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「先輩、お風呂どうぞ」

「やっと出たか・・・お前女みてえに風呂なげーんだよ」



『女』と言う単語に名前は肩をビクリッと震わせた。
いや、実際女なんだけどね・・・そりゃ今はラインが分からないようにダボッとした服着てるが。
普段の団服には胸潰しを巻いてるけど、流石に寝る格好の時までそんなのつけてたら苦しい事この上ないしね。

そんな事を心の中で呟きつつ、タオルで髪を拭きながら名前は素早く布団の中へと潜り込む。




「じゃ、おやすみなさい」

「あ?もう寝んのかよ」

「当たり前ですよ、自分 明日早いですもん」

「・・・・・・・・・・いやお前仕事あったか?」




さも当然かのように言った私に、少しだけ疑い混じりの目で先輩はじっと見つめてくる。
ああそうですよね、私ランス様の部下辞めたから初仕事であるヤドンの仕事ないし。

つまり仕事が何も無い。

普通ならそうだ。
だがそんな事も気にせず 寧ろ落ち込む所が
今の私は布団に顔を埋め、一人でふふふと笑う余裕さを見せた。
あ、先輩今気持ち悪い物を見るような顔しましたね・・・まあ良いけど。



「先輩、あまいですね」

「あ、何がだよ」

「実はですね、自分にはもう新しい仕事がはいってきたんですよ!」



自信満々に言うと、私は嬉しさのあまり先輩にガッツポーズをきめて見せる。
そしてそんな私を、先輩は目を見開いて信じられないと言った様な顔で見つめてきた。

ふふ、そうでしょう。そりゃそうですよ。
なんてったって今回の仕事は・・・





「タマムシデパートで御使いを頼まれるお仕事なんですから!」






一人嬉しそうに話す名前を、彼は顔を歪ませながら呆然と眺めた。
そんな事も気付かすに、いきなり黙りだした先輩を気にする事も無く名前は布団を頭まで被る。


(明日の初仕事は買い物をするだけなんだしヤドンなんかより全然マシだ)


そうと決まったらさっさと寝るに限る。
私は瞼を閉じて、柔らかい布団に体を委ねた。


「おやすみなさい」


先輩に私はそう言うと、「あ・・・あぁ」とどこか詰まったような声で返事が帰って来た。
少し気にはなったが、流石に眠たかったのでそんな思いはすぐにかき消される。
今日は色々疲れが溜まったからか、おかげで睡魔はすぐに襲ってきて眠りにつく事が出来た。

そしてスースーと早くも寝息を立て始めた名前を、先輩は微妙な表情で黙って見つめた。



(そう言えばさっき部屋にしたっぱが来てたな・・・・)



先程、アポロがさった後にやってきた したっぱの顔を思い出しながら彼はお風呂に入ろうと動き出す。
服を脱ぐその手には呆れ過ぎて力も入らす、ため息を吐きながらお風呂場へと向った。


なぁ、お前は知ってはないんだろうけど、そのしたっぱは俺と同じランス様の部下なんだぜ



チラッと幸せそうに眠る名前を先輩は見るなり、彼は本人に聞こえない声でボソリと呟く。
まぁ簡単に言うと、つまりそれってよ・・・・・









「お前パシリなんじゃないのか」








ただ自分の後輩の単純さに、不覚にも少し馬鹿だなと思ってしまった。






























青いそらに、眩しく輝く太陽。
今日は絶好の買い物日和であり、名前のテンションは最高潮だった。
嬉しさが堪えきれないのか、顔にまでその思いが出てしまっている。
たった一日だったけど何だか久しぶりに外の空気を吸ったような気がするな。



「やっぱりいつ来てもデッカイ街だなここは」



そう言って、私は辺り一面に広がる建物やマンションの数々を見上げた。
久々に訪れたカントーは昔も今もまったく変わっておらず、相変わらず人が沢山で賑わってるようだ。

カントー地方の中でも大都会のうちに入るここタマムシシティ。
今回はそのデパートで買い物をする事、いわゆるお使いが今日の私の仕事だ。
うん、やっぱり買い物するならジョウトよりカントーの方だよね。




「じゃぁ早速買い物といきましょうか」




今の私の格好は、男物の私服を着ている為、何だか少し違和感は感じるが仕事のためだ 我慢しておこう。
いつ何処で見られているか分からないし、迂闊に元の女の格好では行動できない。

そんな事を思いつつ 早速ビルの中へ入ろうとした時、不意に誰かの肩に自分の荷物がぶつかってしまった。
人が多いため無理も無いが、流石に今のはこちらが謝るべきだろう。


「あ、すみません」


まだ近くに居たその人を振り返りながら、私は声をかける。
そのまま去ろうとしたが、目の前に映る人物に私の動きは止まってしまった。

一瞬我目を疑い、もう一度彼を見る。
いや、間違いない




「うそ・・・・何であんたが此処に居んの?!」



驚きのあまり大きな声を出して名前は彼に叫んだ。
嘘だ。あんたが こんな所に居るだなんて。

信じられないでいる名前を気にも留めず、彼は すたすたと前へと歩いて行ってしまう。
明らかに今の声が聞こえていた筈なのに、まるで何事も無かったかのようにその背中は小さくなっていった。
こんな所で見失ってたまるか。

だが追っている今もなお、私の疑問は増え続けていく一方だ。



何故なら、幼い頃から長年一緒に過ごしてきた彼は、今はもうその行方は不明になっていたのだ。
私にも、そして自分の母にまで行き先を言わなかった理由なんて知らない。

でも何で



なんで何も言わずに私から姿を消したの・・・?



名前が追い掛けても、道を歩く人達で思うように先に進めない。
そしてだんだん彼との距離が遠ざかり、これ以上追う事は難しくなった。



(どうして)



聞こえてんでしょ・・・、どうしてこっちを振り向いてくれないの
どうして私を見てくれないの

ねぇ、どうして








「どうしてなのっレッド!!」








私がいくら叫んでも、彼の背中が振り向く事は一度も無かった。










懐かしい彼の姿を









これから先、ずっと忘れることは無いと思う。






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更新が遅い上に今回は短めですorz←
次こそは長く・・!

そして出ましたレッドさん。
もう本当に唐突過ぎるよ私の話←(今更

09/11/14

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