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拍手置場
見つかりたがりとかくれんぼ




かくれんぼというものがジェイドは得意ではなかった。
それは幼い頃無理矢理誘われ、無理矢理参加させられても頑固サボっていたことが原因だろうと考えられる。…本を読んだほうが経済的なのだからしかたない。
隠れる側ならば適当な場所にいって(一度その場を動かないでいたら途方もなく面倒なことになったため)本を読んでいた。し、もし鬼側ならばこれ幸いということで放棄した。
放棄したらそのうち向こうのほうから出てくるし問題などどこにもない。まぁ妹であるネフリーだけは見つけておいて、だが。


「じぇいど!かくれんぼしよー!」

にこりと笑う幼い表情にジェイドは苦笑をもらす。ここはマルクト帝国の軍施設だった。
そうであるのに、そこにこんな裏も表もない笑顔はありえないわけではないが、場違いだろう。
苦い笑みをつくってどうしようかと考える。そんなジェイドの珍しい表情を作り出したフローリアンはなにも気づかずに全開で笑っている。
それにただ苦笑してフローリアンの保護者である少女の事を聞く。ぱちりと一度瞬きしてから邪のない子供は笑う。

アニスまっててって〜大人の話してくるんだってにやぁって笑ってた!でも暇だったからジェイドの所にきたのー!

暇だったから、でジェイドの所にいくフローリアンにジェイドはまた苦い笑みを深くした。この世の中で何人暇という理由で死霊使いの所にくるだろう。この子供は大物になりそうだ、とぼんやり思う。
しかし、まぁなんというか冒頭にあった通りジェイドはかくれんぼというものも子供の遊び相手も得意というわけではないのでにこりと笑いやんわりと断る。

すいません、まだ私はお仕事なので…そうですねーガイならあるいは…

えー…

よくいうよ、聞くものが聞いたらそういいそうなことを平然とジェイドはいいのける。それに、本当に残念で悲しそうな気持ちそのままにフローリアンは顔を向けた。しかし、そこは育て親が育て親だからか。すぐに、じゃーしかたないね、ガイのところいくー、と笑い顔をつくる。
普通ならばここで罪悪感にまみれてしまうものだろう。だが、まぁそれは死霊使いであり、えぇそれがいいですよー、と子供の頭を撫でた。
うん、と撫でられ気持ちよさそうにフローリアンは頷く。

あ、じゃーじぇーどにはこれ、あげるね

本当はあにすにあげようと思ってたけど、撫でてくれたからとくべつ!

えへへと笑い、はい、とジェイドの手の平にそれを落とす。
一瞬、それに驚いてからジェイドはありがとうございます、と静かに笑った。
ではかわりに、こっそり秘密を教えるようにジェイドは口許を人差し指でふれた。

動かずに待っていれば、向こうからこちらに来ることもありますよ?

かくれんぼの秘訣です。と笑う大人に、んーといいながらフローリアンは考えるそぶりをみせてからうん、と笑ってパタパタと子供特有の足音をたてて駆け出した。

それにひらひらと手をふって見送り、ジェイドはまたそれに目を落とした。
それは、子供がわざとではないかというほどよく落としていたもので。

今更になってよく出てくるようになったものだった。
衣類棚やキャビネットのすきま…そして彼がよく使っていた、底の深い、丸みのあるカップの中。

まるで忘れさせないように。
よくちらりとこちらを伺ってきた子供の姿を思い出して、ジェイドはその、黄色いボタンを透明な瓶の中にいれる。
からん、というその音に子供のかけらをみた気がして、ジェイドは微笑んだ。


みつかりたがりとかくれんぼ










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