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貴方は星、流れて消える。



あれはなんだ?



常に雪をふらせているはずの空を見上げて問う。
今日はこの地方では珍しく雪が落ちてきていない空で。
あの分厚い雲のない夜だった。
広がる、世界。

わぁと幼なじみ達の歓声が聞こえる。

すごい、綺麗…!と妹が隣で笑みを浮かべながら呟いた。
それを聞いてあぁこれは綺麗なものなのかと思う。自分と違って妹はどうやらまともな感性をもっているようだからこれは恐らく綺麗、なのだ。
なるほど、と一つ頷いて頭で理解しようとつとめる。


「ジェイドはどう思う?」

何も言わない生徒に先生が問い掛ける。
生徒はちらりと声の元を見て可愛いげもなく、綺麗なんじゃないですかと受け売りの言葉を告げた。
冷めた温度の中でクスリ、と笑う空気が伝わる。

「珍しく質問の意味を間違えたわね。ジェイド」

私はあなたはどう思ったかと聞いたつもりだったけれど?
その言葉にやはりこの人には敵わないと思い、気付かれない程度の小ささでため息をつく。
気付かれないようにという配慮は気を使ってのことではなく単なる意地だ。
たいていの大人はあれで通るのにこの人には何故か通じない。
少しだけめんどうだと思いながらもそうですねと雪が落ちてこない上に目を向けながら答える。

「…何故だかわかりませんが、少しだけ恐ろしいです。」

え、という顔をして幼なじみと呼べるオカッパの動きが止まる。
ちらりとそちらを一瞥するとひっという声がもれた。
それを見ていたもう一人の幼なじみが止まったそいつの後ろから身を乗り出して、なんだジェイドお前怖いもんなんかあったのかー、と豪快にわらう。

またクスリ、と笑う気配。



「そうね、たしかにこれは怖いものかもしれないわ」

先生は生徒達を見ながらそう楽しそうに呟いた。
こんなに綺麗なのにですか?と妹が不安げに上を見上げる。



「えぇ、これは星が自らの命を燃やして暗い空を舞台にして最後に光る線を天涯に描いているものだから」


だからネフリーのいうとおり綺麗で、だけどジェイドのいうとおり怖いものでもあるの。
…切ないです、と妹は泣きそうな声で顔を歪めながら呟いて空に手をのばした。
まるで光りを受け止めようとしているように。
それを見て幼なじみ達もソレに手をのばす。
ほほえましいというように先生は笑った。
その光景をどこかさめた目でみる。



「…命を燃やして、か。どこが切ないのかも、綺麗なのかもわからないな。」


感情が欠落しているからわからないのか。
誰にも届かなくてもいいかのように小さく呟いたその声を拾い上げ、笑いながらジェイド、貴方もいつかこの綺麗さがわかるわと先生は口を動かした。







−−−−−−−







「うわぁ綺麗だな、ジェイド」



澄み切った世界に流れていく星達。
子供はその星に感嘆の言葉をもらして笑いながらこちらを振り向いた。
瞬間、翡翠の瞳を見開いた。
少しだけ、零れてしまうのではないかといらない心配をする。


「ど、どうしたんだよジェイド!!」

どっか痛いのか!といいながら手をのばす子供ににどうかしたとは何がです?、と首を傾げる。
その姿を見て子供はお前気付いてないのかよ、と眉を潜ませた。
自分に手をのばしていたはずのルークの指が濡れている。
そして、自分の頬がぬれているのだとに気付く。
泣いているのか。
自分が


「…ジェイド星嫌いだったのか?」

心配する赤い子供にいいえ、と笑った。



「……少々感傷的になったみたいです。」



感受性豊かですからと唇を笑みの形に弧を描く。
なんだそれ、と子供は笑った。
今更わかった。
星を見て自分が恐ろしいと思った理由も、……妹が、切ないものだといった意味も。


「貴方は…星に似てますね」



くるりと振り返った子供はきょとんとして首を傾げた。





天上に輝く命のひかり
精一杯輝くそれらはまるで(貴方そのものだ)








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