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執念で落としてみせろ





彼が語る言葉は曖昧だ。
だよね、という言葉と、じゃないかな、とかいう言葉ばかりで出来ている。
自分の意見をあまりいわず最終決定をこちらに放り出す。
覆ってもいいとように驚くほど自らの決定権を投げ出している。
そしてヘラヘラと笑い、そちらに風が吹けばそちらに、あちらに風が吹けばあちらにというふうにのらりくらりだ。
人に嫌悪を示さず、怒ることもなくヘラヘラと笑う。
しかもそれを指摘してもただいつもと同じ表情でヘラリと笑い、受け流す。
そっかうんごめんね、俺、ダメでさーと。
そしてそんな彼に近づいて、気づいた。それは彼の防衛手段だったのだ。誰にも心を開かないように、傷をつけられないように、諦められるように。
自分というものを掴ませないように。
彼は全てを受け入れているようでいて、全てを拒んでいる。

彼はずるい人だ。
とても脆くて弱くてずるい人だ。そしてそうなのだとわかった時にはもう手遅れになってしまったと私は気づいてしまった。
私はそのずるくて弱くて脆いその人を好きになってしまっていたのだ。
だから、


「ねぇ望美ちゃん、」
「はい、なんですか」
「結婚してください」

そう、なんでもないように、けれど確かに自分の意思を覗かせて望美との未来を望んだ言葉を聞いたとき、つい望美は泣いてしまった。
そんな望美をみて、ごめんねごめんねと繰り返しながらも撤回をしようとしない景時に、感情が溢れてわけがわからなくなってしまう。
しばらく泣いて、泣いて、景時が困ったように笑いながら泣きそうな表情を浮かべるまで泣いて。
彼の今までの人生にざまぁみろと呟いて。
望美は私が絶対幸せにします!と誓った。











あきゅろす。
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