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炒飯
「そう言や、たろう。何時から一人暮らし始めてんだ?」
「んー?」

フライパンで炒飯を炒めていたら、後ろからハチに話しかけられた。事の始めは何時だったか知らないが(あぁそう言えば・・・鉢屋が皆を率いて飯を集りにきたのが始まりか)、晩御飯を作って彼等と一緒に食べるのが日課となってしまった。この大都会。知らない人と肩と肩を合わせて歩く日常だから、人肌が恋しいのだろう。話がしたいのだろう。彼らがほぼ毎日来るので私が犬を飼う機会が無い。あったとしても、大都会でバイトの時給が良いとは言え、すぐに家賃・光熱代水道代と消えてしまった。生活料金に消えてしまった。残されたお金は極わずか。いくら学費が無料になったとは言え、そう頼ってもいられない。一度は遅刻欠席した身だし。一度深夜バイトに入ろうとしたら、バイトの皆さんから反対されたし、三郎達に話したら皆も反対した。なんだそりゃ。そもそも変なのが来たって、催眠スプレーとかそんなので脅かせば・・・あぁ、そう言えば。三郎が私に集りに来たのも、「女の一人暮らしは危ないから来た」だったな、ちくしょう。言い建前だな、おい。

「確か・・・一年。入学する前に来た。」
「入学する前かー。地元?」
「いや、田舎。越前蟹って知ってる?あそこ。」
「へー。あそこの蟹、美味いよな!」
「でしょ?その県の市の一つ下の所からなんだけどね。」
「へー。」

兵助達は買い出しに出かけてしまった。勘ちゃんはバイトで疲れてしまって、クッションを枕にして寝ている。ちきしょう、アレはよく使うやつだったが・・・勘ちゃんだったら許す。疲れてるし勘ちゃんだから許す。あれがぴんぴんとした三郎だったら許さない。ぴんぴんしている兵助は少ししか許さない。雷蔵は許す。勘ちゃんも許す。ハチは・・・まぁ、いいや。なんかいい人そうだもん。

「そういや、ハチは?」
「俺?俺も一人暮らしだけど、寮生活してんだよなー。だから、厳密に言うと、一人じゃないかな?」
「あはは、そっか。」

そりゃいい。

「お隣さん同士でも会話、する?」
「そりゃぁ、小中高と同じ奴等ばかりだったからなー。するさ。」
「そっかぁ。うちではしないよ。他人行儀だもん。」
「あー、そりゃそうかもしれねぇなぁ。近頃、物騒だし。」
「あはは。だね。寧ろ話し掛けられたら警戒しちゃうかも、だし。」
「・・・俺達の時も?」
「・・・あー・・・客として来た時以外は、ね。」

そう言えば、何時から話し始めたのだろう。忘れた。

「ってか、思ったんだけどさ。此処って、どういう所なの?やけに、固まるメンバーが固定してるし。」
「うん?そうか?」
「うん、そうだよ。まるで、小中学校から一緒でした!的な雰囲気の人が多いし・・・そうじゃないのが多い位?」
「あー・・・そりゃそうだろうなぁ。だって俺等ん所、マンモス校だもん。」
「え。マンモス校?初めて見た。」
「入った、もだろ?」
「まぁね。うちはそう言うのは同じ区内、ってのしか無かったからなー・・・あぁ、納得。」
「そうか?区内っても、まぁ・・・」
「ん?」
「・・・や、なんでもねぇ。」
「あ、兵助達とも、その頃から?」
「んー…ま、そうかな?クラスは別々だったけどよ、自然と話してたんだよなー・・・。つるむようになったのも、その頃だし。」
「へー、そっか。」

つるむ・・・うん、此処で男女と大きな差を感じたような気がする・・・。

「あ、たろうんとこは?」
「私?まぁ、進学校だよ。地元の。」
「へぇ、地元でも凄いじゃん。」
「うん・・・周りは東大とか早大目指す人ばっかだったけど・・・。」
「え!?たろうって、兵助と勘右衛門タイプ?!」
「タイプ?いや、私は地元で進学出来ればいいやぁってタイプだから。」
「へー。じゃ、俺達と同じタイプか。」
「え、ハチも?」
「おう!俺と三郎と雷蔵は、そのまま姉妹校に進学するクラスだったんだ!」
「えーっと・・・この大学とか?」
「そうそう!」

ハチが大きく返した。きっと、後ろで大きく首を横に振ったのだろう。生憎、私は炒飯の米粒を一粒一粒落とさないかに必死だから振りむけないが。

「そう言えば、三郎達って…買いに行ったんだよね?」
「ん?おー。またやるつもりだな、アイツ等。」
「・・・勘弁してくれ。」

恐らく彼等の狙いは、酒宴。あの後片付けを行うこちらの身にもなって欲しい。雷蔵や兵助、ハチと勘ちゃん(三郎除く皆)は手伝ってくれるが、授業が差し迫った方々については早めに出て貰っている。遅れたら危ないし。そう言えば此処、大学に近いよな。確か、此処も大学側の招待で入った所だし・・・・・・学園の所有地か?!

「・・・なぁ、たろう。」
「ん?」
「好きな人、いる?」
「あー・・・likeはいるけどloveはいないわー。」
「ふーん、そっか。」
「そ。変に阿呆なのと付き合って財産取られたらいかんからなー。」
「手厳しいなぁ!さぞかし、たろうのお目がねに適った奴は、凄い奴なんだろうなぁ!」
「うん、多分。まだなった事無いから分かんないだろうけど。」
「・・・。」

じゃーじゃーと炒飯を炒める音が部屋に響く。「なぁ、」とハチが話を切り出そうとしたら、三郎達が帰ってきた。ノックくらいしたらどうだ!まぁ、親しき仲、だろうからだけどさ。

[*yesterday][tommorow#]

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あきゅろす。
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