ぬるま湯の鳥籠で僕は確かに君を愛した(茂もけ) ぐるぐると映像の雲が回る。枯れることの無い椰子の葉が寝転がった自分の真上でさわさわと揺れる。僕は長く息を吐き何をするでもなくぷかぷか浮かんでいるもけもけを見ながら『彼』とのデュエルを思い出していた。 「もけもけー」 眺めているだけで脱力してしまう容姿、雰囲気。もけもけ自身もそのようで、怒る時くらいしか別の表情を見せなかった。――それなのに。 精霊の見える『彼』とのデュエル。 心なしかもけもけは、今までで一番生き生きして見えたのだ。 「なー、もけもけー」 やる気がないのがもけもけにとって心地よい状態なのだと思っていた。相手に戦意を失わせて平和にデュエルを終わらせられるなら、それがもけもけには何よりなのだと無条件に信じていた。だから自分のデュエルが不都合な結果を引き起こすのなら無理にデュエルをすることもないと、そう言い聞かせてきた。 きたのだ、けれど。 「お前は――本当は、戦いたいのか?」 もけもけは答えない。ただゆっくりと、やる気なさそうに羽根を動かしているだけだ。 「……まあ、いっか」 造られた風の生温さが全てをどうでもよくしてしまった気がして僕は再び目を閉じ結論を先のばしにした。そうして巡る空が人工の橙に染まっていく。 (失くした刃は少しずつ脳裏に滲んで同化した) [前][次] [戻る] |