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「ねぇ、見て見てっ。結構集まったでしょ」

「・・・・・・」

「うっわ嫌味かアンタ。私より2つも多いし」

「・・・・お前が遅すぎなんじゃないのか?」

「テメー、ピカチュウと違って全然可愛くねぇなこの野郎」

「お前もな」







そしてそのまま私達はずっと睨み合い続けながら旅をしていた。





























あれは丁度3年前ぐらいの事だったか・・・・。

人々のにぎわう声とデパート内のアナウンスが響く音がする中、
名前はただ一人 ぼーっとレジに突っ立って並んでいた。
手には、今回購入する物が買い物カゴの中に入っており なかなかの重さだ。
ボールやら服やら何やら、なかり多いような気がするがこの際気にしないでおこう。




「何で・・・無視されたんだろう」




ずーん と一人で気持ちが沈んで行くのが嫌でも感じられた。
確かに、彼はカントーの生まれだし 此処に居てもおかしくない話だ。
でも、それは私も同じであって 彼もそれを知っているのだから別に話かけてもいい筈だ。
なのに、3年間会わないうちに彼は少し変わってしまった。

あれが伝説となってしまったレッドの姿だと言う現実を突きつけられるかのように。

そして彼が姿を消したのと同時に、私もロケット団の事を調べるためカントーを旅立ったのもまた事実。
彼が突然居なくなったのには多少怒れたが、それは私も人の事言えない。



(ま、考えるだけ今は無駄よね)



今の私はロケット団したっぱに変装して情報収集、それが今の一番やらなくてはいけない事だ。
気持ちを切り替るために、軽く深呼吸して自分を落ち着かせる。

とりあえず今は買い物を済ませる事だけを考えよう




「にしても・・・・・・・」




私は長い長いレジの列で、やっともうすぐ自分の会計が出来るという時にある物に目が留まってしまった。
それは私の前に並んでいる、背の高い赤毛のお兄さん


が、持っている大量の黒いマント。



あんなにマント買って何が楽しいんだろうか。
あれか、ヒーローにでもなりたいのか。だったら此処のデパートの屋上から飛び降りれば良いよあなた。

ちょっと不思議な光景に内心驚きつつも、こんな人も居るんだなー と名前は不覚にも少し唖然としてしまった。
いやだってなんか目立つんですもんお兄さん。顔見えないけど後姿だけでもう十分な程にね。
レジで並ぶ時点でマント羽織ってる人は一人ぐらいなのだから当然の事だ。

あ、ほら店員のお姉さん凄くビックリしてる 『あんたどんだけ〜』とか絶対思ってるからねお兄さん。




「まぁその格好に赤髪だしね・・・・赤髪・・赤・・・あか」




レ ッ ド


駄目だ、やっぱり頭から離れなれない。もうあんたどっか飛んできなさいよ。
涙目になりつつも、店員さんの呼ぶ声に 私はレジへと会計を済ませるために前へ進んだ。
ああ、もうこれはマントをネタにして嫌でも忘れよう。

名前の勝手な判断により、隣で何事もなく会計を済ませたマントの彼が犠牲になっていた。






























「はぁ〜っ、買った買ったぁ」


やっとの思いで買い物を終わらせ、私はデパートの外にあるベンチに腰をかけた。

外でもやっぱり人とポケモンで賑わっており、人々が交流したりポケモンと一緒に遊んだりしているのが目に映る。
流石大都会、何処に居ても笑い声が絶えない


「それにしても、かなり買ったな・・」


今回買った物はかなりの量があり、それは名前の両手が簡単に塞がってしまうほどだ。
いったい何をこんなに使うのかは知らないが、まぁ必要なんだから仕方が無い。

名前は荷物を ドサッ と自分の隣に置きなおすと、ふぅ とため息を吐き、空を見上げた。
暖かい空気が頬をかすめ、眩しい太陽に目を細める。

あー駄目だ・・・今なら私寝ちゃいそうだわ。



「ん〜・・・・」



ついには目を瞑ってしまい、静かに呼吸をし始める。

こうやってゆっくり出来る日ってめったにないだろうし、今日ぐらいは良いよね。
どうせ帰ったら 新しい幹部の所で働く準備でバッタバッタするんだろうし。休むなら今のうちだけだ。
そう自分に言い聞かして、少しだけ仮眠しようと寝息をたて始めた時だった。



「ん・・・・ぅうあああっ?!」



ねっとりと頬を何かに舐められる感覚がして、名前は訳も分からず慌てて飛び起きる。
な、なんだ?何なんだいったい?!
わずかに湿ってる自分の右頬を手で押さえながら、ベンチがら立ち上がった私はすぐさま後ろを見た。

そしてそこにいた生物を見て、私の思考は一時的に停止する。



「か・・・カイリュー?」



ドラゴンタイプの中でも代表的なポケモンで知られるカイリューが、名前の方を見ながらニッコリと微笑んでいた。
か・・・可愛いじゃないかお前。あ、いやでも舐めるのは辞めなさいよアンタ。
再び舐めてこようとするそのカイリューの口を手で塞げば、今度は手をベロリッと嬉しそうに舐められた。


「ちょっ、ストップ!ストップ!」


なんだこのカイリューは・・・てか何でこんな所にカイリューが居るの?!
現実に頭が追いつかないでいる私も気にせず、首を傾げて前に居るポケモンはこちらを じー と見てくる。
いや可愛いけど、流石にもうベロベロ舐められるのはゴメンだ。



「あー、もうアンタのせいで顔も手も濡れちゃったじゃないの」



ポケットからハンカチを取り出しながら、私は言っても分からないであろうカイリューに文句を言う。
まぁ、この程度の事でいちいち怒っててもきりが無いんだけどね。

しかしこのカイリューはいったい何処から来たものかと、名前が顔を拭きながら考えていたその瞬間。
カイリューと私の頭上あった筈の日差しが一瞬消え、不思議な形の影が出来た。


(う、嘘でしょ)


そしてその影はすぐに大量の水と名前が気づく頃にはもうすでに遅く、その水は上から私達に遠慮なく襲ってきた。



「・・・・・・・・・っ」



ビシャッ と水のかかる音と共に、当然ながら私の服はぐっしょりと濡れてしまう。
べったりと肌にひっつく服に顔を顰めつつ、はぁ と深いため息を吐いた。
本当になんなの今日は・・・?

チラリと隣に居るであろうポケモンを横目で見てみると、そこには水を浴びて嬉しそうにしているカイリューの姿が。
しかしそれだけではなく、そこにはもう一人男性が 呆然と私を見て突っ立っている。


「・・・・・・・・・・・・」


その男性が先程レジで並んでた赤毛のマントの人だと気づくのに時間はかからなかった。

彼の今の格好は先程と違ってマントはしておらず、
長袖の服は腕まくりをし 首からタオルをかけているせいか少しだけ印象が違って見えた。




「だ・・・・大丈夫かい君!?」




持っていたバケツ(おそらく水が入っていたやつ)をおもいきり後ろに投げ付けるなり、彼は私の元へすぐさま駆け寄ってきた。
しかもそのバケツがカイリューの頭にすっぽりと嵌ってしまい、なんだか不気味なポケモンに見えて仕方が無かったのは内緒だ。




「すまない、カイリューに水浴びをさせようとしたんだけどまさか人が近くに居るとは思わなくて・・・」

「あー、いや全然良いですよ。ってかそれよりもカイリューが・・・」

「いや、良くない。それじゃぁ俺の気持ちが治まらないよ」

「え、や だから・・・・」



とりあえずバケツ被ったまま動かないで居るカイリューを何とかしてあげようよ。と私が思ったが、彼はまったく聞く耳をもたず、
いきなりデパートの方へと再び一人で走り出した。



「兎に角かわりの服買ってくるから、そこを動かないでくれ!」



物凄い速さで走っていった彼を見送った私は、一瞬の出来事に思考が上手く追いつかないでいた。
名前は何も言わずに後ろを振り向くと、お行儀良くじっとしてたカイリューの頭からバケツを取ってあげた。
うん、アンタは偉いね。



とりあえずカイリューと二人で、服を買いに行ってしまった彼を待つ事にした。


























「すまないっ、待ったかい?」

「あ、いえ全然、寧ろ凄く早いですね」



息を少し乱しながら走ってきた彼の姿を見て、名前はあまりの早さに少し驚いていた。
まぁ見るからになんかスポーツマンっぽい体してますもんねお兄さん。マント羽織ってたら更に最高だったよ。

そんな事を考えていたら、彼は手に持っている紙袋を急いで私に渡してきた。
そしてそのまま視線を近くのトイレに向けるなり、彼に「行ってきな」と言われる。
あ、成る程。トイレで着替えてこいってか。


「何だか本当にすみません。えっとー・・・・・・」


あれ、そう言えば名前まだ聞いてないぞ。
名前が分からず、首を捻って考え込んでしまった私を見た彼は「そういえば名前まだ言ってなかったな」と少し笑った。



「俺はワタルだ。呼び捨てでもなんでも好きに呼んでくれ」

「あー、じゃぁワタルさん。すみませんこの服着ちゃっても良いですか?」

「ああ勿論だよ。ほら、風邪引かないうちに着替えてきな」



紳士的な彼の対応に感動しつつ、名前はお辞儀をすると真っ直ぐトイレに向かった。

ん、まてよこの場合はどっちに入ったら良いんだ?
私はトイレの前で唸りながら入り口で固まってしまう。だがこんなのはどちらにせよ見られなければ良い話だ。



「まぁここは女子トイレに入っとくか」



意外とあっさりと決まってしまい、男の格好のまま女子トイレの中に入っていく私の姿はまさに奇妙そのものだろう。
誰も居ない事を確認した私はそのまま個室に入り、ふー と息をついた。
これは出てく時も気をつけないとな。



「さて、折角買ってもらったんだし、有り難く着させてもらおうかな」



がさがさ と紙袋がら服を取り出しながら私は言うと、少しドキドキしながらそれを目の前で広げた。
さて、ワタルさんが買ってくれたやつはどんな服か・・・・・・


「・・・・・・・・・・・・・・」


だがその服の正体を見てしまった私の動きは ぴたり と止まってしまう。

え、これはその見間違えじゃ・・・・無いよね?
何回もその服を広げてはいろんな角度から見つめたが、間違いなく見間違えでは無いだろう。





嘘、ワタルさんどうして・・・





何故わかったのだろうか









名前は手に持っているスカートを握り締めながら、一人トイレの個室に暫く立ち尽くした。











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何この展開^^←←
すみません、ワタルさんが大好きな結果がこれですorz

というかチャンピョンのカイリューの扱いが(笑
でもそんなカイリューが大好きだよ!*←


09/11/17

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