた。



「変装の理由はノーコメントで。此処に居る理由はお使いをしに買い物に来ました。以上」

「ふーん、成る程。どうやら知られたくないような訳があるようだな」

「あっちゃ悪いですか」

「いや」



私のそっけない態度にも反応する様子もなく、寧ろ肩を竦めながら彼は笑っていた。
その態度に一瞬ムッとしたが、私は つっかからなかっただけ偉いと思う。

けど彼が次の言葉を発する頃には、そんな思いも全て吹っ飛んでいた。




「話さなくたって、嫌でもそのうちわかるだろうしな」

「・・・・・は?いったいどういう・・・・・」

「だから、君が言わなくたって俺がその正体を暴いてやるって意味」




さらり と言ってのけた彼に、私の体は反射的に震えた。
それはいつか、私がロケット団に入るために今の格好をしている と言う事を彼が知るという意味だろう。
そしてその情報が他にでも漏れたりしたら、私の作戦は台無しになってしまう。

それだけは絶対に避けなければ行けない。





「そんな事、絶対にさせませんよ」




彼を睨み上げながら、私は必死の思いでそう言うと 上から微かに笑い声が聞こえた。

ワタルはその挑戦的な目を楽しそうに見つめるなり、何処から出したのか マントを羽織ながら私から背を向けて歩き出した。
そして近くに居たカイリューが彼の前までくると、顔を低くさげて彼を背中に乗せる。




「とりあえず、水をぶっ掛けちゃった事は謝らせてもらうよ」

「まさかアレも演技のため態とやったとか言わないで下さいでね」

「え、そうだけど」




最 低 。

私は殴りたくなって拳を強く握ったが、後々面倒になるので渋々それを後ろに隠す。
どうやら私は最近、非常識な人間に関わりすぎなような気がするんだけど何故だろうか。

だが彼は特に気にする様子もなく、私に手を振るなりカイリューと共に空へと飛んでいってしまう。




「じゃぁ、また何処かで会おう」

「いやもう出来れば一生現れないで下さい」




ボソリと呟いたつもりがったが彼の笑い声が上から聞こえてきたあたり、どうやら私の言葉は彼の耳に届いてしまったようだ。
だんだんと遠ざかっていくその姿を見つめながら、私は深いため息を吐いた。


ほんっとうに疲れた・・・これからどうしようか・・・。





とりあえず、この荷物を持って帰る前に服乾かさなきゃな と、名前は肩を落とした。

くそう、覚えてろワタルさんめ。













次に再開する日は遠くないだろう















「レッド君。どうやら君の言う通り名前ちゃんで間違いないみたいだよ」






カイリューの背中に乗り、空を飛んでいる中ワタルはポケギアを耳にあてながら話していた。
電話の向こうの彼の声を聞いてか、その表情は少し笑いながらも何処か真剣な顔をしている。

ただカイリューだけが、一人楽しそうに空を飛んでいた。








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ワ タ ル さ ん !(笑
こんな筈じゃなかったがPCの前に立つと何かくか分かりません^^←
とりあえず、レッドとワタルは連絡取り合ってたら良いと思うよ。←(勝手すぎる)

さて、次はヤドンの井戸話に突入できるようにします。

09/11/19

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