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らいぞうくんとはちやくん
雷蔵くんと三郎くんは仲良しです。
三郎くんはちいさいころから他の人に化けるのがだいすき!
だから、他の人は三郎くんのすがおなんてしりません。いったい、彼がどのような顔でどのような人なのかわかりません。三郎くんの両親は、三郎くんがどんなかおだって言うのは知っているけどね!
でも、雷蔵くんは、三郎くんがどんな子かどんな人だか知っています。彼の顔をしらなくても知っています。
二人は仲良しです。三郎くんが無茶や悪戯をしたりしていると、雷蔵くんは三郎くんを止めます。何時の間にか、それは二人の間で当たり前になりました。三郎くんは、何時の間にか雷蔵くんのかおを似せていました。
雷蔵くんは三郎くんの無茶や悪戯を止めるのが当たり前になっていましたし、三郎くんも雷蔵くんがいるから悪戯や無茶が出来る、すると言う事が当たり前となりました。

しかし、どうでしょう。
この頃、雷蔵くんは三郎くんに当たる事が多いのです。
昔は仲が良かったという事なのに。


「あのね、三郎。」

雷蔵くんは三郎くんに言いました。


「僕、たろうさんが好きなんだ。」

三郎くんは何も言いません。

「だから、邪魔しないでね。」


雷蔵くんが三郎くんにそう言ったのは初めてでした。

三郎くんは雷蔵くんのかおを被ってめだつことをしています。その顔の持ち主である雷蔵くんは、ひっそりと三郎くんの横にいました。一度だけ、一度だけ 雷蔵くんは三郎くんの顔を被っているのではないかと言われた事がありました。それを言った子は三郎くんに殴られてしまいましたが、それでも雷蔵くんの心には酷く酷くひびきました。
雷蔵くんは三郎くんの被っている顔の持ち主ですが、周りの人から見たら、雷蔵くんは三郎くんの陰ではないか。
雷蔵くんは三郎くんに「雷蔵あっての俺なんだから」と言われましたが、裏を返せば 雷蔵くんも三郎くんも、どちらかが欠ければ互いのそんざいがなくなると言うことです。

雷蔵くんは三郎くんに顔を似せられてきた頃から、ずっと勘違いや誤解が多かったのです。三郎くんを好きな女の子に勘違いされてらぶれたーを渡されたり、三郎くんのやった悪戯を雷蔵くんがやった所為にされたりと(でも、すぐに三郎くんが悪戯を謝りましたのでことなきをえましたが)さんざんと被害がかぶってきましたが、雷蔵くんはそれを全部わらってごまかしてきました。
雷蔵くんは、それを全て笑って流してきました。

三郎は三郎だから、僕は僕だから。二人あっての一人なんだと雷蔵くんは自分に言い聞かせてやってきました。
好きな女の子が三郎を好きだったり、告白してOKを貰った子は雷蔵ではなく三郎を好きだったり。
全て全て笑ってごまかしてきました。ぜんぶ全部笑って流してきました。三郎は、そんな女の子をすべて断ってきました。
三郎にも、もうしわけなさがあったのでしょう。


「だから、邪魔しないでね。」

三郎くんはなにも応えません。
何時もの彼なら、彼への負い目に「わかった」と頷く筈でしたが、何故だか彼はうんともすんとも言いません。


「・・・」

三郎くんも、たろうがすきだったのです。

あぁ、それがもっと早くに言われていれば。それをもっと早くに言われていれば。

最初にたろうに会った頃の思い出を掻き消せるのに。最初にたろうにあって、たろうの顔に似せて驚かせた思い出を消せるのに。あの時のたろうの驚きの表情を忘れることができたのに。踏み込み、なんてしなかったのに。


三郎くんは、雷蔵くんに「邪魔しないで」と言われたら邪魔しないつもりはありました。ずっと、かれに迷惑をかけてきた事をじかくしていたからです。でも、彼にはどうしても無理でした。彼にはどうしても難しいことでした。


「ごめん。」

と、三郎くんは長い沈黙の後に雷蔵くんに呟きました。


「ごめん、」

ごめん、ごめん。と、三郎くんは雷蔵くんに呟くように、なんども何度も繰り返して言いました。
雷蔵くんは、じっと そんな様子の三郎くんを見ていました。


「そっか、」

と、雷蔵くんは言いました。雷蔵くんは、三郎くんが言っていたあの子と雷蔵くんがあっていたあの子とまさか同一人物だったとは知らなかったのです。でも、彼には不思議と驚きはありません。ただ、納得という気持ちしかありません。


「じゃぁ、今から僕達、ライバル同士なんだね。」

と、雷蔵くんは三郎くんに伝えるように言い聞かせました。三郎くんはこうべを垂れてうんうん、と雷蔵くんの言葉に耳を傾けました。雷蔵くんの言葉に頷きました。

かれらはおなじ顔です。だからきっと、いつかはふたごのように同じ子を好きになるんじゃないかな、って 雷蔵くんは思っていました。三郎くんは、まさかそんな事はなかっただろうと思っていたので、事態のきゅうへんさに気付いてないだけです。まだ、たいしょしきれてないだけです。

雷蔵くんは気付いています、たとえかおがおなじでも、僕達はべつのこたいなんだから、きっといつかは離れなきゃいけないんだって。それをただ、三郎くんはまだこころの準備ができてないだけなんだって。雷蔵くんはそう思っています。だから、雷蔵くんは、彼のこころのじゅんびが出来るまで待とうとしています。待とうと思ってます。



けれど。




「なぁ、たろう。これ、どう思うよ?」
「へ?何々?恋愛心理学のやつ?あー…性的魅力とかどうこうなんとかで魅了されてどうこうのやつ?」
「そうそう、その話。で、これがその実例だってよ。」
「え?なになに…ぎゃー!変態!痴漢セクハラパワハラァッ!!」
「三郎!何て物をたろうに見せてんだよッ!!!!!!」
「ぎゃふっ!」

いくらなんでもこれはないだろ。いくら好きな子に悪戯したくなるからってこれはないだろ。たろうはまだ純粋なんだぞッ!まだABCの深い意味すらも知らない子供なんだぞッ!!
と、雷蔵くんはショッキングな映像を見せられたたろうを後ろに隠しながら三郎くんに威嚇しました。雷蔵くんは温厚でも、好きな子が嫌がっているのを見逃すほど甘くはない性格でした。
それに、このままたろうの中で三郎くんの印象が強まることも嫌でした。

だから、雷蔵くんは三郎くんのストッパー役でありながらも、何時かは蹴落としてたろうの中でそのポジションになりたいと虎視眈眈と狙っています。その、悪戯っこポジションではなく、たろうの向こうのはるか向こうの。

「たろう、駄目だよ。こんど、三郎に何かされそうになったら僕に言ってね?勘右衛門もいるんだから、ね。」
「う、うん・・・。」

雷蔵くんは何処からか出した警棒を片手にたろうを宥めます。よかったね、三郎くん!雷蔵くんの警棒は本物の木じゃない、プラスティックだ、の筈だ!
たろうは、三郎くんと雷蔵くんが仲が良い事を知っています。そして、それが彼等の一つのコミュニケーションのとりかたなんだと、勝手に取っています。
たろうは彼らの含意なんて知りません。友達だと勝手にとってます。


「と言うか、俺。なんであぁならないかと子供の頃からずっと疑問だったんだよな。」
「あぁ、確かに…よくキレなかったよな、雷蔵。」
「きっと、今までの分を爆発させてるんじゃない?あ、たろうー!パフェができたよ!」

雷蔵くんと三郎くんの友達である、兵助くんと八ざ衛門くんがいいます。勘右衛門くんがたろうを呼びます。たろうは「え?嘘!行く、行く!」と、大喜びで勘右衛門くん達の所へ行きました。おおきなおおきなパフェが待っています。

雷蔵くんはたろうのそんな姿をみて、にっこり笑ってます。三郎くんはボロボロになりながらも、そんな光景を見ています。

雷蔵くんは血のついた警棒を片付けて久々地くん達のところへ戻ります。三郎くんも、ゆっくりと膝を立てて雷蔵くん達のところへ戻りました。


「わっ!三郎、凄い傷!」
「煩ぇー。」
「ほら、たろう。パフェが来たよ。」
「やった!ほら、三郎も血拭いて!早く座ろうよ!」
「はいはい…(本当に流れてるんだけどな・・・)」



おわり!

[*yesterday][tommorow#]

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