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終演の音。 笹塚さんの話


一人、男がいた。

男の頭は優秀だった。とにかく優秀だった。しかも頭がいいだけではなく運動能力も並以上。いや、むしろ化け物レベルだった。

まぁどうでもいい事だ。

有り余る能力も使う気力がなければ意味がない。やる気は全くないのだから宝の持ち腐れ。…勿体ないものだ。

そんな持ち腐れ能力も意味があるとしたら、家族が喜ぶという事ぐらいか。
男は表情をあまりかえない可愛くない子供だった。何を考えてるのか読めない子供だった。


…、らしい。
自分ではそんな自覚はないが。そうだったらしい。
それなのに家族は、男のためにわざわざ大袈裟なぐらいのパーティーをし、表情が少ないらしい自分の分まで喜んだ。
そんな家族が男は大好きだった。表情には出さないが。…いや出さなかったわけではない、自分では目一杯嬉しがっていたつもりだ。

しかし、他人から見るとどうも自分は無表情らしい。不思議だ。自分ではけっこうお茶目なほうだと思うのだが。とりあえず見える見えないかは置いといて男はそれなりに人なみの幸せを感じていたのだ。

それがある日突然消し去った。
いや違うか。
正確にいうなら箱詰めにされたのだ。


家族という幸せを
ただの肉塊として、

男は激怒した。冷静に。
泣くという作業もせずに激怒した。
男は優秀だった。とにかく優秀だった。
しかし男はまだ若かった。そして力がなかった。
犯人は捕まらなかったのだ。
だから、持ち腐れとされた能力を使って復讐という努力をした。
見つけたらすぐ殺せるように人を殺す術を学んだ。
お前には無理だと優しい人達に笑われたがそれでも学んだ。
残念な事に頭の性能はとてもよかったので簡単だった。
情報を仕入れるために警察にも入った。
自分の目的は犯罪者を殺すことだ。それなのに警察とは、面白いものだと思った。(思っただけで罪悪感はなかったが)
部下ができた。(使えないけど、)
上司ができた。(俺が能力の腐らせすぎていると嘆いて煩いけど、)
探偵という女の子に会った。(優しくて普通の女の子だ。食という欲だけは普通じゃないけど、)
助手にもあった。(なんだか普通じゃないと思ったらやっぱり普通じゃなかった、)
部下も増えた。(使えない部下と一緒にさせておくとけっこー面白い)

復讐しか考えてなかったはずなのに、
何故こんなに
思い出すのは、思い出せるものは何故こんなに平和な
こんな血生臭い場所に似合わない女の子を見て笑う。
復讐しか必要ないと全てを省いたつもりの世界だったのに。

それでも、
平和さが不可解だったけど、面白かった世界だった、



ぱぁあぁあん





終演の音。






三流の復讐者による三流の演技はいかがだったでしょうか
これにて舞台はおしまい!

また会える日を願って!(もう二度と来るか!)



あきゅろす。
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