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終わりのない鬼ごっこ



鬼さんこちら手のなるほうへ


子供の笑い声が辺りに響く。
じゃんけんで負けた子供が必死に子供を追う。
勝った子供は笑い声をあげながら捕まらないように距離を置きながら逃げる。

「おや、鬼ごっこですか」

「あれ、鬼ごっこっていうのか」

振り返るとそうですよと静かにジェイドは笑った。


「じゃんけんで負けた子供は鬼になって他の子供はその鬼役の子供から逃げるという遊びです。」

した事はありませんでしたかと笑いながらジェイドは静かにルークの隣へ腰をかける。


「俺、あんま同い年のやつと遊んだ事とかなかったからさ。カクレンボだったらけっこーやってたけど」

「あぁ、そうでしたね」


俺隠れて遊んでたら家中の兵士とかメイド達総出で探されて見つかった時怒られたなと笑う。
一度どこかへと連れ去られた(本当は違うが)子供の姿が見えないとなるとたしかに大変な騒ぎになっただろうと頭の中だけで考える。


「まぁ、どっかの迷惑な皇帝陛下よりはましですよ」

「ピオニー陛下か?」

「えぇ、1国の主になるというお方なのに毎日兵士の目を盗み遊び、いぇ勉強なさっていましたから」


兵士達が気付いてうろたえるのを見るのが一つ楽しみといっていましたしねと遠い目を向ける。
ルークが鬼ごっこをする子供達から目を離し楽しそうにらしいと言いながら笑った。


「ジェイド達は『鬼ごっこ』した事あるのか?」


そういえばといいながら聞く質問にはいと頷く。


「私は別に興味がなかったのですが陛下から是非にとお誘いされましてね」

「…ジェイドが鬼ごっこやったら怖いだろうな」


この隣にいる男の鬼の姿を想像したのか少し体を震わしながら聞こえないぐらい小さく呟く。
ごっこどころじゃなくなりそうだ。
本当に水の都の主の器の大きさに関心する。


「えぇ、私は鬼ごっこは得意ですから」


子供でしたから使えるものはなんでも使いましたしと小さく、ともすれば聞こえなかっただろう言葉に返事を返す。
地獄耳だとひそかに心の底から思う。
ふいにジェイドが鬼ごっこをしている子供達を見た。
同じようにルークも見つめる。
先程逃げていた子供が一人鬼役の子供に捕まった。


「…そうですね、この旅が終わったら…やりましょうか」

「何をだ?」


話の意図がわからず子供から目を離しもう一度ジェイドを見つめる。
目をふせ笑うその横顔が何故だかすごく綺麗に見えた。


「鬼ごっこですよ。何故だか無償にやりたくなりまして、子供がえりというやつでしょうか。」


付き合ってもらいますよルークと最初から返事はいらないかのように笑う。



「…じゃ、鬼役はジェイドだな」


ジェイドなら皆をすぐ見つけちゃいそうだとそのことを想像したのだろう楽しそうにいう。
もう全員見つけたのだろう鬼役の子供が今度は逃げる役をしていた。
次の鬼役が数を数える。
そろそろ帰る頃合いなのに夢中で遊んでいる。
帰ろう、と子供が手を差し出す。
えぇといいながらその手を握った。



旅が終わってから二年がたつ。
あれほどレプリカ大地の被害にあったというのに今ではもう完璧に復興を遂げている。
世界は何事もなかったかのように緩やかに時を刻む。
ただ一人、子供を残して
その子供の姿を無意識に飽きもせず捜している自分を笑う。
何気なく窓の外を見ると鬼ごっこをする子供を見つけた。
逃げる子供を必死で追う鬼役。

それはまるでーー


「自分を見ている気分ですね」


ただその子供達と違う所はこの世界に鬼役しかいないというところか。




終わりのない鬼ごっこ


逃げる子供は鬼がいけない場所までいってしまった



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